異界守護月天封印十魔将伝

花開くとき−草木の魔将覚醒−

プロローグ

どんどんどん!!
「孝美さーん!!緊急会議です!!出てきて下さーい!!」
背中の真ん中ぐらいまで伸ばした髪をリボンでポニーテールにし、紺色の上下のスーツを着たまだ幼さの残る感じの女性がドアを叩きながら叫ぶ。治の聖将、智慧である。
どんどんどんどん!!再び彼女が<孝美の研究室>、そう書かれたプレートのある部屋のドアを叩く音が廊下中に響く。
キィィィィィ……………音を立ててドアが室内側に開く。
「何ですか?智慧さん。緊急会議って……?あたしは今、実験で忙しいんですが……」
ぼさぼさになったショートカットの髪、牛乳ビンの底のような実験用防護眼鏡、ビニール手袋をつけて実験用白衣(薄汚れてて白の部分が少ない)を着た女性が現れる。
化学者としての顔を持つ香の聖将、孝美(25歳独身)は普段はここで表の仕事、化学薬品の開発をしているのである。ちなみに、智慧は神の聖将の秘書を務めている。
ちなみにここは神の聖将が経営している会社のビルの中。
「孝美さん……実験はじめて何日たったんですか?」
「んー……まだ3日ってとこでしょうか?」
小首を傾げながら孝美が答えると智慧は深く溜め息をつく。
「つまり、3日間も風呂に入ってないんですね?」
「まぁ、そうなりますね。で、それが何か?」
きょとんとして言う孝美に、こめかみのあたりに青筋を浮かべそうなぐらいひきつった顔で答える智慧。
「それが何か?じゃないでしょうっ!!この前も言ったと思いますが、どうしてそういう事されるんですっ!!きちんと御風呂に入らないと駄目って何回言わせれば気が済むんですかっ!!」
「いやぁ、実験をしているとついついそういう事を忘れてしまうんですよね。一種の職業病みたいなもんです。あははっ」
「あははじゃありませんっ!!とにかく、今すぐに御風呂に入って貰います!!いいですねっ!!」
智慧の怒声が廊下に響き渡り、孝美が身をすくめる。すでに名物と化しているやりとりだったりする為、他の研究員は、またか、というような苦笑を浮かべる。
「孝美主任、ここは我々に任せて智慧さんと行って下さい」
「んー……じゃ、後は任せます。きちんとその間の反応の経過とかをメモしておいて下さいね、後で見ますから」
そう言うと孝美は手袋をはずし、白衣を脱いで防護眼鏡をはずして懐から出したビン底眼鏡をかける。
「孝美さん、そんな厚い眼鏡はやめて、コンタクトにされたらどうです?そんなに美人なんですから………」
一瞬見えた孝美の素顔に少し見とれて言う智慧の言葉に、苦笑しながら孝美が返す。
「目が悪いですから、これぐらい度の入った眼鏡をかけないと良く見えないんですよ。
それに、コンタクトレンズは危険なんでつけないって前にも説明しましたよね?」
そう、扱っている薬品が誤って目に入った場合、レンズと目の間に薬品が入ってしまうとすぐに洗浄することが出来ず、目に大ダメージを受けてしまう為、コンタクトレンズは厳禁なのである。その点、眼鏡だと目のガードにもなるのでコンタクトよりもいいのである。実験中、孝美は実験用の防護眼鏡(目の両脇部分に目をガードする為のカバーがある)をつけているのである。基本的に実験をする時は目の善し悪しに関わりなく着用すべきものなのだが。もちろん、度の入ってないものもある、というかそっちの方が多い。
「ええ、確かに以前にも理由はお聞きしましたが……分かりました、もう言いません。
じゃあ、早速お風呂に入りに行きましょうか」
準備が出来た孝美の手を引いて智慧が歩き出す。この階には泊り込みで実験をする者用に風呂があるのだ。
「緊急会議の方は大丈夫なんですか?」
「こうなると思って、時間よりも1時間早く迎えに来たので大丈夫です」
慣れとは恐ろしいものである。
「で、会議の中身は?」
孝美の質問に智慧は少し立ち止まり、孝美の耳元で小さな声で言う。
「愚礼さんが、魔将達に倒されて散ったそうです」


