精霊戦隊エレメンツ

最終話 −新たなる絆−


煉華再来

GWに戻ったシャオ達は、基地の修理と負傷者の手当てに忙殺されていた。
特にシャオは太助を煉華にさらわれた悲しみを忙しさで忘れようとしているのかのように一番働いていた。
「来々、長沙」
長沙を呼び出し、自らも一生懸命基地防衛隊員の看病に専念していたのである。
「シャオちゃん、気持ちは分かるけど、無理したら駄目よ。大丈夫、きっと太助は無事よ。そのうちひょっこり戻って来るわ、きっと」
「そうですよぉ。太助さんが帰ってきたときにシャオさんが倒れていたりしたら、太助さん、悲しみますよぉ。だから、ここは私達に任せて少し休んで下さい」
「そうそう、そもそも敵にさらわれた太助の馬鹿のせいでシャオちゃんが体調崩したりしたらいけないしな」
最初の声は太助の母のさゆりで、その次は急須の精霊の茶都美。最後の冷たい台詞を言ったのは太助の姉の那奈である。
さゆりはEGSの医療チームの一員なのだが、ボランティアがいきがい(しないと死んでしまうという噂あり)なのでときどきEGSから姿を消すのだ。EGSが襲撃を受けたとの報せを受けてついさっき戻って来たのである。そして茶都美は本体である急須の寿命がきれそうになり、もっと主と一緒にいたい、そう願ったその想いの強さを利用されて天魔にされたのをシャオに浄化されて以来、EGSの手伝い(主に医療班の)をするようになったのである。茶都美はさゆりのお供でボランティアに行っていたが、先ほど一緒に戻って来たのである。
ちあなみに二人とも普段のシャオと雰囲気がそっくりであり、医務室でシャオ、さゆり茶都美の3人が話していると同じ人間(精霊二人と人間が一人だが)が話しているように感じるとEGSでは有名である。
また、那奈はEGSの情報収集局員で、あちこちを旅していたが太助がさらわれたとの報せを聞いて戻ってきたのである。
「でも、こうやって体を動かしてないと太助さまの事で胸が張り裂けそうになって、苦しいんです..........」
うつむき、目に涙を一杯にためてシャオが言う。
「シャオちゃん..........」
「シャオさん............」
思わず口籠もる二人。
「シャオさーん!緊急事態です!!早く司令室に来てくださーい!!」
突然、回線が開かれて智理が言ってくる。EGSの主要メンバーがほとんど医務室送り(ベッドが足りないので彼らは別室にいる)になった為、原因を作った彼女は他の八天将と共にEGSの手伝いをしているのである。
「シャオちゃん、もしかしたら太助が帰って来たのかも!早くいきなさい」
「早く行って下さいですぅ」
「あ、は、はい!!」
さゆりと茶都美にせかされ、慌ててシャオは司令室へと駆けていった。

「遅れてすみません!!守護月天シャオリン、只今、到着しました。で、何があったんですか!?太助さまがお帰りになられたんですか!?」
息を切らせていうシャオに少しびっくりしつつも、翔子が首を振りながら言う。司令の太助が不在の今、彼女が司令官代行なのである。
「いや、そうだったら良かったんだけど、敵襲だ。しかも、煉華が直々に手下を一人引き連れて」
モニターから八天将クラスの天魔が一人、そして煉華と思われる反応を見つけたのである。
そうこうしているうちにEGSのスクリーンに煉華が写る。
「先程はは客を途中で放り出すような真似をしてすまなかったな。本当のもてなしの準備をせねばならなかったのでな」
「煉華、お主がそこまで性根の腐った奴だとは思いたくなかったぞ。主殿はどこだ!?主殿を一体どうしたのだ!」
珍しくキリュウが怒気を発して強く言う。
「性根が腐ってる、か。私は兵法に従って、敵の戦力を分断して叩く、という事をしただけなのだがな」
「なんですってぇー!!」
ルーアンが煉華の淡々とした物言いに怒って怒鳴る。
「それよりも、だ。お主達の主を取り戻したかったら、この前の場所に来るが良い。そこで今度こそ私が相手をしてやろう。この天魔とともに、な。では、先に行ってまっているぞ。さらばだ!」
そう言って煉華と供の天魔は姿を消す。
「どうします?キリュウさん」
シャオが厳しい顔出言う。また騙し討ちを受けるのを警戒しているのだ。
