精霊戦隊エレメンツ
第XX話 グレートウォールの死闘
1
煉華からの挑戦
「親愛なるEGSの諸君、始めまして。そしてキリュウ達とはお久しぶりね。ところで今回こうやってあなた方に通信を送るのはアジトも知られた事だし、ここらで最終決戦といかないか?と提案したかったからなのだが、受けて頂けるかな?こちらの残存戦力も私と八天将が3人とかなり削られたのでな。受けていただけない時は仕方がない。私の力で世界中に異常気象を起こして世界を滅ぼすだけだが」
突然の煉華の通信とその内容に驚くEGSのメンバー。
「いいだろう。その挑戦受けよう。それで、日時と場所は?」
至極あっさりと受けるキリュウに全員が驚きの目を向ける。しかしキリュウは任せろという風に全員を見る。
「時間は明日の午後。場所はおって知らせる。では、さらばだ」
プツンッ!
「通信切られました。逆探知.....出来ません!?」
花織が驚いたように言う。一度繋がった回線ならどんなものでも逆探知出来る自身があっただけにショックだったのである。
「いいよ、愛原。どうせ相手のアジトの位置は分かってるんだし。ところでキリュウ。
どうして勝手に相手の挑戦を受けたんだ?これが罠だって可能性は充分あると想うんだけど」
太助の言葉に全員がキリュウに注目する。
「では、異常気象で世界が滅びた方が良かったのか?」
「いや、そういう訳じゃないけど....」
口篭る太助。
「でも、そういう事が出来るんだったらなんで最初からしなかったんでしょう?」
「簡単な事だ遠藤殿。それをやると煉華は激しく消耗してしばらく休眠状態になってしまうのだ。局地的な天候操作ならたいして疲労はしないのだが、世界規模ともなるとさすがに疲労で倒れてしまうのだ。それに、あいつは人間以外の自然はなるべく壊したくないみたいだったからな......。休眠状態の所を狙って攻撃を仕掛けても煉華もその対抗策ぐらい立ててるだろう。それを突破するのに時間をかけては被害が甚大になってしまうからな、今の条件を飲んだ方がこちらとしては都合がいいのだ。正々堂々真正面から戦いを挑めるだけな」
なるほど、と全員がうなづく。
「こうなったら細かい作戦はいらないな。精霊戦隊のみんなは明日、全力をもって相手を倒し、この戦いに終止符をうつこと。そして俺達はできる限りの援護をすること。以上だ」
太助の言葉に全員が強くうなづく。
「じゃさ、最終決戦に向けて士気高揚の為にちょっとしたパーティ開かないか?七梨」
「あ、それいいですね。やりましょうよ、七梨先輩!じゃなくて司令」
翔子と花織の提案に少し考えてから太助は答える。
「明日に差し支えない程度になら、な。でも本当にほどほどにしろよ?」
「分かってるって。それじゃ、準備始め!」
翔子の号令を合図に、全員が必勝祈願パーティ(たかし命名)の準備が始められた。
2
それぞれの夜
せっかくだからとアヤメとダン、七希と美穂、聖子と久保医師もパーティに招かれた。
「許可したのはいいけど、はめをはずしすぎないか心配だな、こりゃ」
しかし、太助の心配通り、宴もたけなわになったころにはパーティは混沌の様相を示しまくっていた。
「ほらほら!今日は無礼講なんだから、あんた達も飲みなさい!!」
いつ無礼講になったんだ?ルーアン。
「ル、ルーアン先生!!俺達まだ未成年だからお酒は駄目なんですってば!!」
良い子のみんなはお酒は20になってからね(^^)
「まま、ルーアン先生どーぞ」
「おー、よしよし。遠藤くんは偉いわねぇ」
たかしがルーアンの酒をどうにかかわす横で嬉しそうにルーアンに酌をし、誉められてさらに嬉しそうな乎一郎だった。
「一番!愛原花織、歌いまーす!」
「いいぞ、花織殿!ほらダン。何をしておる。お主も手拍子せぬか」
頬を綺麗な桜色にしたアヤメが手拍子しながら言う。
「アヤメさま、私が目を離した隙に飲まれましたね?」
「ダン、夫婦(めおと)になったのだから、私に敬語を使うなといつも言っておるだろうが」
ダンに甘えるようにもたれかかりながらも説教するアヤメに苦笑するダン。
「ダンさんはお酒はいけるクチですか?」
「おお、出雲殿。まぁ、強い方だと自負しておりますが。それが?」
役目柄、ダンは酔うほどに飲めないのである。
「こういう席だと、酔えないと逆に辛いですね、お互い」
出雲は酔う程に飲むのはみっともないので、いつもある程度で抑えているのである。
「確かにそうかも知れませぬな。まぁ、一杯どうぞ」
苦笑しつつも出雲のグラスにワインをつぐダン。
「ダン、私にもつぐのじゃ」
