異界守護月天 封印10魔将伝説
プロローグ
どこか遠くから合戦の声が聞こえてくる....しかし、実際は自分のいる本陣のすぐ近くから聞こえてくるのである。が、「彼」には何故か遠くから聞こえてくるように感じられた。
「<ーー>さま、[敵]はすぐそこまで迫って来てます!早く、早くお逃げ下さい!」
青みがかった銀髪ー光の加減によっては紫っぽくも見えるーの、戦場には似つかわしくない可憐な美しい少女が必死に「彼」に呼び掛ける。
「いいや、シャオ。私は逃げない。例え、この命と引き替えにしてでも[あいつ]を倒さなくてはならないのだ。ここで私が逃げれば、もう我々が勝利する事は出来なくなる。
鍵は我が手にあるのだ。勝てなくても、引き分けにはしてみせよう」
少女=シャオに「彼」は毅然とした表情で言う。
この時のシャオはまだ守護月天ではなく、特殊な力をもってはいるものの、普通の人間の少女だった。
「<ーー>さま.....でも、わたしは..........」
悲しそうに自分を見つめるシャオの頬にそっと手を触れて、「彼」は安心させるように微笑む。
「大丈夫だ。私だって負けるつもりはない。どんな強敵と戦う時でも、戦うときは必ず勝つつもりで戦う。そうルーアンが言ってたからな。あいつに似合わない台詞だが、らしいと言えばらしい台詞かな?」
シャオの心配を少しでも軽くしようとわざとおどける「彼」に、シャオはぎこちなくも微笑みを浮かべる。
「いい言葉ですね.......。分かりました、私も最後まで10魔将の一人として<ーー>さまを守り通して見せます」
シャオの堅い決心を覆す事が出来ないのは長い付き合いで分かっているため、彼は止めるような事をしなかった。
「止めても無駄だろうから、止めたりはしないよ。でも、万が一にでも倒せなかった時の事を考えてシャオには頼んでおきたい事があるんだ」
「頼んでおきたい事?.....それは一体何ですか?」
真摯な顔で彼の次の言葉を一言一句聞き逃すまいと構えるシャオ。
「もし、[あいつ]を倒せず、この戦いで私が命を落としたならば、<月の魔将>シャオリン。お前が10魔将の長となって [あいつ]と戦うんだ。これは<光の魔将>としての私の、最後の命令だと思って欲しい」
「最後の.......命令......?」
その言葉が引っ掛かり、聞き返すシャオ。
「この戦いが終ったら、シャオ。10魔将としてではなく、普通の、只の少女として俺と一緒に暮して欲しいんだ。だから、10魔将の長としての命令は、これで最後なんだよ」
「私で.....いいんですか?」
突然の告白に、瞳をゆらしてシャオが言う。
「ああ。シャオじゃないと駄目なんだ」
そう言って「彼」は優しくシャオを抱きしめる。
「はい、<ーー>さま。私で良ければ、ずっとあなたのお側にいます......」
ほんの一時、戦場の喧騒が消え、静かになったように二人には感じられた。
「よし!行くぞ、シャオ。最後の戦いに!!」
「はい!!」
そして二人は戦場へと駆け出す。最愛の人を失ってしまう事を知らず........
