偉大なる来訪者
中から出てきたのは何と男だった。
今までとは違うと思っていた太助だったが男が出てくるとは思わなかった。
その男の背は太助より大きいが出雲まではいかないぐらいで、髪型は後ろの方は高い位置で縛っていて長さは1mを超え、前髪は右側だけ長く一度上がってから垂れており、先の方は外側を向くように折れ曲がっている。
何より美しいほどの黒髪である。
服は厚ぼったい感じのものを着ていて肌があまり見えない物を着ている。
色は黒や紺等の暗い色でまとめられている。
彼は床に立つと錫杖を掴み話しはじめた。
「我が名は永泰闇天 露深。主人であるあなたに永遠の安らぎと繁栄を与える闇の精霊。
主人であるあなたの名前を伺いたい」
そう言ってルシェンは太助の方を見ている。
太助は戸惑っていた、闇の精霊→永遠の安らぎ→死?という考えが浮かんだからである。
そうしている間もルシェンはじっと太助を見ている。
刺激しない方がいいかもと思った太助は思い切って、
「七梨…太助」
とつぶやくように言った。
するとルシェンは、
「七梨 太助。ではこれから七梨君と呼ぶ。良いな?」
と、さっきまでの口調とは裏腹に軽く答えた。
そんな意外な返答に太助は面を食らった。
そして続けざまに、
「私の力は主人に降りかかってくる力を吸収、反射して逆に利用したり、俗世間から離れたい時に一時的に私の闇の空間に連れていったりと、要するに七梨君の安息の時を守るといったものです」
彼がそういった後太助は小声で、
「そして俺の命を取るの?」
と聞くと彼は困った顔をして、
「皆そう言うんだよ。大丈夫、取らないから安心して普通の声で話していいですよ」
と答え、それを聞いて太助は安心した。
しかし、まだ何かが引っかかっていた。
そうしていると部屋のドアを開けてシャオが入ってきて、
「太助様、洗濯物乾き…」
そう言ってシャオはルシェンを見て止まり、ルシェンもまたシャオを見て止まった。
お互いを見詰め合う二人は過去に何かがあったという雰囲気を出していた。
するとお互いの顔付きが変わり、支天輪と羅天杖を構えて攻撃態勢に入った。
この豹変した様を太助はただ呆然と見ているだけだった。
「何故月天のおまえがここにいる。まさかまた私から主を奪おうというのか!」
「私は太助様からは離れたくありません!前のようにはいきません!来来、車騎」
二人の会話がさっぱり分からないまま車騎を出されて太助もパニックになっていた。
こんな状況になっても羽林軍がいるから部屋を壊されても大丈夫だろうという考えが浮かぶと気が楽になった。
そんな太助を見てルシェンは<こんな状況でも落ち着いているとは、さすが我が主だ。>
と、誤解してしまった。
その隙を突いて車騎の戦車が火を吹いた!
しかし、砲弾がルシェンにあたる直前、
「皆場復虚!」
と、ルシェンが叫ぶと砲弾が羅天杖の方へ曲がっていき玉の中に吸い込まれていった。
車騎も連射しているが一発もあたることなく玉に吸い込まれていった。
車騎があきらめて撃たなくなると、ルシェンは車騎の方に錫杖を向けて、
「皆場復虚」
と言うと車騎のいるところから黒い煙のような物が出てきて、車騎を包み込んで車騎を支天輪の中に戻してしまった。
シャオの顔は少し歪み、太助はポカ〜ンと見ているだけだった。
そしてシャオが次ぎにとった行動は、
「来来、北斗七星」
さすがにこれには、
「わわ、やめろシャオ!」
と太助も叫んでしまった。
支天輪から北斗七星が出かかったとき、
「皆場復虚」
哀れ北斗七星は出番も無く支天輪に戻されていった。
「たかが月の精霊だけで私にかなうと思っているのか。
私は闇の精霊、お前のような光の精霊が全員集まって互角だというのに。
まして月天の力の根源は強いものではないからな、たいした衝撃を受けない。
ま、日天でもいれば別だが、お前ら光の精霊共は協力すると強くなるからな。
もっともこんなところに日天がいるわけが…」
「今誰かあたしの事呼んだ?…げっ!あ、あんたは!」
「……何故日天が」
タイミングよくルーアンが来たのだった。
あれだけ騒いでいるところに来ない方が不思議なくらいだった。
「主殿、今日は天気もいいことだし外に行かぬか?」
そしてルシェンが驚いているとそんな騒動の中キリュウは只試練でも与えようかと来たのだった。
「あんた、ルシェンね!どうしてここにあんたがいるのよ!」
「それは私が言うことだ!なぜ日天と月天が同じ所にいる。
して、後ろにいるのは誰だ。
人ではないな、力を感じる」
そう言うとルシェンはキリュウの方を向いた。
そして、
「私は永泰闇天露深。安息を司る闇の精霊である」
「…私は万難地天紀柳。成長を司る地の精霊」
お互い名乗るとルシェンはルーアンの方を向いて、
「まあいい全員私が片づけてやる。
おとなしくそれぞれの媒体の中に戻れば良し、さもなくば私が戻してやる」
ルシェンはそう言うと再び羅天杖を構えた。
「冗談じゃない!あたしとたー様はずーっと一緒にいるんだから!陽天心招来!」
ルーアンは机やら、ベッドやら部屋にあるものに陽天心を掛け捲った。が、
「皆場復虚!」
陽天心をかけられたものたちは動き出すことなく力を玉に吸い取られていった。
「ああ、もう!何て事するのよ!」
「おとなしく帰る気はないようだな。なら私も少し本気を出す必要があるようだ。
だがここで戦うわけにはいかんからな、近くに広い空き地はないか?」
「上等よだれにケンカ売ったか思い知らせてやるわ!前のようにはいかないわよ!」
「ルーアンさん、そんな勝手な。あの人には私たちの力は通じないのですよ」
「あんた何弱気になっているのよ。
前のときは一人だったけど今度は三人いるんだから何とかなるわよ。
それともあんた、たー様と離れたいわけ?」
「…離れたくないです!」
シャオは力を込めて叫んだ。
そして、
「……ルーアン殿、私も戦うのか?」
いまいち状況が分からないキリュウが尋ねた。
「当然よ!あんたも試練半ばでたー様と離れたくないでしょ」
普段はキリュウの試練で太助が大変な目にあっているのを快く思ってないルーアンだが、
今回はキリュウの仕事熱心な性格を利用するため試練を認めるふりをした。
そしてキリュウの答えも「離れたくない」であった。
三人はルシェンと戦うということで一致した。
しかし、太助はいまいち状況がつかめていない。
しかも、<やっぱり光と闇って戦う運命なのかな>と誤解していた。
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