栄華なるモノ
その日は日曜だった。
その日ルシェンは朝食で、
「どうです?今日は私のいる空間に皆さんで来ませんか?」
と言った。
「なんであんたの空間なんかに行かなきゃ何ないのよ。
それにあんたのところに行ったってなんもないでしょ。」
とルーアンがかかってきた。
するとルシェンは、
「私のいる空間はこことは異質なものです。そこではわたしに出せないものはない。
不自由はしないんです。来ればわかります」
と答えた。
そして続けて、
「私はここに来てまだ七梨君に安息を与えていない。
ちょうどいい機会だし、三人も今日はゆっくりと楽しむといい。
そうだ、野村君たちも呼んだらどうです?多いほうが楽しいでしょう」
といった。
太助達はみんなが来たら安息も何もないじゃないかと思いながらもルシェンのいる空間に行くことにした。
やがてたかし、乎一郎、花織、翔子、出雲が太助の家にきた。
五人はルシェンの希望のため、何のために呼ばれたのか聞かされてなかった。
とりあえずリビングに全員集められ一息ついているとルシェンは、
「それじゃ早速行きましょう」
といった。
「行くってどこへ行くんですか?」
花織がたずねる。
「それはまだ秘密だ。だがそこはとてつもなく楽しいところとなるだろう」
とルシェンは答えた。
そしてルシェンは全員についてくるよう言い、物置の前に行った。
物置の前に皆が集まるとルシェンは扉を開けた。
はじめてその光景を見たたかし達は驚いていた。
黒いもやの渦は遠くまで続いていたからである。
花織は階段の段のある側に回って、
「すごーい!どうなってるんですか?」
とルシェンに尋ねたが、ルシェンはにこやかに笑っているだけだった。
そしてルシェンは一本の長いロープを出して、
「皆これを絶対に離さないでね。この中で迷うと帰れなくなるから」
と言った。
皆おいおいと思いながらロープをしっかり握った。
「では行きますか」
ルシェンは皆がもやの入り口で靴をはき終えるのを確認して出発した。
10mほど歩くともやが途切れ、垂直に幕のようなものが現れた。
ルシェンはそれにかまわず幕に触れるとまるで水のように幕はルシェンの体をなぞるように動き、ルシェンは幕を通り抜けていった。
やがて全員がその幕を通り抜けるとそこには広大な土地が広がっていた。
手前には大小様々な家が立ち並んでいて、遠くのほうには山や海などが広がっていた。
そして太助が自分たちが出てきたところを見るとそこは岩山であり、穴は高さが5mほどあるだろうかとても大きかった。
ルシェンはロープを回収し出発しようとした、するとそこへ一匹の生物が来た。
少なくとも太助達はそう思った。
しかし、大きさは自分たちと同じぐらいの高さだったため驚いた。
その容姿は蟹のような昆虫のような足が4本昆虫の腹のようなところから出ていて、上半身は垂直に伸びそしてまた昆虫の足のような腕が2本出ていた。
首と呼べるものはなく頭はトンカチのような形で滑らかに頭の先から腹の先までつながっていた。
目は白目や黒目と言ったものはなく、青い目があった。
そして体色はエンジ色である。
やがてその生物がルシェンに近づくとルシェンはその生物に気づいた。
そしてルシェンはその生物に向かって、
「おや、ドラスか。久しぶりだな」
と言った。
そしてそのドラスという生物は、
「*********」
と何を言っているのか聞き取れないような高い音を発した。
するとルシェンは、
「ああ、その通りだ。この人が私の主だ。
そしてこっちの三人が私の管轄の星霊だ」
と答えた。
太助達はドラスの言っている言葉がわからないためルシェンに、
「ねえ、そのドラスって言う生物はなんて言ってるの?」
と聞いた。
するとルシェンは、
「せ、生物…。あのね、このドラスは私と同じ地位にいる者なんだよ」
とあきれながら言った。
「え?てことはこいつってあたし達より偉いの?」
ルーアンが尋ねると
「ああ、そうだ」
と答えた。
するとドラスが、
「*****」
と言い、ルシェンは、
「ああ、またな。あっそうだこの前連れてきたドラスのところの星霊が作ったあの黒いの。また食わせてくれよ」