「今度はGWであそこまで行こう。それなら例え奴が騙し討ちをかけようとしても我らがすぐに加勢出来るからな。もっとも.....もう騙し討ちをかける必要はないはずだがな」
翔子は少し考え、キリュウの言う通りだなと結論をだした。
「じゃ、GW発進!!」
さまざまな想いを乗せ、決戦の場へとGWは飛んでいった。


悲しき戦い

「来たか............」
指定場所にある、小高い丘の上でGWが来るのを確認した煉華は微笑する。
「母艦ごと来たか。キリュウが考えたのだろうな。さて、行くぞ」
「ぎょ.......い......」
煉華と仮面の少年は軽くジャンプして丘の上から地面へと着地する。
シャオ達はすぐにGWから降り、煉華と対峙する。
「煉華さん!太助さまは、太助さまはどこにいらっしゃるんですか!?」
シャオの悲痛な叫びを無視して、煉華は微笑する。
「この天魔を倒せたなら、教えて差し上げよう。ゆけ!!」
「ぎょ...い....」
煉華に付き添っていた天魔がゆっくりと前に出て、腰に差していた大小二本の太刀を構える。
「!?」
その構えを見たシャオが息をのむ。
「そ、その構え...まさか......そんな!?」
「シャオ殿!?どうしたのだ?心当たりがあるのか?」
キリュウがシャオの様子に気付いて聞く。
「あの太刀の構え方、太助さまと全く同じなんです。でも、そんな......」
信じたくない、というようにシャオが首を振る。
太助の多方向からの攻撃を避ける訓練に付き合わされていたシャオは、太助の構え方や動きを誰よりも知っているのだ。そのシャオが言うのならほぼ間違いないだろうとキリュウは判断した。
「そうなのだな、煉華。あれは主殿なんだな!?」
キリュウの問に煉華は薄く微笑んだ。
「つまらぬな、もうばれてしまったのか。仮面をとってもいいぞ」
煉華の言葉で天魔が仮面をとると、その下にはシャオ達が良く知る顔があった。
「太助さま....」
「たーさま....」
「主殿....煉華.....以前のお主はこのような卑劣な真似をするような者ではなかったはず。どうしてこのようなことを.......」
キリュウの絞り出すように言った声を煉華は薄く笑って聞き流す。
「無駄口を聞いてる暇は無いと思うがな?」
すでにシャオ達は太助の太刀の間合いに入っていたのだ。
「シャッ!!」
鋭い呼気と共に太助がキリュウに斬り掛かる。
「早い!?」
キリュウが何とか大刀の斬撃をよけるが小太刀が別の角度から迫ってくる。
「ガッ!?」
間一髪のところで、ルーアンが小石を投げて太助の注意をそらした隙にキリュウが後ろ
に大きく跳躍して間合いを広げる。
「助かった、ルーアン殿」
「どういたしまして。でも、どうするのよ?たーさまが相手じゃ戦えないじゃない」
ルーアンが困ったように言う。
「ルーアンさん、キリュウさん。ここは私に任せていただけませんか?」
「シャオリン?」
「シャオ殿?」
シャオの言葉に驚いたようにそちらを向く二人。
「何か策があるのか?シャオ殿」
「ありません。でも、私は守護月天。主様をお守りするのが使命。そして、太助さまが煉華さんの呪縛に捕らえられているならばそれからお救いするのも、私の使命」
太助を守れなかった、そのことがシャオの心に大きな傷を与えており、そして敵に利用されている太助をこの身にかえても救いたい。本当はそんな気持からでた言葉なのである。
「ふむ、面白い。では、こうしよう。シャオが一人で戦い、勝てたならお主達の主を返
してやろう」
シャオが勝てなければ、それはシャオの死を意味し、勝てても太助を傷付けた自責の念でシャオが押し潰される。
それを見越しての言葉にルーアンが怒る。
「な、なんであんたなんかの言うことを聞かないといけないのよ!!」
「別に聞いて貰わなくても結構。その場合はその者の許容量を越える力を送り込むだけだからな」
許容量を越えた力を送られれば内部の力に体の強度がついていかず、内部から爆裂してしまう。つまり、こちらの提案を受けなければ太助を殺す、そう言っているのである。
「卑怯な.......」
キリュウが悔しさの余り、血がにじむほど強く唇を噛む。
