精霊戦隊エレメンツ

第一話「精霊戦隊出動!」

プロローグ

「彼女」は永劫とも思える時を暗い時空の狭間で過してきた。「彼女」は「彼女」を縛る封印の力が弱まるのを何千年と待ち続けていた。そして今、「彼女」が何千年もの間に蓄えてきた力で弱まった封印を破るときが来た。
「彼女」が身じろぎすると、ピシッという音がして封印にひびが入る。「彼女」は一度胎児のように身を丸め、そして力をこめて思い切り体を開く。
パリーン!
ガラスのような音をたてて封印は砕け散る。
「彼女」はその場に膝をつき荒くなった呼吸を整える。そして立ち上がった「彼女」の顔が月の光に照らされる。ショートカットで整った美しい顔。しかし、その美貌もその瞳に宿った怒りの感情によって逆に恐ろしいものに見えた。
そして、「彼女」は澄んだ美しい声に冷たい怒りを込めて言葉を吐き出す。
「日天、月天、地天。汝らに封印されて数千年。どれほどこの時を待ったことか。今度こそ、今度こそ必ず邪魔はさせぬ。私の救世を止めさせはせぬぞ......」
そして「彼女」は手鏡を取出し、身だしなみを整えるとひらりと空にまいあがり、何処かへと飛んで行った。

このときから、数百年後、精霊戦隊エレメンツの激しい戦いの幕は切って落されるのだが、今はただ、まるで嵐の前の静けさのように、冷たい月の光がさすだけであった。

「発動」

カタカタカタ、ピピピピピ、ヴーンヴーン。
キーボードを打つ音や機械音が響くここは、EGSの万能要塞「グレートウォール」の司令室である。

ちなみにEGSとは現司令である太助の父親、太郎助が骨組みを作った秘密の組織である彼は古い文献からいつかこの世界を破滅させるものの復活を予期し、それに対抗しうる力、即ち精霊の力を手にいれる為に精霊の宿る秘宝を集めた。しかし、彼には呼び出す事が出来なかった為、せめて組織と装備の基盤ぐらいは、とEGSを作った。
そして、彼の息子である太助も、当時はEGSのメンバーだった。
そして偶然秘宝を手にした彼が精霊達を呼び出す事が出来た為、太郎助は司令の座を彼にゆずり渡して旅に出たのだ、新たな情報と力を見つける為に。
ただし、有事の際以外は全員、学生、教員、神主などの普通の生活を送っているか、基地でのんびりしているのである。基地って快適なんだもんとはルーアンの言。

プシューッ!
自動ドアが開き、お茶の香りと共に一人の少女が司令室に入って来る。
EGSの実戦部隊エレメンツの一人、シャオである。
「皆さん、お茶が入りましたよ」
司令室にいた四人の少年少女がシャオの声にドアの方を振り向く。
「ありがとう、シャオ」
最初に受け取ったこの少年は太助。EGSの若き司令であり、自らが呼び出した精霊のシャオの事が好きだが、なかなか打ち明けられないでいるシャイな男の子(笑)
シャオの主ではあるが、主とか司令とかそういうことを抜きに自然体で振る舞える意外と出来た少年である。

「サンキュー、シャオ」
髪をポニーテールにした女の子がお茶を受け取る。シャオの大親友で良き理解者の翔子。EGSの参謀で決断力、判断力は太助を上回る。シャオと太助の淡い恋の応援している。この中で一番の常識人かも知れない。

「ありがとう、シャオちゃん」
何かプログラムを組んでいた童顔の少年がお茶を受け取る。
彼はEGSの天才プログラマーの乎一郎。彼とここにはいないが天才科学者の宮内出雲の手により多数の発明がなされている。ルーアンに恋心を抱く少年である。

「ありがとうございます、シャオ先輩」
占い雑誌を見ていた、可愛らしい少女。彼女はEGSのオペレーター(通信士)の花織ちゃんである。占いを信じて色々とおまじないをする反面、名うてのハッカーという顔を持っている。太助の事が好きでいつも恋のアタックを続けているが、実らないでいる。
残りのメンバーはおいおい紹介しよう。