花織の企み

「「えーっ!?ルーアン先生と紀柳さん(ちゃん)が寝込んだ!?」」
太助達から話を聞いた花織、たかし、乎一郎の3人が驚いたように言う。
出雲は神社の方が忙しく、この場にはいなかった。
「ああ、ルーアンは食べ過ぎの腹痛、紀柳は夏バテ。それで寝込んでるんだ」
聖将達との戦いを話す訳にはいかない為、みんなにはこう言う事にしたのである。
「そんな………じゃ、僕、先生の看病に行って来る!!」
そう言って乎一郎はルーアンの部屋へと急ぐ。
「あ、乎一郎さん!………行っちゃいましたね」
本当は星魔の長沙によって怪我の治療は終わっているものの、失われた血と体力を戻す事が出来ず二人は寝込んでいるので見られても問題ないかと放っておく太助。
「じゃ、このチケット余りがでちゃいますね………」
花織が残念そうに言う。
「チケット?何のチケットなんだ、愛原」
翔子が花織の方を見て言う。
「花の万博のチケットです。みんなで行こうと思って人数分とってもらったのに、3人分余っちゃいますね。今日行かないと期限が切れちゃうんですよ、これ」
「じゃ、今日中に行かないともったいないですね」
閃光がチケットを覗き込みながら言う。
「でも、ルーアン先生とキリュウちゃんがいけないんじゃな……」
「野村先輩、ちょっとちょっと!!」
困ったように言うたかしを引っ張って花織が耳打ちする。
「今なら、邪魔者がいなくてチャンスじゃないですか」
「えっ?そうか!でも、そういうのは俺の熱い魂が……」
「数少ないチャンスを活かす事が出来ないと、絶対にシャオ先輩と恋人同士にはなれませんよ」
「ぐっ」
さらっときつい台詞を言う花織。
「何を二人で話されてるんですか?」
閃光が二人の方を見ながら聞く。
「いえ、何でもないですよ、橘先輩」
「そうそう、何でもないんだ、閃光ちゃん」
ほぼ同時に言う二人を翔子は訝しげに見ていたが、軽く首を振ってやれやれという顔をする。
「どーせ、おにーさんとルーアン先生がいない今がチャンスとか言ってたんだろ」
「「ぎくっ」」
結構表情に表れやすい二人だった。
「へー………七梨くんってもてるんですね」
閃光が感心したように言う。
「あははは…………」
乾いた声で笑うしかない太助だった。
「でも、そのチケット。今日が期限なら行かないともったいないよな。折角だから行けばいいじゃないか」
翔子が言うとシャオと閃光が困ったような顔をする。
いつ聖将達が傷ついたルーアンと紀柳を狙って来るか分からないのに、そんな悠長な事を言っていていいのだろうかと思ったのだ。
「そうですよね!!じゃ、行きましょうよ、七梨先輩!!」
「そうそう、行こうぜシャオちゃん」
花織とたかしの言葉に押されて思わず二人は頷いてしまった。
「じゃ、今回はあたし留守番してるから」
「えっ!?翔子さん、行かれないんですか?」
翔子の言葉にシャオが驚いたように言うと、翔子がシャオに小声で耳打ちする。
「あたしがルーアン先生と紀柳の護衛してるから、シャオは七梨と一緒に楽しんできなよ。それならいいだろ?」
「でも、翔子さんにだけ留守番させるなんて………」
「いいじゃないですか、翔子先輩が留守番してくれるって言うんですから。行きましょうよ、シャオ先輩」
シャオが来れば太助も来る。とにかく太助を連れ出さないと始まらないので花織はシャオを説得しはじめる。
(将を射んとせば、まず駒からってね)
「でも………」
「いいから行ってきなって。はい、決まり!!という訳で早く準備しようぜ」
そう言って翔子はシャオを立ち上がらせてシャオの部屋に行く。
「あ、翔子さん、シャオさん、ちょっと………」
二人を閃光が慌てて追いかけて行く。
「じゃ、俺も準備してくるから………」
「はい!待ってまーす」
「早くしろよなー」
たかしの言葉に分かってるよ、といいながら太助は自分の部屋へと向かう。
「取り敢えず、作戦の第一段階は成功。後はどうやって二人きりになるかですね」
「でも、閃光ちゃんはどうするんだ?」
「えっと……野村先輩、頼みます。そしたらシャオ先輩と橘先輩で両手に華じゃないですか」
あっさりと言うと花織は背中からおしゃれ用のポーチを取り出して髪を直しはじめる。
「相変わらず何でも出て来るよな、花織ちゃんの背中って。どうなってるんだ?一体」
「やっだー、野村先輩のえっち!!」
そう言って背中を叩かれるたかしは
(え、えっちって一体どうして……)と混乱していた。
そうやってじゃれている二人は、窓の外で主無き影が動いて消え去るのに気付かなかった。