杯を突き出すアヤメ。
「ですから日本では未成年はお酒を飲んではいけないのですよ、アヤメさま」
「だから敬語を使うなと.......うっ」
慌てて口元を抑えて宴会場を飛び出すアヤメ。
「アヤメさま!?」
追い掛けてダンも宴会場を後にする。
「...........飲めないのに飲んで、気分が悪くなったんですね。仕方ないですね、一人寂しく飲みますか」
本当はシャオと話したかったのだが、いつのまにか見失ったのである。
「二番、野村たかし!魂の歌を歌いまーす!!」
あまりうまくないたかしの歌をBGMに、一人飲む出雲の背中にはそこはかとない哀愁がただよっていた。
ちなみに、聖子と久保医師はパーティが混沌の様相を示し始めたときに気分が優れないからと聖子が言い、その付き添いという事で久保医師共々逃げていた。ちなみに七希と美穂は、明日ドラマの撮影があるからと最初の挨拶に来てすぐ帰ってしまっていた。
一方、宴会場の特設バルコニーでキリュウと翔子が中の喧騒をよそにゆっくりとお茶を飲んでいた。
「とうとう、明日だな」
翔子がふと呟く。
「ああ、そうだな」
「勝てる、のか?」
キリュウの目をじっと見つめ、翔子が聞く。
「むろん、負けるつもりはない」
「そっか、そりゃそうだよな。じゃ、絶対帰って来いよ、キリュウ。それで、また二人でこんな風にお茶飲もうぜ」
お茶を一口飲んでキリュウが答える。
「ああ、そうだな。シャオ殿がいれてくれたおいしいお茶をまた飲む為にも、明日は必ず勝たねばならぬな」
「約束だぜ?」
「約束しよう、必ず勝って帰ると」
聖地でキリュウを守ろうと戦った翔子と、その翔子を助けたいと強く願ったキリュウの間には強い友情が生まれていたのである。
一方、シャオと太助は宴会場を抜け出し、グレートウォール内に造られた公園のベンチに二人並んで腰掛けていた。
「太助さま、大切な用事って何ですか?」
「これ、シャオに渡したくてさ」
そう言って太助はシャオに小箱を渡す。
「わぁ.......ありがとうございます、太助さま。開けてもいいですか?」
「うん、開けてごらん」
シャオが箱を開けると中には三日月型の宝石が着いたネックレスが入っていた。そして宝石は月の光を受けて神秘的な輝きを見せていた。
「綺麗.........太助さま、ありがとうございます」
とても嬉しそうなシャオの笑顔に太助は少し照れて赤面する。
「シャオが喜んでくれて、俺も嬉しいよ」
少しはにかみつつも笑顔を浮かべて言う太助だが、少し真面目な顔になって言う。
「明日の戦いは今までになく大変なものになると想う。でも、俺信じてるから、シャオ達の事。絶対勝って帰って来るって。信じて、いいよな?」
「はい、太助さま。確かに明日の戦いは今までで最大のものになるでしょう。でも、信じていて、そして忘れないで下さい。私は守護月天。月が必ずそれに昇って来るように私は必ずあなたの元に帰ります。そして.......」
少し照れたように黙り込んで、意を決したように太助を見つめて続けるシャオ。
「そして、私は太助さまの元へ帰れる事を心から嬉しいと想ってます。だから、私は太助さま、あなたの元へ必ず帰ります」
「シャオ.........ありがとう。俺も、シャオが俺の側にいて暮れることが心から嬉しくてそして幸せだって想ってるよ」
真っ赤になりながらも太助が言う。
「太助さま........」
少し目を潤ませて、シャオがいきなり太助にもたれるように抱き付く。
「シャ、シャオ!?ど、どうしたんだ一体......って、震えてるのか?」
反射的に抱き止めたシャオの体が小刻みに震えている事に気付く太助。
「ごめんなさい、太助さま。何だか急に不安になって.....怖くて.....」
「シャオ....大丈夫だよ、絶対に。俺はシャオが絶対に帰って来るって信じてる。そしてシャオは俺に必ず帰って来るって言ったろ?だから俺はシャオのその言葉を信じる」
そっとシャオの髪を撫でながら太助が優しく言う。
「太助さま......しばらくこうしてていいですか?主様を守る私が主様に甘えるなんて守護月天失格だけど、こうしてるととっても落ち着くから......」
「もちろん、いいよ。シャオの不安がとれるまで、俺、ずっとこうしてるから.....」
優しく抱きしめて髪を撫でてくれる太助の温もりに甘えていると、少しづつ不安が消えていくのを感じるシャオだった。そして、シャオは心の中で呟いていた。
(とっても暖かいこの気持が何なのか、この戦いがすんだら私に教えて下さいね、太助さま..........)