「太助さま、何か変ったことはありませんか?」
お茶を配り終え、太助の横に座りながらシャオが聞く。
「ん?取りあえず、何もないけど......愛原、何か変った情報はあるか?」
太助にきかれ、花織はコンピューターを操作し色々な情報に目を通す。
「えっと、中国の山東省の古い寺院で、異常な地場の乱れと天候の急変があったそうです。ちなみに、この辺です」
画面上に現れた地図と異常があった場所を示す光点を見てシャオが青ざめる。
「どうしたんだ?シャオ。顔色が悪いぞ?」
「あ、いえ。何でもないんです」
はっとしたように我に帰ったシャオが慌ててごまかそうとするが、もともとそういうのが苦手な上、相手が太助ではごまかしようがない。
「シャオ、俺には言えない事なのか?」
「すいません、太助さま。まだ確信がもてないんです。確信がもてたら話します。あ、ルーアンさんとキリュウさんは?」
すまなそうに言ったあと、二人の居場所を聞くシャオ。
「ルーアン先生は自室。キリュウちゃんはトレーニングルームだよ」
二人の反応がある場所を見て乎一郎が答える。
「ありがとうございます、乎一郎さん。それじゃ、私はこれで失礼しますね」
急ぎ足で司令室を出ていくシャオを呆然と見送る太助。
「あーあ、隠し事なんかされて。シャオに嫌われたのか?七梨」
翔子がからかうようにいう。
「い、いや。そんな事はないと思うけど.....」
思わず考え込んでしまう太助だった。

一方、キリュウを探してシャオはトレーニングルームにやってきていた。中にはいるとキリュウが陽天心人形と組手をしているところだった。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
見事なキリュウの回し蹴りで吹っ飛んだ人形の頭部がシャオめがけて飛んでいく。
「キャッ!?危ない!」
飛んできた頭を言葉とは裏腹に余裕でかわすシャオ。
「シャオどのか?すまぬな、大丈夫であったか?」
シャオに気付いたキリュウがシャオの方に歩み寄りつつ言う。
「はい、大丈夫です。それよりキリュウさん、実は.......」
司令室での出来事をキリュウに話す。
「成程、もしあやつが復活したのだとしたら厄介だな......」
「どうしましょう、キリュウさん」
「あやつが復活したのなら、もう一度封印する。あれはこの世に災いをなす存在だからな。それに我々は主殿の元、EGSの一員としてこの地球を守らなくてはならないのだ。
どうしたってあいつと戦う事になるのだ。ならば覚悟を決めるしかあるまい」
毅然というキリュウにシャオは少し悲し気な顔をする。
「あの方も、元々はああいう事をされる方ではなかったのに.......」
「仕方あるまい、あれの考え方が変らぬ以上、戦いは避けられないのだから」
二人はふと黙り込んでしまう、とそのとき
ビー!ビー!ビー!ビー!!エマージェンシー!緊急事態発生!緊急事態発生!
各員すみやかに非常体制に入れ!繰り返す............
緊急事態発生を知らせる警報が鳴り響く。
「キリュウさん、まさか........」
「まさかかどうかはまだ分からぬ。それより今は急いで司令室に行かなければ!」
「はい!」
二人は全速力で司令室へと走った。

「守護月天シャオリン、只今来ました」
「万難地天キリュウ、到着した」
二人が部屋に入ると、少し遅れてルーアンが入ってきた。
「遅れてごめんなさーい。慶幸日天ルーアン、只今参上」
シャオが慌てて太助に聞く。
「太助さま、一体何が起きたのですか?」
「モニターを見てくれ」
全員がモニターに映された映像に驚く。
「あれは.......」
そこには街で暴れる怪生物、植物じみたものやアメーバのようなもの全て人間サイズ、が写されていた。
「どこから現われたのかは分からないが、突然街に現われて破壊活動を行っているんだ
多分、あれが親父の言ってた敵だと思う。だから、シャオ、ルーアン、キリュウ、EGS実戦部隊エレメンツに命じる。ただちに現場に趣き怪生物を排除せよ!」
「了解!」
3人は司令室を飛び出すと格納庫へと急ぐ。
「愛原!星神データ化プログラム(HDP)スタート!」
「了解、HDPスタート」
「星神データ変換ポッド」に入った軒轅が電気信号に変り高速輸送戦闘機ケンエンに転送される。
「データ転送完了、いつでも出れます!」
高速輸送戦闘機ケンエンに乗り込んだ3人に太助が言う。
「3人とも頼んだぞ!ケンエン、GO!」
3人を乗せたケンエンは怪生物のいる街を目指して飛んでいく。