「ここは、私に任せて下さい。命に代えても太助さまを救ってみせますから」
シャオの決意に満ちた瞳を見て二人は仕方ない、という風に頷く。
「あんた、言い出したら聞かないとこがあるからね。いいわよ、あんたに任せるわ。でも、絶対たーさまを助けるのよ。そして、あんたも生きて帰る事。それが条件よ」
「ルーアンさん........ありがとうございます」
少し照れてそっぽを向くルーアンにシャオは礼を言い、キリュウの方を見る。
「分かった。ここはシャオ殿に任せよう。ただし、ルーアン殿が言ったように死んではならぬぞ、シャオ殿」
「はい!!」
「そちらの意見もまとまったようだし、そろそろよいか?」
今まで太助を待機させていた煉華が暇そうに言う。
「はい。いつでもどうぞ」
「で、変身はせぬのか?」
変身せず、そのままの格好でいるシャオに煉華が聞く。
「しません。太助さまを傷付けるような事は出来ませんから」
「そちらがそれでいいなら、こちらも構わぬが。では、いけ!!」
「しゃっ!!」
一気に太助がシャオとの間合いを詰める。
「くっ!」
一閃された大刀を避け、小太刀をぎりぎりで見切る。
「太助さま!目を、目を覚まして下さい!!」
「.......」
無言、無表情で刀をふるう太助に必死で呼び掛けるシャオ。
しかし、シャオがいくら太助の動きや技を良く知っているとはいっても、煉華の力によ
って強化された太助の動きを完全に見切る事は出来ず、シャオは徐々に手傷を負い始め
る。
そして傷は集中を乱し、動きを鈍らせ、更に傷が増える原因となる。
「きゃっ!」
そのとき、シャオをかすめた刀によって服のポケットを少し切り裂かれ、中から太助に
もらったネックレスが落ちる。
「!!」
思わずそれを拾おうとしたシャオに刀が迫る。
「シャオリン!!」
「シャオ殿!!」
シャオはネックレスを胸に抱いてぎゅっと目をつむる。
「........?」
いつまでたっても痛みが来ないのをいぶかしんでシャオが恐る恐る太助の方を見る。
「う.....あ.....?」
太助はシャオの持つネックレスを凝視して固まっていた。
「太助さま....覚えてて下さったんですね........」
双眸から涙を流してシャオが言う。
「うう......ああ..........」
「何をしている!!」
煉華の激に太助が再び動き出す。
「かぁぁぁっ!!」
「太助さま!!」
何とかそれをかわしてシャオが叫ぶ。
「太助さま、思い出して下さい!!これを!わたし、わたしはこれを貰ったときすっごく嬉しかったです。そのとき、この戦いが終わったら太助さまに聞きたい事が出来たんです!だから...だからお願い!!元の、優しい元の太助さまに戻って!!」
「ぐ...あああ.....」
太助が太刀を取り落とし、頭を押さえてうずくまって呻き出す。
「そ、そんな?私の呪縛が解けかかっている.....?」
煉華が信じられない、という風に呟く。
「煉華、甘かったわね!悔しいけど、たーさまとシャオリンの結び付きは誰にも切れないぐらいすっごく強いのよ!!」
「ルーアン殿......」
ルーアンの言葉に驚くキリュウにルーアンは軽く肩をすくめる。
「信じない!絶対信じない!!何をしているのよ!早く、始末なさい!!」
興奮して普段の作っていた口調が崩れ始めるが、煉華は気付いてない。
「うう.........あああ....ヤ...メ...ロ.....」
太助の口から呻き声にまじって言葉が出始める。
「太助さま!!」
「くっ!ならば...もういい!天力召与!!」
煉華の持つ鏡から太助に向かって光が伸びる。
「太助さま、危ない!!きゃぁぁぁぁ!!」
「シャオリン!!」
「シャオ殿!!」
太助を光から庇ってシャオが受ける。
「はぁ...はぁ.....大丈夫ですか?太助さま」
「シャ...オ....」
瞳の焦点が段々あいはじめて、糸のきれた操り人形のようにかくんと太助はその場に
崩れ落ちる。
「太助さま!」
「ごめん...俺...シャオに...辛い....想い....させたんだな.....」
慌てて抱き止めたシャオの腕の中で太助が謝る。
「いいんです....太助さまが無事なら....それでいいんです...」