それでも、心の底の不安は全て消えなかったけれど。
3
卑劣!煉華の罠
次の日の正午、EGSのメンバーは司令室に集まっていた。ちなみに一部、二日酔いになりかけていた面子がいたが、長沙のおかげで治っていた。
「じゃ、シャオ、ルーアン、キリュウ。行って来い。絶対、帰って来るんだぞ」
煉華から決戦場所を連絡された3人は戦いの準備を終えて、出発が出来る状態になっていた。だが、煉華が決戦場所には精霊戦隊だけが来るように指示してきた為、太助達は遠くからモニターで見る事しか出来なくなっていた。
「行って来ます、太助さま」
「じゃ、行ってくるわね、たー様」
「では、行ってくる」
そして3人は司令室を後にする。
「御武運を!」
出雲が軽く手を振り
「がんばれよー!」
たかしがガッツポーズをする。
「頑張ってくださーい!」
花織が両手をぶんぶかと振り
「ルーアン先生、頑張って下さい!」
乎一郎が目をうるうるさせて言う。
「絶対に帰って来るんだぞ!」
そして翔子がウィンクして見送る。
3人は司令室から出て格納庫に向かい、高速輸送戦闘機ケンエンに乗り込み決戦場へと向かった。
「いよいよ、最後の戦いですね。絶対、勝って帰りましょうね、ルーアンさん、キリュウさん」
「もちろんよ。じゃないとたー様を幸せに出来なくなるもの」
「約束したからな、必ず勝って帰ると」
3人の精霊戦士を乗せ、ケンエンは決戦の場所へと飛んでいった。
「ようこそ、精霊の皆様方」
指定された場所に着いた3人は煉華とローブを纏った二人の八天将に出迎えられた。
「そちらにはまだ3人ほど八天将がいたはずだが、何故二人しかいない?」
キリュウが辺を警戒しつつ言う。
「後一人の八天将は一人で戦った方が強く、複数では逆に本来の力が発揮できなくなるのだ。その二人を倒せたら相手になる。取りあえず、準備運動と想って前座をこなしてもらおう。ゆけ!!」
煉華の合図で二人の八天将軍はローブを脱いで3人の方へと駆け出す。
「八天将が一人、如月雛菊参る!!」
「同じく、エミリー行きます!」
動きやすそうな和服を来た美少女がシャオへ、きらびやかなドレスを来たおっとりした感じの美女がキリュウへと向かう。
「私の相手はぁ?」
「ルーアン殿はシャオ殿の援護を!!」
「始まったか........」
太助達はモニターで戦闘の成り行きを見守っていた、が突然画像が乱れて見えなくなってしまった。
「何だ!?愛原!!」
通信士の花織りが慌てて調査する。
「ジャミングを受けてます!それとGW(グレートウォール)の外に未確認飛行生物が一つ!!反応........天魔です!!」
「シールド展開!各員戦闘配置!!」
太助の指示に全員が動き始める。
空中にいる少女は目の前でシールドが展開され始めたのを見て苦笑する。
八天将の一人、千寿院智理である。
「それ、私には無駄なんだけどなぁ。スペシャルケイス!!長距離瞬間移動!」
「せんせー!それ規則違反ですよ」
プニプニの声を無視して智理はGWのシールドの内側へと入り込む。
煉華の力により次元間に影響無く使えるようになって以来、智理は色々な技の開発にいそしみ、使いたい放題使っているのである。
「さ、みんな。出番よぉー!」
シールド内へと侵入した智理は別次元に待機させておいた天魔(雑魚、戦闘員タイプ)
をGWに向かって放つ。そして数えきれない程の天魔がGW内へと入り込んでいった。
「七梨、どーするんだ!?このままじゃ.....GWが破壊されちまうぞ!!」
翔子の絶叫を無視し、太助は状況を確認する。
「基地防衛隊はどうしてる!!」
「たかしくんが指揮してどうにか持ち堪えてるけど、何カ所かが突破されちゃってるよぉ!!」
「それって、持ち堪えてるって言いませんよぉ!!」
相変わらず、さらっときつい花織ちゃんである。
「仕方ない.....俺達も出るぞ!!愛原はたかしのとこへ増援に行ってくれ!乎一郎はここで基地防衛システムを使って敵を撃退。山野辺と俺は突破された所を個別でフォローに行く!分かったら散開!!」
「了解!!」
太助の号令で乎一郎を除く全員が司令室を後にする。
「くっそー!正々堂々、決着をつけるんじゃなかったのかよぉ!!」