ちなみに、HDPというのは、シャオの召還する星神を電気信号、つまりコンピューター上のデータに変換、機械に転送してその機械のブレインにしその固有能力を使用可能にするプログラムである。
今なら、高速輸送戦闘機にデータ化された軒轅が宿っており、自らの意志で動いたり速度を変えれるのである。
それなら陽天心の方が手早いのでは?と思うかも知れないが、陽天心だとすぐに暴走してしまうので実用化されなかったのである。
天才プログラマーの乎一郎と天才科学者宮内出雲の二人の会心の合作である。
現在、データ化された星神の能力と意志をコピーし、星神そのものを用いなくてすむ様な研究がすすめられているが、エラーやバグがでまくる為、なかなかうまくいってないのだ。

「軒轅急いで!」
「ミュー!!」
全速力で現場に向かう機内のモニターに白衣を着た青年がいきなり写る。
「出雲さん?」
EGSの天才科学者、宮内出雲。科学研究班主任である彼はそのずば抜けた頭脳によってEGSの戦闘機から日用雑貨まで幅広く発明している。
「こんにちわ、シャオさん。今、怪生物の粗データがとれたのでお知らせしますね。あれらは全て地球上に存在する生物です。原因は分かりませんがそれが巨大化、凶暴化して破壊活動を行っているようです。皆さんの通常攻撃で充分倒せますよ」
そう言って前髪をふぁさっとかきあげる。
「ところでシャオさん。これが終わったら一緒に食事でも.....って、あれ?」
すでに現場についていたシャオ達はケンエンを降りていたため、今の出雲の様子は司令室だけが見ていた。
「バーカ」
翔子の一声にがくっとなる出雲だった。

「戦闘」

一方、ケンエンを降りたシャオ達は怪生物のいる方へと走る。
「シャオ殿、ルーアン殿、参るぞ!」
「はい!」
「仕切らないでよ!」
キリュウ、シャオ、ルーアンの3人はイヤリングの石をはずし、ブレスレッドにはめる
「地霊石セット!」キリュウは正八面体の石。
「月霊石セット!」シャオは丸い石。
「陽霊石セット!」ルーアンは三角のあれの形をした石。
それぞれ大地、月、太陽の力が込められた神秘の石なのだ。
「霊力転身!レッドアース!」
「同じく!ブルームーン!」
「以下同文!イエローサン!」
それぞれの霊石が輝き、光が3人を包み込んだ次の瞬間、3人は精霊戦隊エレメンツへと変身していた!
「ギーッ!」
奇声をあげて怪奇生物が3人にせまる。
「被害がこれ以上広がる前に、片をつけたい!手加減無用で参るぞ!」
キリュウが背中に装着していた腰ほどの大きさもある鉄扇を構え、閉じた状態で地面を叩く。
「短鉄扇!地裂葬」
打たれた大地が敵に向かって走るように裂け、敵を飲み込み閉じる。
地霊石の力で増幅された大地の精霊の力により、大地を切り裂き敵を文字通り葬る技である。
ちなみに、変身中は本来の力<万象大乱><陽天心召来>は使えない。そういう精霊の力も変身の力になっているからだ。
「キリュウったら、最初っから飛ばすわねぇ。それじゃあたしも!」
腰にさしていた黒天筒に似たものをはずし、くるくるとまわしながら口にあてる。
「黒天笛、超振撃!」
ルーアンが黒天笛を吹いた瞬間、笛の旋律が笛内部で共鳴、陽霊石の力で増幅されて超音波と化して敵を襲う。
超音波を浴びた敵は細胞の原子レベルで振動し、結合が崩壊してボロボロに崩れ落ちる
「ごめんね。みんなだって本当はこんな事したくなかったはずなのに......」
シャオ狂ったように迫り来る怪生物を悲しそうに見つめて謝る。
生来の優しさゆえ、本来はなんの罪のない生き物を傷付け、倒す事が辛いのだ。
しかし、それでもシャオは自分がしなければならない事をする強さを持っている。
「支天刃、月華乱舞!」
シャオの手の中に45枚のチャクラムが現われ、月の輝きをおびながら敵めがけてさまざまな軌道を描いて飛んでいく。出雲の開発した特殊鋼で作られた極薄の刃が月霊石の力で鋼鉄すらも切り裂く光の刃となって敵を切り裂いていく。
敵を殲滅し、支天刃はシャオの手の中に戻り重なりあって輪へと形をかえる。
「支天刃、リングモード」
見た目と大きさ、厚さは支天輪と同じだが、これ八角形ではなく、真円である。
こうして謎の怪生物は殲滅された、かに見えた。
グチャ....ヌチャ........
キリュウによって地の底に葬られた敵以外の残骸が一カ所に集まってグロテスクな化け物へと変化する。
「天力召与」
どこからともなく声が響き、化け物に光、それもただの光ではな<力>の込められた光が降り注ぐ。
「オォォォォォ!」
みるみるうちに化け物は巨大化していく。
「今の声は....」
「そしてこの力は......」
「あいつが復活したってことぉ!?」
驚愕する3人。こういう事が出来る力の持ち主をに心当たりがあるのだ。
「い、今はとにかくあの化け物を倒すのが先決だ!司令!精霊機と結界を!」
ブレスレッドの通信機に呼び掛けるキリュウ。
「七梨先輩!じゃなくて、七梨司令!結界と精霊機の要請です!」
花織が太助に伝える。
「よし!コカ&ルイヘキジン結界発動!結界が形成完了する前に精霊機を射出!」
太助の指示に従い、全員が動く。