シャオが涙をこぼしながら太助を抱く腕に力を込める。
「太助さま....」
「シャオ....ありがとう.....」
「うそ.......どうして、どうして私の力から抜け出せたの......?」
煉華が信じられない、といように呟く。
「それはね、たーさまとシャオリンの絆は誰にも壊せないぐらい強く、深いものだからなのよ」
ルーアンが少し寂しそうに言う。
「さて.......主殿が元に戻った以上、こちらとしてはそちらに遠慮するものは何も無くなった訳だな?」
キリュウが冷たい声で言う。
「そう.....なるな」
少し落ち着きを取り戻した声で煉華が言う。
「言っとくけど、もう謝ったって許さないわよ?覚悟は出来てるんでしょうね?」
「今回ばかりはルーアン殿の言う通りだ。いくらお主といえど、今回の事は許す事は出来ぬ」
ルーアンが指をバキバキならしながら言い、キリュウがすっと短天奥義で口元を隠しながら言う。
「まて......待つんだ、二人とも....煉華は....悪くない......」


告げられた悲しみ

「太助....さま?」
「たーさま?」
「主殿、どういう事なのだ?」
3人が驚いたように太助を見つめ、煉華さえもが唖然として太助を見る。
「煉華に洗脳されたとき、あいつの記憶が俺に流れ込んできたんだ」
太助が頑強に抵抗するため、煉華が大量に力を注ぎ込んだ際に意識が同調してしまい煉華の記憶を太助が見てしまったのである。
「あいつの今までの主は大抵非業の死を遂げているんだ...........」
太助の話を簡単にまとめると次のようになる。
煉華は主とともに世の中を良くしていくのが使命。しかし、そうは言っても一緒に世直しの旅に出てくれるような人は少なく、キリュウと同じぐらい主に追い返される確率が高いのである。それでも中には一緒に世直しの旅に出てくれる者もいた。そして各地を転々と旅している間に民衆に人気が出て、土地の支配者に邪魔に想い始められる時が来る。そして支配者が刺客や暗殺者を送りこんでくるのだ。それを撃退するだけの力を主や仲間に与えるものの、強い力を与えすぎる訳にもいかない煉華は主を殺されてしまう事があった。そして、逆に主が民衆の支持を得て土地を治めるようになり、権力や財産を手にいれて煉華を遠ざけて私利私欲に走ってしまったりしたときは煉華がみずから手を下さなければならなかった事もあるのである。
「そんな........自分の主様を手にかけるなんて........」
シャオが信じられない、という顔をする。
「私の使命は世をよくする事。しかし、主が世を乱す存在になったときは原因を作った私が責任をとって滅ぼさねばならぬのだ。悲しいものだな、どんなに心清い人でも、金や権力を得ると変っていってしまうのだから........」
しかし、それでも使命と割りきって使命を果たして来た煉華も段々疲れ始めて来ていたのである。そんなとき、今までで一番優しく、心の強い最良の主に巡り合ったのである。この人となら最後まで頑張れるかも知れない。だから絶対死なせたりしない、そう煉華は強く想っていた。だが、主の周りに人が集まり、段々大きな集団になって来たとき悲劇は起こった。主は例えいくら大きな集団の長となっても増長する事なく、最初と変わらないまま頑張っていた。しかし、その存在を疎ましく思った時の支配者によって刺客が送られてきたのである。それもただの刺客ではなく、何年もかけて主と煉華の信頼を得て油断させ、その信頼を裏切って殺す、という手の込んだやり口だったのだ。
「彼は何度となく主を守ってくれた。死地にも赴いてくれた。主様と私は彼を心から信頼し、慕っていた。なのに、なのに!!」
煉華は怒りと悲しみの入り交じった顔をしていた。
もっとも信頼し、主の次にとても慕っていた人物に裏切られ、主を殺された哀しみ、怒りは煉華の心に深い傷を与えた。
「そいつの手によって主を惨殺されたとき、煉華は人という生き物を信じられなくなったんだ。そして、煉華にとって人間は救う事の出来ない、排除すべき対称になってしまったんだ......」
太助が言い終える。
「それが、私達と煉華さんが最初に戦ったときなんですね.....」
煉華はうつむいて沈黙していた。