そう言うとドラスは頷き去っていった。
ドラスが去ってからルシェンは皆に向かって、
「見かけが自分たちと違って言葉が通じないからといって、相手を見下しちゃだめだぞ」
といい、皆はただ黙るだけだった。
そしてルシェンは皆が反省したところを見ると、
「じゃ、私の家に行きましょ」
と移動をはじめた。
移動しているとき皆その町並みに驚いていた。
広大な敷地に大きな屋敷とまるで大富豪だけの世界を思わせる景色だったからである。
途中乎一郎はルシェンに、
「あの、ここって一体何所なんです?」
と尋ねたが、
「もうすぐ私の家に着く。そこで紅茶でも飲みながら説明する」
といわれ乎一郎は下がった。
すでに十分ほど歩いただろうかやがて、
「ここが私の家だ」
と言い大きな門の前にルシェンは立った。
そして中を見た全員が驚いた。
そこの敷地は球場ほどはあろうかという広さで、そこに建っている建物は家と言うより屋敷であった。
「ひえー、あたしんちよりでけーな」
「これだけ広ければうちの神社がいくつ入ることやら」
「すっごーい!ルシェン先生って大金持ちだったんですね」
翔子、出雲、花織はルシェン邸に口々に驚きを表した。
「じゃ入るよ」
ルシェンはそう言い門を開け中に入り、皆もそれに続いた。
しばらく進むと黒い蟹のような生き物が現れた。
大きさはシャコ貝程はある大きさだった。
「うわっ!なんだこいつ!」
たかしは思わず蹴ろうとした。
しかしその蟹は見かけによらずすばやい速さでそれをよけ、たかしの背後からのしかかった。
「うわー!助けてくれー」
たかしが悲鳴を上げた。
「こらこらC−4やめなさい」
とルシェンが言うとその蟹はたかしの上から降り、ルシェンのところに行った。
そしてルシェンはその蟹をなでながら、
「この子はC−4といって私のペットだ。
だめだよ野村君、この子はただ挨拶に来ただけなんだから」
とたかしを叱った。
たかしは立ち上がりC−4といわれている生き物のところに行きなでながら、
「ごめんな」
と言った。
C−4はそれに答えるかのように全身を上下に揺さぶった。
C−4はその後どこかへ行きルシェン達は家へとむかった。
ルシェンの家は洋館という表現が適切だった。
太助は、
「何で洋風なんだ?」
と尋ねた、ルシェンは、
「以前西欧のほうへ行ったことがあってね、それでなかなか綺麗な造りだったから私の家も建て替えたんだ」
と答えた。
そして家の中に入るとそこで小さなコンサート会場ぐらいはありそうな広間が出迎えた。
そしてたかしはそこの端の方でC−4を見つけ、
「おっC−4じゃないか」
といってC−4のほうに近づこうとした。
するとルシェンは、
「その子はC−4じゃない。C−7だ」
と言った。
外見はまったく同じである。
たかしがどこが違うのか聞くと、
「気配が違う」
とルシェンは答えた。
そしてルシェンは広間の奥にある扉に向かって進み、
「疲れたでしょ。とりあえず一休みしましょう」
と言った。
そして扉をあけて中に入るとそこには長いテーブルがあった、ここは食堂のようである。
「じゃ、適当に座って」
とルシェンは言ったが、その直後ものすごい殺気を感じたため、
「あ、やっぱり何かで決めよう」
と言い直した。
太助が、
「何で決めるんだ?」
と聞くと、たかしと花織は同時に、
「「ここはやっぱりくじ引きだ!」よ!」
と言った。
花織はいつのまにかくじの用意をしており、
「数字の小さい順に好きなところに座れるようにしましょ」
とルールを説明した。
結果はルシェン、太助、花織、出雲、キリュウ、山野辺、たかし、ルーアン、乎一郎、シャオの順であった。
そして座った位置は片側がシャオ、山野辺、ルシェン、たかし、キリュウで、反対側はシャオの正面から乎一郎、出雲、花織、太助、ルーアンであった。
そして皆自分でそこに座ると言っておいて、口々に何か言っている。
「なんか太助様と離れてしまいました」
「シャオと七梨が離れちまったな…。ま、シャオの隣に変なやつが来るよりましか」
「こいつらと一緒だと退屈しねえな」
「くっ!俺の熱き魂はシャオちゃんには届かないのか…」