愛用の特殊銃で迫り来る天魔を撃退しつつたかしが愚痴る。
「隊長!B地区が突破されたそうで.....うわっ!!」
「田中ぁ!!」
目の前で隊員が倒されたのを見て激情したたかしは銃を片手に敵に突っ込もうとする。
「野村先輩、伏せて!!」
突然の声に後ろを振り向いたたかしの視界に、背中から取出したバズーカの照準をこちらに向けた花織が入る。
「おわぁ!」
「火炎弾、発射ぁ!!」
慌てて伏せたたかしの上を花織の撃った砲弾が通り越え、敵を燃やす。
「あっ、火炎系の攻撃は......」
スプリンクラーが発動して消火してしまった。
「こうなるんだよな......」
「早く言って下さいよぉ......」
そうこうしてる間に天魔が迫り来る。そのとき、たかしの頭にある事がひらめく。
「そうだ!!花織ちゃん、ちょっとごめん!」
花織を片腕で抱き抱えて、水に濡れてない所までジャンプしつつ銃を撃つ。
「雷撃丸!!」
たかしの特殊銃から放たれた弾丸は水に濡れた部分に当り、高圧の電撃を撒き散らす。
水は電気を良く通すため、水に濡れていた天魔のほどんどが感電死した。
「野村先輩、すごーい!!」
「へへー、凄いだろ」
もうもうと水蒸気が舞う中、花織が驚いた声をあげ、たかしが自慢気に言う。
「自慢するのはいーですけど、いい加減放してくれませんか?」
ジト目でたかしを見て言う花織。
「あ、ご、ごめん......って、危ない!!」
いきなり花織を突き飛ばすたかし。
「いったぁーい!!何するんですか.....って、先輩!!」
水蒸気の向うから伸びてきた天魔の触手から花織をかばい、たかしは左肩を貫かれていた。
「花織ちゃん、無事か!?」
「わ、私は無事ですけど、野村先輩が.....」
青ざめておろおろする花織に、アーミーナイフで触手を斬ったたかしがぎこちなく微笑み返す。
「これぐらい、大丈夫だ!花織ちゃんが無事なら、取り敢えずOKだな」
「先輩、私の為に......」
思わず涙ぐむ花織にたかしが苦笑する。
「今は泣いてる暇ないぜ!天魔を倒さないと!!」
「は、はい!!」
いつの間にか回りを取り囲んでいた天魔に対して、たかしと花織は背中合わせになって天魔に対峙する。
「なんか俺達って良く背中合わせになるな、花織ちゃん」
「クスッ、そう言えばそうですね」
軽く微笑みあって二人は天魔と戦い始める。
「冷凍弾!」
「爆裂丸!」
一方、司令室に残った乎一郎は防衛システムを駆使して天魔を排除していた。
「Aーブロック閉鎖、火炎放射開始!通路Cに侵入した天魔に機関砲発射!Fブロック隔離基地外に排出後爆破!」
隊員がいないブロックに入った天魔を、凄まじい早さでコンソールを操って容赦なく撃退していく乎一郎。
「ルーアン先生が帰ってくるこの場所を、絶対守って見せる!!」
一人孤独な戦いをする乎一郎の指の爪はすでに割れていた。
「先生、僕、頑張ってます。帰って来たら誉めてくれますか.......?」
がっしゃぁぁぁん!!
出雲の研究室に天魔が侵入してくる。
「やれやれ。ノックもなしに人の部屋に入るなんて、無粋な方達ですねぇ」
天魔侵入の報を受け、研究室で待機していた出雲は前髪をふぁさっとして苦笑する。
しかし、その目は全く笑ってはいなかった。
「ぐぉぉぉぉ!!」
「しかも!突然襲って来るんですから!」
向かってくる天魔に出雲は落ち着いて胸ポケットの試験管を放つ。
「しゃげぇぇぇぇ」
当った試験管が割れ、中の液体がかかった天魔は溶けて消えていく。
「こちらでもあなた方の研究は進んでるんですよ。天魔化したものにとって劇薬となる物質は何かとか、シャオさんの力以外で天魔化を解くことは出来ないか、とかね。もっとも、天魔化解除の研究は最後までに間に合わなかった訳ですが」
そう言って残りの試験管を天魔達に全てものの見事に命中させて倒すいずも。
「やれやれ、薬品が切れてしまいましたね。まだ大量生産出来ないんですよ、この薬品は」
そう言って出雲は壁のボタンを押す。すると、壁の一部が開き槍が出てくる。
「さて、科学者のするような事じゃありませんが、戦うとしますか」
苦笑して迫ってくる天魔を切り裂く出雲。