「だから、煉華が悪い訳じゃないんだ。彼女は元々は心の優しい女の子なんだ。だから俺はシャオ達と戦って欲しくない。煉華、お前の悲しみは分かる。だけど、もうやめよう?そして俺達と一緒に世界を良くする為に、もう一度頑張ろうよ」
太助の言葉に煉華は悲し気に微笑み、首を横に振る。
「なるほどね、シャオちゃん達が心から慕う訳ね、こんなに優しくて、こんなに強い人なんだもの。でもね、私にも意地がある。そして今まで私に協力して散っていった者達の為にも途中で投げ出す訳にはいかないの。だから、私を止める方法は、私を倒す事だけ........」
そう言って煉華は虹天鏡(こうてんきょう)を空に掲げる。
「天力召与!」
鏡から光が放たれ、そして煉華を目掛けて光が天空から降りそそぎ、煉華の周りに力場が形成され始める。
「これが正真正銘、最後の戦い.....」


最終決戦

煉華の周りの力場がどんどん大きくなっていき、巨大ロボットが現われ、煉華が乗り込む。
「梵天機ウラヌス!」
シャオ達は急いで太助を安全な場所へ避難させるべくGWに連絡を取る。
「太助さまを安全な所へ!」
GWから翔子が降りてきて、太助に肩をかして立ち上がらせる。
「七梨の事はあたしに任せときな」
翔子の肩を借りて立ち上がりつつ太助は3人に言う。
「シャオ、ルーアン、キリュウ、負けるなよ!そして、煉華を助けてやってくれ」
「はい!」
「おっけー!」
「心得た!」
太助を見送り、3人は煉華と戦うべく変身する。
「霊珠転身!!」
3人を光が包み込み、光がおさまったとき、3人の精霊戦士が現われる。
「癒しの月光その身に纏い、星の輝き司る!月の精霊戦士、ブルームーン!」
「輝く陽光その身に受けて、心で燃えるは情熱の炎!太陽の精霊戦士、イエローサン」
「母たる大地の力をもって、拳で砕くは悪しき企み!大地の精霊戦士、レッドアース」
3人は精霊機を発進させるようGWに要請する。
「要請確認、精霊機射出!!」
司令席に座った太助が指示を出す。
「七梨。気持ちは分かるけど、休んでた方が....」
翔子が心配そうに言う。
「シャオ達が最後の戦いに挑んでるんだ。俺だけゆっくり休んでなんかいられないよ」
太助が消耗しきった体を司令席に埋もれさせて言う。
翔子はやれやれ、と諦めたように首を振る。
「山野辺、あいつらも出すぞ」
「あいつら?ああ、分かった。智理、雛菊、コンソールの青と赤のボタンを押してくれ!」
「りょーかい!」
「了解!!」
二人がボタンを押すと、GWから6つの光が放たれる。
軒轅の宿った高速輸送戦闘機、天鶏の宿った重装火力戦闘機、天高の宿ったステルス諜報戦闘機。そして天陰の宿った狼型ロボットと軍南門の宿った人型ロボット、車騎の宿ったキャノン砲戦車である。
「よし!天空合神、空星王!獣人合神、陸星王!!」
軒轅、天鶏、天高の宿った3機の戦闘機が変形合体し、羽の生えた赤い人型ロボットへとかわる。そして天陰、軍南門がそれぞれ宿ったロボットが合体してケンタウルス型のロボットになった後、車騎の宿った戦車が変形して軍南門の肩にくっつく。
「1対5か。これはさすがにこちらも増援をさせてもらうぞ。いでよ!空の最強天魔サンダーバード、陸の最強天魔ベヒモス!」
空が雲に覆われ、雲の間から巨大な鳥型天魔が現われ、大地を裂いて巨大な狼型天魔が現われる。
「私の最強最後の手札。空星王と陸星王の相手はこいつらがする。では、いくぞ!」
戦闘準備が出来たとき、太助がコカ&ルイヘキジン結界を展開させる。
「これで、思う存分力を振るえるな」

サンダーバードと空星王が空に舞い上がり、戦闘を開始し、ベヒモスと陸星王も戦闘を開始する。
「ケェェェェ!」
サンダーバードが雷を吐くが、空星王が火を吐いて打ち消す。
「ウォォォォォォン!」
「ふんぬぅぅぅぅぅ!」
ベヒモスの体当たりを陸星王が受け止め、力比べが始まる。
「シャオちゃん、ルーアンちゃん、キリュウちゃん。私の持てる力全てで貴方達と戦わせてもらうわ。だから、手加減なんてしないでね......天変降雷!!」
煉華の力によってにわかに雷雲が立ち込め、雷が激しく降り注ぎ、精霊機を撃つ。
「きゃっ!?」
ピーッ!ピーッ!ピーッ!