「……………」
「あーあ。ルーアン先生とこんなに離れちゃった」
「シャオさんの隣に行けなかったのは残念ですがここからだとシャオさんを見ていられますから良しとしましょ。…でも正面からの視線が痛いですね」
「キャー!七梨先輩の隣!」
「…何で俺はよりにもよってこいつらに挟まれなきゃならないんだ…。
しかもシャオとはあんなに離れちまうし…」
「たー様の隣でルーアン幸せ」
たかが座席でこれだけ盛り上がれるメンバーはそういない。
ちなみに座席は隣同士でも2mは離れ、向かいとも3m以上離れている。
ルシェンは切れのいいところで羅天杖を腕輪から杖に戻し、一鳴らしするとテーブルの上に黒いもやのようなものが現れ、それは各自の前で塊となりティーカップになり、中央に三つのティーポットが現れた。
「いったいこれは何ですか?」
と出雲が尋ねると、
「紅茶」
と何を聞くのかといった顔でルシェンは答えた。
「いや、そうでなくて…」
出雲は少し呆れた口調で言った。
「んー。まあ話せるところまで話すけど今いるこの場所は皆のいたところとは違う。
と、いうことはわかってるよね?」
ルシェンが皆に聞いた。
「そりゃわかるよ。こんなすごい街聞いたこともないし、さっきのドラスとか言う奴。
あいつはどう見たって地球のものじゃねえ…。あっうめえなこれ」
翔子は紅茶を飲みながら答えた。
「気に入ったのならいくらでも飲んでいいよ。
さて、ではここはどこかというと私のいる空間、正確には本体の居る空間でそれはみんなのいた空間と対をなす空間で、ここは皆のいた世界をつなぐ空間。
狭間の空間なのだ」
ルシェンはそう答えた。
たかしが、
「ぜんぜん意味がわかんねー」
というとルシェンは、
「うーん。じゃ皆のいた空間を正、私のいる空間を負、今いる空間を0とでも思って」
と投げ遣りに答えた。
「あの…。私の質問の答えがまだなんですが…」
出雲が思い出したかのように言ってきた。
「ああ、すまん。つまりここは二つの空間の力が行き来するところなんです。
そして私はその力の流れからいろいろなものを作ることが出来るんですよ。
そうやって出したのがその紅茶。
ちなみにこの家もそうやって建てたものなんだ」
そうルシェンは答えた。
するとルーアンが、
「それはわかったけど、あんたはあたしたちをここに連れて来ていったい何をしようっていうの?」
と尋ねてきた。
ルシェンは、
「今日は皆さんにゆっくりとくつろいでもらおうかと思って、ここに遊園地を作ろうと考えていたのだが、反対意見はあるだろうか?」
と、全員に意見を求めた。
沈黙が続きルシェンはそれを意義なしと捉えた。
そしてルシェンは錫杖を床に突き、打ち鳴らした。
すると洋館は黒いもやとなり消えていき、同時に錫杖で突いたところを中心にテーブルだけを残して遊園地ができていった。
あっという間の出来事だった。
全員がポカ〜ンとした顔をしていてルシェンは喜んだ。
そして花織は、
「すっごーい!それじゃ早速遊びましょ」
といち早く我に帰りどれから乗ろうか選び始めた。
すると花織は、
「あれ?ここの遊園地ってジェットコースターがないじゃないですか!」
と文句を言い始めた。
ルシェンは、
「ジェットコースターはいろいろと計算が必要なんだ。もう少し待ってて」
となだめ、
「じゃ、皆さんはしばらく自由に遊んでいてください。
私はここで銀河一のジェットコースターを考えていますから」
といい皆を遊ばせた。
太助はシャオと観覧車に乗ろうとしたがそのひとつのゴンドラに、たかし、出雲、ルーアン、花織、乎一郎が入り込んできてぎゅうぎゅう詰めであった。
それを遠くから見ていたルシェンは計算をそっちのけで笑っていた。
キリュウはコーヒーカップに乗ったが目を回してコーヒーカップの横のベンチで倒れていた。
翔子は近くの食堂でソフトクリームを食べていた。
もちろんただで食べ放題である。
そして観覧車の光景を見た翔子はゴンドラが下にくるころを見計らって歩き出した。
そしてゴンドラが下にくると翔子はドアを開けて、
「ルーアン先生、あっちの食堂はただで食い放題だって」