「この槍は特別製でしてね。天魔化したものの細胞を侵食しながら、天魔を切り裂くという優れ物です。つまり天魔で切れないものはない、といういうことなんですよ。これも研究の成果です。そして、科学者だから弱いと思ってるなら、考えを改めた方がいいですよ。宮内流槍術の技の冴え、見せて差し上げましょう!」
そう言って出雲は見事な動きで天魔達を次々と倒して行く。
最後の一匹を切り裂いた後、壁にもたれてずるずると崩れ落ちるように座り込んで出雲は呟く。
「雑魚とはいえ、さすがにあれだけの数だとこちらも無事ではすみませんでしたね」
白衣のあちこちが破れ、自らの地で真っ赤に染まってるのを見て苦笑する出雲。
「致命傷はないですが、深手ですね。早く手当てしないと出血多量で死に...かね..ないです....が..今は..少し...休みます....か」
そして出雲は目を閉じ、意識は闇へと沈んでいった。
「くっ!!良く考えたら一人で戦線を維持するのって目茶苦茶大変じゃないか!七梨の奴、後でぶん殴ってやる!!」
天魔を一人殴り飛ばして翔子が愚痴る。
「ぐぁぁぁぁ!!」
「うるさい!紫電拳撃!!紫電蹴撃!」
翔子がつけている籠手(ガントレット)に高圧の電流が流れ、紫の火花を飛ばしつつ殴られた天魔が吹き飛ばされる。そして、ブーツからも電流が流れ天魔を同じように吹き飛ばす。
「この紫電の籠手とブーツの威力は伊達じゃないんだよ!」
襲い来る天魔の攻撃を軽やかにかわし、的確に攻撃を叩き込む。その姿はまるで舞を舞っているかのように優雅で美しかった。
「大体、参謀や司令官が前線で戦うのって、間違ってるような気がするけど。でも、シャオ達が必死に戦ってるのに、司令室でじっとしてる事が出来ないんだよな、あたしも七梨も!!」
三体が同時に襲い掛かってきてもあっさりと打ち倒す翔子。
「EGS内じゃ、キリュウ以外に格闘戦で負けたことのないあたしを、雑魚の天魔ごときがどうこう出来るとでも思ってるのかね、こいつらは!!」
独り言を言いつつも確実に天魔の数を減らしていく翔子。
「あらかた片付いたな。じゃ、次のブロックの援護に行くか.......」
翔子が通った後には天魔の死体が死屍累々と転がっていた。
「斬!」
右手の大刀で天魔を切り裂き、左手の小太刀で天魔の攻撃を防ぐ。
「断!!」
攻撃を受け止められて動きの止まった天魔を太助はそのまま小太刀で斬り倒す。
右の大刀と左の小太刀を自由自在に操り天魔を倒す太助の姿はまるで三面六臂の阿修羅のようだった。
「絶対守るんだ!!シャオ達との想い出のつまったこの基地を!!」
シャオに頼み、月華乱舞で多方向からの攻撃をかわす修練を積んだ太助は凄まじい乱戦の中でも傷一つ負わずに天魔を倒していた。
「シャオの技の方がこれよりもずっときついんだよ!俺を倒したかったらもっと強い天魔を連れてくるんだったな!」
視界に動く天魔がいなくなったところで、太助は刀を一振りして液体をはらって刀は抜き身のまま歩き出す。
と、そのとき
「だって、司令官がこんなに強いなんて思わなかったんだもん」
「誰だ!?」
突如後ろから聞こえてきた声に、反射的に太助は前方にとんで間合いをとりつつ振り替える。
「はじめまして、七梨太助さん。私は智理。八天将の一人、千寿院智理よ。で、この子がプニプニ。私の助手なの」
アルマジロのような生物がよろしく、と頭を下げる。
「その智理さんが俺に何の用なんだ?」
(ま、まるで気配を感じなかった)
心に走る動揺を抑えつつ、太助が聞く。
「あなたを煉華様の所にご招待しようと思って。ついてきてくれますか?」
にっこりとして言う智理に太助が尋ねる。
「もし、嫌だと言ったら?」
「あんまり好きじゃないんですけど、力付くってことになります」
太助が静かに刀を構えて言う。
「じゃ、そうなるな」
「んー、無駄な抵抗だから、大人しく付いてきて貰えませんかぁ?」
困ったように言う智理。
「そもそも、煉華が俺に何の用なんだ?」
構えは解かず、そのまま聞く太助。
「私は知りません。とりあえず連れてこいって言われただけですから」
(人質、にでもするつもりか?正々堂々と戦えると思ったこっちが馬鹿だったって事なのか?とにかく、八天将相手に俺が勝てるかどうか.....誰かが来るまで時間を.....)