強力な雷撃によって精霊機がショートし、計器が狂い始める。
「太助さま!精霊合神の許可を!」
「シャオ......それは今までに何度も試して失敗してるんだぞ?」
太助が心配そうに言う。
「たーさま、煉華はあいつの持てる力全てで戦うって言ったわ。だから、こちらも持てる力全てで応えないと失礼でしょ?」
「それに、今なら成功するような気がするのだ。頼む、主殿。許可を!!」
3人の熱い想いに太助は仕方ないな、と苦笑したあと表情を引き締める。
「分かった、シャオ達の事信じるからな。山野辺、精霊合神の準備を!!」
「こっちはいつでもいいぜ!」
参謀席に座った翔子は懐からカードを取り出す。
「よしっ、いくぞ!精霊合神(エレメンタルドッキング)承認!!」
太助が胸ポケットから鍵を取り出して司令席のコンソールにさして回す。
すると参謀席のディスプレイが反転、それに翔子がカードを通す。
「精霊合神(エレメンタルドッキング)、プログラムドライヴ!!」
精霊機が光に包まれ、宙に舞う。
「精霊合神(エレメンタルドッキング)!」
三体の精霊機が分解し、それぞれのパーツに分かれて合体を始める。そして光の収まったそのとき、キリュウの精霊機を基礎とした赤い精霊機神、クロノスガイアが誕生していた。
「やったぁ!成功だ!!」
太助がガッツポーズをとり、翔子も嬉しそうに指を鳴らす。
「合体した......?」
煉華も始めて見る合体にしばし呆然とする。
シャオ、ルーアン、キリュウの3人の心が一つになったそのとき、奇跡の精霊合神が可能になるのである。つまり、今まで失敗していたのは3人の心がなかなか一つにならなかったからなのだ。
「ゆくぞ、煉華!!」
近接格闘戦闘が得意なキリュウの精霊機神は一気に間合いを詰める。
「はぁっ!!」
キリュウの鋭い連続攻撃を受け流し、反撃する煉華。
「さすがだな......だが、格闘戦なら私の方に一日の長がある!いくぞ!鋼破連撃!」
大地の気を両拳と両脚に込め、キリュウが更に連続攻撃を仕掛ける。
「くぅっ!!」
キリュウの気を込めた連続攻撃が煉華の機体にヒットし、当った個所が爆発する。
「くっ!ならば、天変降陽!」
梵天機が空に手をかざすと、太陽の光がクロノスガイアに集中して当りはじめ、装甲を溶かし始める。
「あ、暑い.........」
暑さに弱いキリュウの動きが段々鈍くなって来る。
「あーもう!キリュウ、交代しなさい!この状況ならあたしの方がピッタリだから!」
そう言ってルーアンは自分の操縦席のボタンを押す。
「チェェェェェンジクロノスアポロン!スイッチィィィィオォォン!!」
精霊機神が光に包まれ、ルーアンの精霊機アポロンを基礎とした黄色い太陽の精霊機神クロノスアポロンへと姿を変える。
「エネルギー充填開始!」
太陽甲光がエネルギー源のクロノスアポロンが降り注ぐ太陽光を吸収し始める。
「天力召癒」
煉華が自らの力を使って機体のダメージを癒す。
「あー!ずるーい!でも、あたしのフルパワーの攻撃を受けて無事でいられるかしら?いくわよぉ!紅炎双竜砲!!」
二匹の巨大な紅の炎の竜が煉華を襲う。
「きゃぁぁぁぁ!!」
「まだまだ、もう一発!!」
エネルギーをあっという間に充填させてルーアンが技を放つ。
「くっ!天変竜巻!」
気圧を一気に変化させて竜巻を起こし、炎の竜をかき消す。
「そして、天変召夜!」
降り注ぐ太陽光がつきない限り、連射が可能になっていると判断した煉華は昼夜を逆転させて太陽を消した。
「う、うっそー!?」
ルーアンが驚きの声をあげる。
「でも、今のでだいぶダメージを受けたみたいですね。ルーアンさん、私にかわって下さい」
「いいところをあんたにとられるのはしゃくな気もするけど...頑張りなさいよ、シャオリン!」
ルーアンににこっとして、シャオがボタンを押す。
「チェンジクロノスアルテミス、スイッチオン!」
精霊機神が光に包まれ、光が消えたとき、シャオの精霊機アルテミスを基礎とした青い月の精霊機神クロノスアルテミスが現われる。