コカ&ルイヘキジン結界、それはコカの四次元胃袋と塁壁陣の結界能力を合わせ、HDPを用いて増幅させて変化させたものである。四次元胃袋で巨大な異空間をつくり塁壁陣のシャオ以外をいれない、という結界をこちらの指定物のみいれる、という風に変化させ周囲に被害を与えないようにしているのだ。

「精霊機射出準備完了!結界が形成され始めました」
乎一郎が報告する。
「精霊機射出!」
「了解!精霊機射出!」
太助の指示で翔子が射出ボタンを押す。
<グレートウォール>から3つの光が射ち出された。

「結界が形成されはじめたようだな」
回りの空間がゆがみ、たわみはじめたのを見てキリュウが呟く。
「精霊機も来たみたいよ」
結界が完了するすれすれで3体の精霊機、巨大ロボが到着する。
「グッドタイミングってやつね」
3体の精霊機は3人にぬかづくように膝をつく。
「参るぞ!我を招け、精霊機ガイア!」
大地の神の名をもつ赤い精霊機の額から赤い光が放たれ、キリュウをつつむ。その光につつまれるようにしてキリュウはガイアに乗りこんだ。
「精霊機アポロン!」
「精霊機アルテミス!」
太陽、月の神の名を持つ精霊機に黄色と青の光に包まれながらルーアンとシャオも乗り込む。
「システムオールグリーン、ガイア機動!」
「同じく、アポロン機動!」
「同じく、アルテミス機動!」
巨大生物と三体のロボットが対峙する。
「3対1は卑怯ではあるが、こちらもこれが初実戦なのだ。手加減抜きで参る!」
まず、ガイアが仕掛ける。武器の大鉄扇を構え、生物に向かって駆ける。
「行くぞ!超地磁気竜巻!」
一度閉じた状態で地面を叩き、一瞬で地磁気を臨界までため込み、そして扇を開状態にして生物に向かって振る。
強力な磁気嵐が生物を襲い、動きを封じる。
「次は、あたしよっ!」
アポロンの右肩に大口径のキャノン砲が現われる。
「いっけー!紅炎竜砲!!」
太陽の表面で荒れ狂う猛き紅の炎、プロミネンスの竜が生物めがけて放たれ、生物を焼く。
「オォォォォォォン!!」
「シャオどの、止めを!」
「は、はいっ!!」
少しためらいながらも、腰から剣を抜き、構える。
「支天剣、北斗七星召還」
HDPによりデータ化された最強の攻撃用星神が剣にやどり、最強の剣が生まれる。
「北斗七星剣、転空斬!」
空間を転移して斬撃のみが生物を襲い、真っ二つにする。
「とりあえず、倒せたようだな」
真っ二つになり、燃え尽きた生物を見てキリュウが呟く。
「結界解除、帰投するでし」
結果内では通信さえも届かなくなる、がHDPで離珠が通信を伝えるのだ。ただし、全員の口調がでし言葉になるという欠点がある。
3人は迎えに来たケンエンに乗り込み、グレートウォールに帰る。
精霊機は変身を解いたキリュウが万象大乱でちいさくして持って帰った。