「センセー、時間かせぎに付き合ってる場合じゃないですよ」
「え?時間稼ぎだったの?じゃ、急がなくっちゃ」
手にボーラ(紐の両端に重しをつけて、投げて相手をからめとるもの)を構える智理。
「スペシャルケイス!短距離瞬間移動!!」
すっと智理の姿が消え、太助の真後ろに現われる。
「えいっ!!」
ボーラの重しで太助の後頭部を殴ろうとする智理。
「うわっ!?」
なんとか前転してかわした太助が立ち上がりながら思わずツッコミをいれる。
「使い方が違う!!」
「し、知ってるもん!冗談よ、冗談」
真っ赤になって言う智理。
「センセー、今のって本気だったんじゃ....」
「冗談だってば。今度こそ!瞬間移動!!」
すっと消える智理。
「また後ろか!?」
慌てて振り替る太助の後ろから智理の声がする。
「残念でした。こっちだもん」
太助が今まで向いていた方、つまり、さっきまでの前の位置に太助の裏をかいて智理が現われる。
振り返ろうとした太助の後頭部をボーラの重しで思い切りぶん殴って気絶させ、そのままぐるぐる巻にする智理。
「さっき後ろに現われたからって、また後ろに現われるとは限らないのよ」
「センセー、使い方違うってば.......」
プニプニのツッコミに真っ赤になる智理。
「こういう使い方もできるって事なの!じゃ、撤退するよ。スペシャルケイス!!長距離瞬間移動!!」
すっと智理、プニプニ、太助の姿が消える。
「七梨ー!!」
瞬間移動する一瞬前、偶然そこを通りかかった翔子は太助がさらわれるのを目撃していた。
「くそっ!!目的は七梨だったのかよ.....くそぉ!!」
敵にまんまと出し抜かれ、怒りと疲労感に襲われた翔子はその場に座り込む。
そして戦闘終了後、たかしと出雲は医務室送り、乎一郎はしばらくキーボードがうてない状態になり、花織も少なからず傷をおっていて、無傷なのは翔子だけだった。
4
八天将の最期
一方その頃、シャオ達と八天将の戦いは膠着状態に陥っていた。
「如月流縛鎖術奥義、八岐大蛇!」
雛菊の十手の仕込鎖が8つに分かれ、それがまるで大蛇のようにシャオに襲い掛かる。煉華の力でパワーアップし、複数の鎖を自由自在に操る能力をもった雛菊の奥義の一つである。
「コンビネーション5!」
いくつかを見切ってかわし、いくつかをアクロバットにかわしてシャオは支天刃を頭上に投げる。
すると支天刃が5枚9組になってシャオの回りを浮遊し始める。
「月華熱光!!」
5枚の支天刃からそれぞれ高熱のビームが放たれ、鎖を焼き払う。
新たなる力により、支天刃を何枚か一組にし、色々なタイプの光線を放てるようになったのである。威力は重ねられた支天刃の枚数が多いほど強力になる。
「やるわね。じゃ、これはどう!?」
再び八岐大蛇を放つ雛菊。
「月華熱光!」
支天刃から放たれた光線が前後左右、頭部と足元を狙った6つの鎖を焼き払う。
「二本足りない!?」
シャオがはっと気付いたときには地面の下から鎖が現われ、シャオの足を貫こうとする
「危ない!!」
反射的に跳躍してかわそうとするシャオに再生した6つの鎖と地面からの二つの鎖が迫る。
「黒天笛、召陽炎!」
ルーアンの黒天笛が鳴り響き、召還された太陽の炎が鎖を焼き付くす。
新たなる力により、ルーアンは太陽の炎を強弱自在で召還出来るようになったのだ。
「ありがとうございます、ルーアンさん」
「いいから、あんたは敵に集中しなさい」
「はい!」
ルーアンは先ほどから他の二人のサポートにまわっているのである。
「地力宿拳!」
新たなる力によって、キリュウは大地の力をその身に宿し、厚さ10cm以上の鉄板すらも易々と打ち抜けるようになっていた。
だが、キリュウのその打撃を受けてもエミリーは
「いたいじゃないですかぁ!」
の一言ですませた。
煉華の力によってマネキンのエミリーの体は、キリュウの技ですら破壊できない程の強度を持っているのである。その上、キリュウはシャオにとっても同じ事だが、相手を殺してしまいかねない攻撃は出来ないのである。
エミリーは煉華に交さんを人質をとられ、それで配下になっているのだ。
それを知っている為、キリュウの攻撃はどうしても本来の力を発揮できないでいた。
ちなみに、雛菊は元々は探偵だったが現代の怪盗、夢幻斎を捕まえる力を得る為に、煉華の口車に乗せられて配下になっており、基地を襲った智理は伊吹邪甲を人質にとられて配下になっていた。
そして3人とも能力を損なわない程度に、煉華に洗脳されているのである。
八天将の中で、特にこの3人はこの年代の人間であった。
「おかえしです!」
エミリーの無造作に振られた一撃から発せられる衝撃波を受けてキリュウが吹き飛ばされる。
「くっ!!」
空中で一回転し、なんとか足からシャオの側に着地するキリュウ。
「これでは、決着がつかぬな.......」
ルーアンも慌ててシャオ達の方へと駆け寄る。
「どうするのよ?シャオの技でちゃっちゃと浄化出来ないの?」