「山野辺!月は出ているか!?」
「ああ!しかも、満月だ!」
そう、空には白銀に輝く満月が浩々と照っていたのである。
「エネルギー充填開始!」
クロノスアルテミスの背中に6つの羽のようなパーツが現れ、エネルギー源である月光を集め始める。
「くっ............」
また昼に戻しても今度はルーアンの攻撃を受けるだけな上に、相当なエネルギーを消耗してしまうため、そのまま傍観する煉華。
「変だな....」
太助が呟く。
「何がだ?」
「なんで煉華は今のうちに攻撃しないんだ?」
「そう言えば.....」
そう、エネルギー充填中に攻撃すればいいのに、しないのである。
「あいつ....負ける気なのかな?」
「さぁ、な」
翔子が首を傾げたとき、エネルギーの充填が終わる。
「煉華さん、この一撃に私の全身全霊の力を込めさせて頂きます.......」
精霊機神の機体が月光に満ちて白銀に輝き出す。
「いきます!月華浄光!!」
クロノスアルテミスからまばゆい浄化の光が放たれる。
「天光烈破!」
煉華の機体からもまばゆい光が放たれる。
しかし、ルーアンの攻撃によって損傷を受けた煉華の機体は、本来の力を発揮しきれていなかった。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
シャオの放った光が煉華の光を飲み込み、打ち消して梵天機を直撃する。
丁度そのとき、空星王とサンダーバード、陸星王とベヒモスの決着も着いていた。
「けぇぇぇぇぇん!!」
空星王の体が真っ赤な炎に包まれ、サンダーバードを貫いて焼き付くす。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
陸星王の肩から打ち出された高エネルギー弾がベヒモスを直撃し、大爆発を起こしてベヒモスを倒す。
そして、光に飲み込まれた梵天機ブラフマーはぼろぼろと崩れ落ちて消滅していき、その後には煉華が倒れていた。


新しい絆

「煉華さん!」
慌てて精霊機神から降りて駆けより、煉華を抱き起こすシャオ。
「どうして........」
「どうして.....昔のような力で戦わなかったのか、って聞きたいの?シャオちゃん」
コクッと頷くシャオ。
「私にも分かんないや。ただ.....」
「ただ....何なのだ?煉華」
いつの間に来たのか、キリュウが聞く。
「ただ、シャオちゃん達を傷付けたら、貴方達の主様が悲しむと思って...そしたらね、力が出なかったの」
「煉華、あんた.......」
ルーアンが少し悲しそうな目で煉華を見つめる。
「やだな、そんな目しないでよ。別に私は後悔してないんだから」
「それは、主殿を利用した事も後悔していない、という事でもあるのか?」
キリュウが少し低い声で聞く。
「勝つためにした事たもの。後悔はしてないわ。ね、もういいでしょう?とどめ、さして.....って、駄目か。私が死んだらキリュウちゃんも消えちゃうもんね。じゃ、封印して」
そう、精霊は対をなす存在が消えると自らも消えてしまうのだ。
つまり、ルーアンが消えれば、シャオも消えるし、煉華が消えればキリュウが消えてしまうのである。
覚悟を決めた煉華がそっと目をつむる。
「煉華さん、口調が元に戻ってますね」
シャオが少し微笑んで言う。
「えっ........?そう言えばそうね。だって、キリュウちゃんみたいな喋り方って、本当は疲れるんだもん。キリュウちゃん、いつもこういう喋り方しててよく疲れないね」
キリュウが苦笑する。
「私は作ってこういう喋り方をしているのではなく、元々こういう喋り方なのでな。疲れるという事などないのだ」
「そうなんですか?」
シャオがぽけっと呟く。
「シャオ殿まで.......」
その場がふっと和む。
「煉華さん。ううん、昔に戻ってらっしゃるから蓮華さんですね。まだ、人間の事が嫌いですか?」
その問いに少し蓮華は考え込む。