「敵の名、それは」

「おかえり、シャオ、ルーアン、キリュウ。ご苦労様」
「いや、今回はそれほど手ごわいという訳ではなかったからな。それほど苦労はしてお
らぬ」
キリュウの言葉に苦笑する太助。
そこに自動ドアが開いて、お茶を乗せたお盆を持った線の細い美少女が久保医師と共に入ってくる。
「みんな、お疲れ様。久し振りね、元気だった?」
「聖子さん!?」
「SIHON」財閥現総帥の詩園聖子。少し前に太助達ととある事件で知り合い、EGSのスポンサーになったのである。
久保医師はそのとき知り合った医者で、現在はEGSの専属医師をしている。
普段は聖子の専属なのではあるが。
「元気でしたよ。でも、そういう聖子さんこそ、元気になって良かったですね」
太助の言葉に聖子が微笑む。
「ありがとう、太助くん。総帥になってからは体が弱いからなんて言ってられなくてね鍛えられちゃったみたい」
少し力こぶを作る真似をしながら聖子は微笑む。
「おいおい、いくら元気になったとはいえそれでやっと人並みなんだから、あんまり無茶はしないでくれよ」
久保医師が苦笑しつつ言う。
「分かってるわよ、あなた。それに、もし倒れたらあなたが治してくれるんでしょ?」
少し悪戯っぽいほほえみを浮かべる聖子に久保は苦笑する。
ここら辺が久保医師が聖子専属な理由である。
「あっれー!?今、聖子さん、久保先生のこと<あなた>って!」
花織が大きな声で指摘する。
「あ、気付いた?実は、今度結婚するんです、私達」
「「おめでとー!!」」
全員が嬉しそうに祝う。
「まぁ、そうなんですか?おめでとうございます、聖子さん」
「ありがとう、シャオさん、みんな」
久保医師は照れて黙ってしまっている。
「太助くんも、いつか、ね?」
クスッっと悪戯っぽく微笑んで聖子が太助に言う。
太助は思わず赤面してうつむきながら呟く。
「そ、そんな、俺達はその、ゴニョゴニョ..........」
「どうしたんですか?太助さま」
シャオが心配して下から太助の顔を覗き込む。
「わぁぁぁぁっ!?な、なんでもない、なんでもないよ、シャオ」
突然、目の前にシャオの顔が来たので更に真っ赤になる太助。
「おー?どうした、七梨。顔が真っ赤だぞ?」
翔子が少し意地悪げに言う。
「な、なんでもないよ!」
しばらくクスクス笑ってた聖子はお茶を配り終える。
「それじゃ、私達はこれで失礼するわね」
まだクスクスと笑いながら聖子と久保医師は司令室を後にする。
「そーいや、何しに来たんだろ、あの二人?」
実は出雲の神社で挙式するつもりだから、その相談に来ていたのである。
その出雲は現在精霊機のメンテナンスや戦闘データの解析のため、司令室にはいなかっ
たのだが。