「あの方達に宿ってる煉華さんの力を弱めることが出来れば、浄化出来るんですが...」
困ったように答えるシャオがはっとする。
「どうしたのだ?シャオ殿」
「太助様に頂いたネックレスの鎖が切れたんです。まさか、太助さまの身に何かあったんじゃ.......」
お守りにつけていた太助のプレゼントのネックレスの鎖が切れたのである。
と、そのとき。プニプニが煉華の側に現われる。
「センセーが仕事を終えて戻って来ましたよ」
「分かった。智理にもこちらに参戦するように伝えよ」
「はい」
プニプニがその場から消えたのを見送り、煉華は3人に言う。
「すまないが、私は用が出来たのでこれで席をはずさせてもらう。八天将の残り一人も参戦させるから、最後まで楽しんでいってもらいたい」
そう言うと煉華はその場からすっと消える。それとほぼ同時に智理が現われる。
「遅くなってごめーん。智理ちゃん、とうちゃーく!」
しかし、かなり疲労した様子であった。
「あ、智理さん。おかえりなさーい」
「仕事、終わったの?」
雛菊の問いに得意気な顔で答える智理。
「うん、EGSの司令官をきちんと捕まえてきたよ。これが終わったら、やっと私達も自由になれるんだよね?」
「煉華が約束を守れば、ね」
あまり期待してない声で雛菊が答える。
智理、エミリーは人質をとられて、雛菊は夢幻斎を捕まえるために煉華の配下となったが、3人ともこれを最後に自分達を自由にするように煉華に約束させたのである。
煉華もこれを最後の戦いと思ったのか、承諾してはいた。
「ちょっと待って下さい!司令官を捕まえたって、太助さまをですか!?」
シャオが驚いたように聞く。
「えっと、そういう名前だったかな?多分、そうだよ」
智理の答えにシャオが硬直する。
「そんな......太助さまが.......私....守護月天なのに......太助さまを守らなくちゃいけないのに......鎖......だから切れて..............」
顔を手で覆い、その場に崩れ落ちるシャオ。
「シャオ殿!!」
「シャオリン!!」
慌ててキリュウとルーアンが支える。
「今は悲しんでる場合じゃないわ!攫われたのなら取り返せばいいのよ!シャオリン、呆けてないで立ちなさい!そしてたー様を取り返すのよ!!」
ルーアンの言葉にはっとするシャオ。
「そ、そうですよね。太助さまをお助けしないと。今それが出来るのは、私達だけなのだから.........」
そう言ってシャオは支天刃を構え、立ち上がる。その目は完全にすわっていて、シャオの怒りの大きさを示していた。
「一刻も早く太助さまをお助けしなければならないんです!皆さんには申し訳ないですが、手荒にいかさせてもらいます!!コンビネーション3!月華烈光!!」
支天刃が15枚3組になって激しい光を打ち出す。
「防鎖壁!」
「空間歪曲!」
雛菊の鎖の壁と智理の技で防御しようとするが、キレたシャオの容赦ない攻撃はそれをいともたやすく打ち破り、3人を吹き飛ばす。
「あーあ、シャオリンの逆鱗に触れるような事するからそうなるのよ。でもね、私だって怒ってるんだからね!!黒天笛、召極炎!!」
ルーアンが召還出来る最強の炎が3人を襲う。
「きゃぁぁぁぁ!!」
疲労していた智理と体質的に炎に弱いエミリーが悲鳴をあげる。
「今助けるから!!烈風鎖撃!!」
少し離れた所に飛ばされ炎に巻き込まれなかった雛菊の高速で振った鎖が起こす爆風が炎を吹き消す。
「こちらの戦力低下の隙をついて基地を襲うとは......卑劣な。煉華、そこまで堕ちていたとは.......ならば、こちらも加減は無用!大地よ、その精霊たる我に力を!!烈気拳衝!!」
キリュウが気を込めた拳を大地に叩き付けると、地面からキリュウの気に反応した地脈の力が吹き出して敵にダメージを与える。
「きゃぁぁぁぁ!!」
シャオ達の容赦ない攻撃にあっという間にぼろぼろになる3人。
本気で攻撃すれば、これほどの力なのである。
「シャオ殿!今が好機だ!!」
怒ってはいても、冷静なキリュウの言葉にはっとするシャオ。
「あっ、はい!!夜闇を照らす、優しき月の光よ。その癒しの力もて、邪に捕らわれしものを浄化せよ。月華浄光!」
支天刃を一つにしたシャオが天にそれを掲げると月霊珠が輝き、支天刃で収束された光が雛菊達に優しく振りそそぐ。
「うっ.....」
雛菊達を呪縛していた煉華の力が消え、3人は完全に正気に戻った。
5
解放されし者達
「つつっ........」
「あいたたた....」
「痛いです......」
浄化され、3人はある程度傷も一緒に治されていた。
「ごめんなさい!煉華に操られていたとはいえ、皆さんに迷惑をかけてしまって.....」
智理が3人を代表するかのように謝る。
「大事な人を人質にとられていたんですもの、仕方ないですわ。こちらこそさっきはごめんなさい。怒りに我を忘れて皆さんにひどい事を......」