熾烈を極めた戦いの結果、倒す事は出来なかったものの、かろうじて敵を封印する事に功した。だが、「彼」は命を落とし、シャオは生き延びてしまった。
「<ーー>さま........どうして私をおいて逝かれたのですか?私も出来るならあなたと共に..........」
「シャオ殿........その、何と言えば良いのか分からぬが、元気を出して欲しい。<ーー>殿もシャオ殿が悲しんでいるのを見るのはきっと嫌だと思うぞ」
「彼」の墓の前で哀しみに暮れ、そう呟くシャオの後ろでオレンジがかった赤い髪の美しい少女が静かに言う。
「シャオリン、悲しいのはあなただけじゃないわ。あたしだって、<ーー>さまが死んでしまって悲しいのよ?でもね、あたし達生き残った魔将には最後のお役目がある事を忘れたの?」
緑がかった黒髪の美しい女性がさとすように言う。
「キリュウさん、ルーアンさん..........そうでしたね。私達にはまだ、最後の使命があったんでしたね........」
<地の魔将>キリュウ、<太陽の魔将>ルーアン。もちろん、この二人もこの時はまだ万難地天、慶幸日天ではなく、特殊な力を持ってはいるが、人間である。
「そうよ、シャオリン。[あいつ]の封印は完璧じゃなかった。いつか、復活してしまうかも知れない。だから、生き残ったあたし達が封印の監視をしなkればならない。それが生き残ったあたし達の使命」
ルーアンが静かに言う。
「しかし、封印の監視と言っても我等の死後はどうするのだ?誰か、我等の後継者を探すのか?」
キリュウの言葉にルーアンはぽかんとした顔をする。
「そう言えば、そうよね。どうしたらいいのかしら?」
「それについては、大丈夫です。私が<ーー>様から聞いてますから」
哀しみをおさえ、シャオは懐から3つのものを取り出す。
「何よそれ?」
ルーアンがシャオの取り出したものー輪、筒、扇ーを見て訝しげに言う。
「これは支天輪、黒天筒、短天扇といって、私達3人用の触媒です」
「触媒.......?どういう事なのだ?シャオ殿」
キリュウが戸惑い気味に言う。
「これを使って、私達は人間である事をやめ、精霊になるのです」
「精霊って、どういう事よ?」
不安そうに言うルーアン。
「この宝具に宿る精霊になれば、かりそめの不老不死を得られるのです。そして私達は心の清い、封印の鍵となりうる人物に仕え、それぞれの使命ー私なら主様を不幸からお護りする事、ルーアンさんなら主様に幸せを授ける事、キリュウさんなら主様に試練を与えて成長を促す事ーを果たして行くのです。封印の監視ももちろんしなくてなりませんが。<ーー>さまは、自分が最初はこの役目を引き受けるおつもりだったのです。魔将としての能力はほとんど失われてしまいますが、精霊として新しい力を得るらしいです」
彼は死の直前、伝心行によってシャオにこの事と自分のシャオへの想い、シャオにその役を押し付けてしまう事への深い謝罪の念を届けたのである。
「かりそめながらも不老不死を得られる、か。ある意味嬉しいじゃない。この美貌が永久に保てるんだから」
「そういう問題ではないと想うがな、ルーアン殿」
「それぐらいのつもりでやらないと、すぐに精神が参っちゃうわよ?キリュウ」
不老不死を得る、すなわち永劫に生き続けなければならあない事がどれだけ辛いかをルーアンは想像し、その不安を打ち消す為に軽口を言ったのである。
「...........なるほど、な。だが、私はそういう風には考えられぬのでな。で、シャオ殿。どうやって精霊になるのだ?」
キリュウの問いに、シャオは黒天筒をルーアンに、短天扇をキリュウに渡しながら説明する。
「これを持って強く精神を集中させて気を高めて下さい。そして極限まで気を高めたならこう唱えて下さい。<霊魂封印、精霊転生>と。そうすれば私は守護月天に、ルーアンさんは慶幸日天に、キリュウさんは万難地天になる事が出来ます」
二人に私終え、自らは支天輪を構えるシャオ。
「分かったわ、シャオリン。じゃ、早速始めましょうか」
「そうだな。善は急げとも言うしな」
そして二人も黒天筒を短天扇を構える。
「では、行きますよ......はぁぁぁぁぁ!!」
「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」
シャオの気を高める声に二人の声も重なる。そして3人の気が最大まで高まったとき!
<霊魂封印、精霊転生!!>
3人の声が綺麗に重なり、宝具からおびただしい量の光が吹き出し3人を包み込む。
これが月、太陽、大地の精霊が誕生した瞬間である。
そして光のあとには宝具だけが残り、その宝具もまた光を放ちながら飛びさっていってしまった。
心の清い、封印の鍵となりうる者を求めて。
そして数千年の時が流れ、人々はうわべだけの平和な世界を築き上げた。
しかし、人々は知らない。遥かな時を越えて災厄が目覚めようとしている事を。そして、その災厄と戦うべく魔将が復活しようとしている事を。
次回予告
こんにちわ、守護月天シャオリンです。実は私達のクラスに転校生がいらっしゃったんすけど、その方が私に「お久しぶり」っておっしゃったんです。
でも、私、以前あの方に会った事あったでしょうか?
転校生に学校を案内するシャオに迫りくる黒い闇。そのときシャオはルーアンはキリュウは、そして太助は!?
次回、異界守護月天 封印10魔将伝説第一話、「蘇る記憶ー闇、襲来ー」
どうして、忘れていたのでしょう?こんな大切な事を............
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