「そうね.....太助くんみたいな人なら、もう一度信じてもいいかなって想うけど..ね」
「でしたら、蓮華さん。良かったら私達と一緒に太助さまにお仕えしてみませんか?」
シャオが微笑みながら言う。
「ええっ!?」
蓮華が信じられない、という顔でシャオを見る。
いや、蓮華だけでなく、ルーアンもキリュウもである。
「シャオちゃん、いいの?私、シャオちゃんの主さまにひどいことしたんだよ?」
そういう蓮華にシャオ首を振る。
「蓮華さん、確かにその事では私も怒ってます。でも、それ以上に蓮華さんを封印したりしたくないんです。私は、蓮華さんの事好きですから」
「シャオちゃん......」
優しい笑顔で言ってくれるシャオに蓮華はうつむいて肩を震えさせる。
「泣いて、いるのか?」
「う、うるさいわねっ!泣いてなんかないよっ!」
しかし、強がっていても声はしっかり涙声になっていた。
「強がるんじゃないの。嬉しい時にだって涙は出るもんなんだから」
「ルーアンちゃん.....」
「ちゃんはやめて、ちゃんは」
そのとき、GWから助けが翔子の肩を借りつつ降りて来た。
「みんな、無事だな?」
「太助さま!?駄目です!無理しないで下さい!」
「たーさま、シャオリンの言う通りよ。休んでないと駄目じゃない」
「無理をして、主殿の身に何かあったらどうするのだ」
3人の剣幕に思わずひるむ太助。
「こら、いつまであたしにもたれてるんだよ。シャオ、渡すからちゃんとしっかり支えるんだぞ」
そう言って翔子が太助をシャオの方に軽く押す。
「きゃっ!?翔子さん、太助さまを乱暴に扱わないで下さい。太助さま、大丈夫ですか?」
太助を支えつつ、翔子に少し非難の目を向けて太助の方を見るシャオ。
「大丈夫だよ、シャオ」
軽く微笑んで太助が言う。
「蓮華、君さえ良ければ俺達と一緒に活動してくれないか?君の天候を操る能力は数多くの人々を救う事が出来るから」
「でも........私貴方達に取り返しの付かない事、しちゃってるんだよ?あなたは良くても他の人が私を受け入れてくれるはず、ない........」
太助の言葉に首をふる蓮華。
「別に、あたしは気にしてないけど?まぁ、命懸けだったけど、面白かったし。普通は出来ない経験させてもらえたんだから、まぁ、あたしは感謝してる、かな?」
ちょっと照れつつも翔子が言う。
「過去の過ちを悔いるなら、これからその償いをすればいいんだよ。ありふれた言い方かも知れないけどね。君の力を必要としている人達がいる。これからはそういう人達の為に君の力をふるってくれないか?」
そう言って太助は蓮華に右手を差し出す。
「........ありがとう。でも、このままじゃあなたに協力する事は出来ないの」
そう言って蓮華は虹天鏡の中に戻る。
「蓮華!?どうして.....」
太助達が呆然としていると今度は太郎助がさゆりと那奈の肩を借りて現れ、虹天鏡を拾って太助に渡す。
「太助、中国に昔から伝わる伝説でな、心の清い者がこの鏡を覗けば、世界を救う救世梵天の力が得られるそうだ」
「親父......そうか。そういう事か」
太助はシャオに礼を言って自分だけで立ち、真剣な顔で虹天鏡を覗く。すると虹天鏡が輝いて中から蓮華が現れる。
「はじめまして、主さま。私は救世梵天蓮華、あなた様と共に世を救う為に出て参りました。あなたは私と共に世を救う為に頑張ってくれますか?」
「ああ、もちろん!これからよろしくな、蓮華」
太助が微笑みながら応えると、蓮華は心から嬉しそうに頷き、太助に抱きつく。
「はいっ!!こちらこそ、よろしくお願いします!!」
「こらー!!どさくさにまぎれてたーさまにだきつくんじゃなーい!」
ルーアンの言葉にどっと笑いがあふれる。
それは長かった戦いの終りを告げる鐘の音のかわりのように、長くその場に響き渡って
いた。


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