シャオがすまなそうに謝る。
「でも、そのおかげで私達を元に戻せたのですから........気になされないで下さい」
エミリーが微笑んで答える。
「でも、私達が元に戻った事が煉華にばれたら、伊吹くんや交さんが......」
雛菊が心配そうに言う。
「その心配なら御無用」
「ああ!!石川夢幻斎!?と.....誰?」
雛菊が驚きの声をあげる。探偵である彼女のライバルがわざわざ彼女の前に姿を見せた事に対する驚きと、その後ろに数人の人影があったからだ。
「平成の大怪盗、石川夢幻斎に盗めないものはない。と言いたいところだが、今回はこの人達に助けられたな」
すっと夢幻斎が横にどくと、ダン、七希、美穂の3人がいて、その後ろに伊吹と交さんが立っていた。
「伊吹くん!」
「交さん!」
智理とエミリーが自分の大切な人に抱き付く。
「ダンさん、七希さん、美穂さん。どうしてここに......?」
「それに、夢幻斎まで」
シャオと雛菊が驚いたように言う。
「初代司令の太郎助殿から仰せ付かったのです。煉華の本拠地に捕らえられている人達を救出するように、と。それで私達、諜報部隊が出動とあいなった訳です。夢幻斎殿とは途中で御会いして、目的が一緒だったので協力したのです」
ダンが答え、後ろで七希と美穂がVサインをする。
「ま、そういう事だ。ところで、雛菊。俺を捕まえたいんなら誰かの力を借りるんじゃなくて、正々堂々真っ正面から自分の力で来るんだな。でないとお前のご先祖様達が草葉の影で泣いてるぞ?じゃ、俺はここらで退散させてもらうよ」
そう言って歩き出す夢幻斎の背中に雛菊が言う。
「言われなくたって、今度こそ真っ向から勝負してあげるわよ!そして、今度こそ絶対捕まえてやるんだから!!」
夢幻斎は少しだけ振り返って晴れやかな笑顔を見せて答える。
「期待してるぜ!じゃぁな!!」
そう言うと今度は走りだし、姿を消す。
「な、何よ。何でそんな笑顔で答えるのよ......」
「あー、顔赤いよ、雛菊ちゃん」
からかうように智理が言う。
「う、うるさいわねっ!!」
雛菊が怒って智理を追い掛ける。
「きゃーっ!伊吹くん、助けてー」
「智理に何をするっ」
今度は伊吹も混ざっての鬼ごっこになる。それを尻目にエミリーと交さんは二人の世界を作っていた。
「交さん.......」
「すまない、私のせいで.......」
「交さんが無事なら、いいの......」
それを嬉しそうに見ていたシャオだったがふと我に帰ってダンに慌てて詰め寄る。
「太助さまは!?太助さまは一緒じゃないんですか!?」
「太助殿、ですか?どうして彼が一緒だと.......?」
ダンが戸惑ったように言う。
「まさか、太助も攫われてたのか!?」
「ええ!?太助くん、攫われてたの!?」
七希と美穂の言葉に頷くシャオ。
「ごめんなさい、それについては私が話します」
いつのまにか側に来ていた智理は皆にいきさつを話す。
そして、太助を攫った目的は知らないが、煉華はどこか別の場所に配下にも秘密の隠れ家を持っている事を教え、おそらく煉華はそこにいるだろうと言った。
手がかりが少なく、基地のみんなも心配なので、態勢を整える為にもとりあえずシャオ達は基地に戻る事にした。
「では、私達は基地に戻るが、貴公らはどうする?」
キリュウが雛菊達に聞く。
「あたし達も一緒に連れていって下さい!!ご迷惑をかけたぶん、力になりたいんです!!」
3人が即答し、交さんと伊吹も頷いていた。
「どうしましょう?キリュウさん、ルーアンさん」
「話から推定すると、多分、基地で動ける人間は少ないと思う。なら、手伝ってもらった方がいいんじゃないか?」
「私も、七希君に賛成です。それに、昨日の敵は今日の友って言うじゃないですか」
「お役に立てるかどうかは分かりませんけれど、精一杯お手伝させて頂きますから」
エミリーが深く頭を下げる。
「そうだな。では、手伝ってもらうとしよう」
「はい!ガンバリます!!」
キリュウの言葉に智理が嬉しそうに言う。自分に一番責任があるだけに、申し訳ない気持ちで一杯だったのである。
そして、みんなケンエンに乗り込み、現在羽林軍ロボと羽林軍達によって修復中のGWへと飛んで行った。
エピローグ
どこかにある、暗い部屋の中、煉華は上座に座り、自らにひざまづく仮面の少年に命令を下していた。
「私の新たなる忠実なしもべよ。我の為にその命、捨ててもらう事になるかも知れぬが良いな?」
仮面の少年は黙って頷く。
「では、まいろうか。本当の最後の戦いへ...........」
再び黙って頷き、立ち上がる少年。その腰には二本の刀が吊されていた。
しかし、煉華は気付いていなかった。
うなづいた少年の瞳から一粒の涙がこぼれ落ち、口がかすかに動いて声にならない言葉を紡いでいた事を。
<シャ......オ........>
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