太助様・・・
太助様ぁ・・・どこにいるの・・・?
大声で、主である少年を捜し求める少女が一人いた。周りを見回しても真っ暗な闇が広がっているだけ・・・。
そう、黒一色で統一されたような空間の中にいる。
少女は独りぼっちであることに耐え切られるはずもなく、孤独や不安が少女の心を支配する。
その心を吐露するように、悲痛な声で主の名を叫んだ。渾身の思いを込めて・・・。
だが、その声はこだまとなって返ってくるだけだった。ますます悲しくなり、ついに涙があふれそうになった。
そして、少女の一粒の涙が頬を伝い、ボーンと地面に落ちる。その涙は、波状となって広がり、静まるように消えていく・・・。
そんな少女の心が通じたのか、一人の少年の姿が浮かび上がった。いきなり少年が現れたことに驚いた少女は、その姿を確認すると、小さな声で呟く。
太助様・・・
涙を振り払うように小指で拭い、満面の笑顔を浮かべ、少年のもとに駆け寄る。
少年もにっこりと微笑みながら、駆け寄ってくる少女を受け止めようと両手を広げた。
少女の指が少年の胸に触れた途端、少年の姿が真っ暗な闇に呑まれるように下から消えるように透いていく。
咄嗟に理解できなかった少女だったが、すぐ我にかえると引っ張るような形で、消えてゆく少年の手を強く握った。
少女は涙を浮かべながら、消えてゆく少年を助けようとする。だが、その努力もむなしく、少年は消えてしまった。
完全に消えてしまった先を見つめる少女は大粒の涙をポロポロとこぼしながら、嫌々と言わんばかりにかぶりを振る。
傍に居たい少年が、少女の目の前で消えてしまったのだ。恐怖以外のなにものでもない。
いや・・・たすけさまぁぁ――――――――
少女の悲痛な叫び声が、響く・・・。
ポロポロと大粒の涙が、次々と地面に落ち、いくつもの波状ができ、消えていった。
これ以上ないぐらい悲しみに暮れる少女は再び、少年の名を叫んだ。
その時、異変が起きた。少年が消えた先には一寸の光が射し込んできたのだ!小さな光も、闇を押すように広がっていき・・・。
少女が立っている空間も闇から光、つまり、黒い色から白い色へ変わった。
驚愕を隠せない少女は周りを見まわした。眩しくて目を開けていられないほどだ。
そして、射し込んでくる光の向こうには・・・。
老人の姿・・・幼い男の子の姿・・・幼い女の子の姿・・・蒼い龍の姿・・・黄色い翼を持つ鳥の姿・・・黒いたてがみを持つ白い馬の姿・・・
そして、その真ん中には少年の姿もあった。他にもいるのだが、少女は少年の姿を確認した途端、見開いたのだから。
うっすらと見えにくいが、少女は確かに見たのだ。消えたはずの少年の姿を・・・。
少女は驚きのまま立ち尽くしていると、少年はにっこりと微笑んでいた。
少年はそっと両手を広げると、神々しい光が解き放たれ、暖かいものが少女を包むように広がっていく。
思わず、その眩しさに目を瞑ってしまいそうになった時、少年の名を叫んだ。
だが、それも声にならなかった。なぜなら、少女は眠りの国から現実へ帰っていったのだから・・・。
平和の歯車が噛み合わなくなり、過酷な運命が待ち受けていることを・・・
少女は、それを知る由もないのである。
いつもと変わらない朝・・・。
相変わらずな日常がやってくるが、ただ一つだけ違ったものがある。
夕べの夢を見た所為で不安になってしまったシャオは、普通と違った行動を見せる。
「太助様っ!」
『第1章 いつもと変わらない朝』へ続く・・・。
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