と言うと、ルーアンは太助を放って食堂に向かって走り出した。
そしてやや遅れて乎一郎が、
「ああ、ルーアン先生待ってよ〜。僕も行く〜」
と言って続いた。
そして翔子はまた上がりかけたゴンドラからシャオを引き出した。
そしてゴンドラは太助、花織、たかし、出雲を載せてまた回り出した。
そして翔子はシャオに、
「いいかシャオ、観覧車ってのは三回回るまでに男女が一組になって乗らないと死ぬまで遊園地から出ることができないんだ」
と吹き込むとシャオは、
「大変!それじゃ次に来たときに…。
あ、でも私と花織さんでは二人の人としか乗れませんわ」
と言い混乱した。
翔子は、
「いいよ、あたしがどっちかと乗るから、シャオは七梨と乗りな」
といった。
一方ゴンドラの中では邪魔なシャオを連れ出してくれたと花織は翔子に感謝し、シャオを連れ出されかつ目の前で『花織にまとわり憑かれている太助』というものを見せられたかしと出雲は不機嫌であった。
そして太助は気まずい空気で充満したゴンドラの中でただ黙っていただけだった。
そして再びゴンドラが下りてくるとシャオはドアをあけ飛び乗った、
「あっシャオ!」
「え〜、シャオ先輩また乗るんですか?」
「ああ、シャオちゃん!帰ってきてくれたんだね」
「シャオさん、どうせなら二人だけで別のゴンドラに乗りませんか」
と口々に言ったがシャオは構うことなく翔子に言われたとおり花織、たかし、出雲をゴンドラから押し出した。
三人は何がおきたのかわからずしばらく止まっていたがシャオがドアを閉める音で我に帰りドアを開けようとした。
しかしすでにゴンドラは上がり始めていてそれはできなかった。
そして翔子は、
「まあ成り行きだからおまえらもまた乗れ」
と言いながらたかしと花織を次のゴンドラに押し込んだ。
出雲は、
「翔子さん、またシャオさんに何か吹き込みましたね」
と翔子に聞いたが、
「まあいいじゃねえか。
それよりお兄さんもシャオに心配させたくないならあたしとゴンドラに乗るんだね」
と言われシャオの乗っているゴンドラを見るとシャオが窓越しに心配そうな顔をしてみていた。
「まあ、何を吹き込んだかはゴンドラの中で聞くとしますか」
といって出雲はゴンドラの中に入っていった。
各自この遊園地を楽しんでいた。
ただ一人を除いて。
しばらくしてスピーカーから、
「ジェットコースターの設計図ができました。中央の食堂に集まってください」
という放送が聞こえてきた。
やがて皆が集まってきたがキリュウだけいなかった。
「キリュウはどこにいるんだろう」
といいルシェンが錫杖を鳴らすとしばらくしてコーヒーカップの方からベンチが走ってきた。
「うわっベンチが走って来る!」
たかしは驚いていたがそのベンチの上ではキリュウが寝ていた。
「まあ、静かに寝かしとこ」
とルシェンが言い皆も賛成した。
ルシェンが錫杖を振り回し両手でつかみ地面に突き立てるとものすごい音で鳴り響き遊園地にあった遊具は黒いもやとなり形を変え、遊園地はジェットコースターだけになった。
そして錫上の音が鳴り止むと、
「う、うーん。おや、私は寝ていたのか」
とキリュウがおき出した。
キリュウが一度で起きるほどの音で皆耳を押さえてうずくまっていた。
やがて全員が回復するとルシェンはコースの解説をはじめた。
「このコースは全長10km、平均時速50km/hで、約七分半で一回りする。
最大落差320m、三つの加速機で最高速度90km/h。
どう?銀河一のジェットコースターでしょ」
というと皆顔を青くして、
「いい、乗らない」
と答えた。
「せっかく作ったのに…」
とルシェンが不満そうに言うと太助が、
「こんなのに乗ったら命がいくつあっても足りないって…」
と言った。
ルシェンは納得して、
「それじゃそろそろ帰りますか」
と言い、錫杖を鳴らしてコースターを消した。
「あ、そうだ。どうせなら写真でも取りますか?」
とルシェンは付け足した。
皆が元の世界に返ってきたとき時間は七時を回っていた。
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