「さて、と。それじゃ、シャオ。事情を話してくれるよな?もう、確信はもてたんだろ
う?」
太助の言葉にシャオ、ルーアン、キリュウの顔が曇る。
「..........分かりました。お話しますわ。さっきの怪生物を生みだし、操っていたのは救世梵天煉華(ぐぜぼんてんレンカ)さんです。彼女は私達と同じで、天空の精霊なんです。その役目はその名の通り世界を救うために、心の清い方に力を授け、共に戦う事です。世界を救う、と言ってもこの世界をもっと住みやすい、穏やかで優しい世界にするために努力する事なんです。そして彼女の力は天候をあやつり、生物に力を与える事です。キリュウさんのように試練を与えることにより、主を成長させて力をつけさせるのではなく、ただ自らの力を分け与える、そういう方法で、ですけど」
キリュウはシャオの説明の間中表情は変らないものの、どこか不安気であった。
そしてルーアンでさえも不安を抑えるためかイライラように爪先で床を叩いていた。
「まったく!なんであいつが復活すんのよ、もう!またあんな戦いするなんて冗談じゃないわよ!!」
「また、って事は以前に戦った事があるって事か?」
翔子がルーアンの言葉に反応して聞く。
「そうよ!悪い!?」
「よせよ、ルーアン。何でそんなにイライラしてるんだ、ルーアンらしくないぞ?」
「だって、たーさま......」
さすがに太助にさとされると静まるルーアン。
「それは私が説明しよう。煉華の力は我ら3人の力をあわせてやっと互角、というほど強力なものなのだ。以前戦ったとき、我々は大苦戦を強いられ、なんとか封印することには成功したのだが、そのとき当時の我々の主殿を失ってしまったのだ。ルーアン殿が不安がるのも無理はない」
「キリュウ達が3人がかりで互角、か。それは確かに凄いな。それで?そのときの煉華の主はどうなったんだ?やっぱり、死んだのか?」
太助が少し表情を曇らせて言う。シャオ達にとって主を死なせてしまう事がどれだけ深い心の傷になるか知ってるからだ。
「煉華は自分の何番目かの主が亡くなったあと、主がいない状態でこの世界にとどまりそしてこの世界を破壊しようとしたのだ。その主は我らが煉華と戦う事になる前に亡くなられたのだがな」
沈痛な面持ちで言うキリュウ。
「ねぇ、何で世界を救うのが役目の人が、世界を壊そうとするんですか?」
乎一郎が至極当然な事を聞く。
「原因は分からぬ。が、彼女は世界に、そして人間に絶望した。そう言っていた」
キリュウの言葉にシン、となる。
「まぁ、確かに世の中には嫌な事や暗い話が多いからな。そう思っても不思議はないけど、迷惑な話だよな」
翔子が呟く。
「まぁ、だからってこの世界を破壊していい事にはなりませんよ。で、キリュウさん。
その煉華さんへの対抗策、これからの対策は?以前に戦われたのなら、何か良い案があるのでは?」
いきなりスクリーンに現われた出雲が口を挟む。
「お、おにーさん、いきなり出てくるなよな、心臓に悪い」
翔子が胸を抑えつつ言う。
「仕方ないでしょう、精霊機のメンテとかでそっちにいけないんですから。さっき聖子さん達にみんなが集まってるって聞いて慌ててそっちに回線開いたんですから。それにしても、私が発言するまで誰も気付かないとは......」
一応、話の途中から聞いていたのだが、誰にも気付いてもらえずちょっと寂しい出雲だった。
出雲の言葉に考え込むキリュウ。
「これといっては、ない。がとりあえず相手の居場所を突き止めねばなるまい。それに煉華がこれからまた何か仕掛けてくるであろうからそれへの対策もたてねばならぬが...相手の居場所が分からぬ以上、後手にまわるしか出来まい、今は」
キリュウの言葉にみんな重いため息をつく。
「暗くなっても始まらない!宮内科学班長は精霊機のメンテとデータ解析、改良と欠陥の改善を急いでくれ。乎一郎と愛原はコンピューターを使って索敵と怪生物の出現がないか警戒。諜報部のダンさんにも相手の居場所を探るよう伝令。アヤメちゃんには悪いけど、ダンさんを借りさせてもらおう。シャオ、ルーアン、キリュウと山野辺はこれからすぐに作戦会議。以上だ!みんな仕事に取り掛かってくれ!」
太助の号令一下、EGSのメンバーが動き出す。

こうして、彼らの長い戦いの幕は切って落された。


エピローグ

シャオ達が巨大怪生物を倒した頃...........
「あれを倒したか。まぁいい。あれはほんの小手調べ。適当に作ったものだからな。
それにしても、あいつらは気付いているのだろうか?私がもう何百年前に復活し、救世を行うための下準備を着々と続けていた事を。そして、わざわざ私が宣戦布告として封印されていた場所で怪現象を起こしてやったことを。いや、おそらくはきづいておるまいな...........」
独り言のように呟き微笑するショートカットの美しい女性。
それは救世梵天煉華だった。
そして煉華の回りにぬかづくいくつかの影からも、追従するような笑いが響く。
「我が手塩にかけて育てし力ある者達よ。働いてもらうぞ。我が使命の為に」
「「「御意..............」」」
すっと影達はその場から消える。
一人になった煉華はその瞳の奥に不可思議な光を宿らせて呟く。
「あなたたちの道と私の道、ぶつかりあうのなら戦うしかないのよ..........」
呟いたとき、その瞳に写ったのは悲しみか憧憬か........本人ですら、分からなかっただろう。


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