策動

「治の聖将、ならびに香の聖将、到着しました」
「時間通りですね、いつもながらいい事です」
神の聖将がにこにこしながら言う。
「時間厳守は当然の事ですよ」
湯上がりで石鹸の良い香りをさせつつ、少し火照った顔で言う孝美。
「あの、偵の聖将さんが見当たらないんですが、どうされたんですか?」
会議室に偵の聖将の姿が無いのに気付いて智慧が不思議そうに言う。
「彼には今、魔将達の家を見張って貰ってるんです。何かあちらに動きがあればこちらに連絡があるはずですから、気にしないで会議をはじめましょう」
智慧、孝美の二人が座席に着くのを確認して、正信は話を始める。
「すでに聞いたと思いますが、霊の聖将愚礼さんが魔将達と戦い、命を落としました。
逆に魔将側は風の魔将が覚醒してしまいました。これでこちら側の戦力が落ちて、あちら側の戦力が上がった事になります。それで、これからどうするかを話し合おうと思うのですが。案は二つ程あります。一つは魔将達を倒すのに全力を注ぐこと。もう一つは聖霊王様の封印場所を早く発見して封印を解く方法を探す事。皆さんはどちらが良いと思いますか?」
正信の言葉に仁美が答える。
「今なら太陽と大地の魔将が怪我をしています。魔将達の戦力が実質上落ちている今のうちに倒した方が良いかと」
「だが、月の魔将の星魔によって治療されているのではないか?」
義煉の言葉に確かに、という顔をする仁美。
「ですが、お二人から聞いた話だと、その二人のダメージはいくら星魔でも一日二日で治せるようなものではないと思います。ですから、今がチャンスだという仁美さんの意見は妥当だと思いますよ」
「治の聖将が言うなら間違いないですね」
治癒能力を持つ治の聖将の言葉だけに説得力があるらしい。智慧の言葉に孝美が賛同する。
「では、魔将達を倒す方向で行く、これで構いませんか?」
「でもさ、不用意に手をだすよりも、聖霊王の封印場所と解除方法を見つけた方がいいんじゃないかな?」
場で一番小さいー小学生だから当たり前だがー宙の聖将が言う。
「そうですね、宙の聖将が言う事も一理あります。隠密裏に事を運んだ方がいいのかも知れないですね」
会議が振り出しに戻ってしまったとき、正信の聖将達にしか番号を教えていない携帯電話が鳴る。
「はい、正信です。ああ、偵の聖将さんですか。どうしたんですか?はい、成る程。分かりました。今、会議していたんですよ。ええ、今後の方針について。ですが、これで決定になりそうですね。では、引き続き監視をお願いします。後でこちらから増援を出しますから合流して下さい。場所は………ええ、そこで。では、お願いします」
携帯電話を切ると、正信は皆の顔を見回して言う。
「今、魔将達が二手に別れたそうです。怪我をした方と風の魔将は七梨家に、月と闇の魔将は花の万博に行くそうです」
「なんと!?この非常事態にそのような事を………」
義煉があきれたように言う。
「月、闇の魔将は二人とも夜に力を発揮する魔将。つまり、今が二人を倒すチャンスという訳です。ということで………魔将を倒す方を優先します。今が千載一遇のチャンスのようですから。ということで……香の聖将さん。偵の聖将さんと合流して月と闇の魔将を倒してくれませんか?技の聖将さんと刃の聖将さんは七梨家の方へお願いします」
正信が言うと3人は頷いて了承の意を伝える。
「ねぇねぇ、また僕は留守番なの?」
「ええ。ですがもう少し頑張ればあなたも前線に立てますから。今は我慢して下さい」
正信の言葉にぷーっと頬を膨らませる宙の聖将。
「ま、今のうちに夏休みの宿題をやっておいたらどうです?智慧さんか正信さんに見てもらえばはかどるでしょうし。どうせ、まだ手をつけてないんでしょう?」
「………」
孝美の言葉に黙り込む宙の聖将。どうやら図星のようである。
「やれやれ、困った人ですね。すいません、治の聖将さん。宙の聖将さんの宿題を見てあげて下さい。私は私用で出ないといけませんから」
「はい、分かりました」
快く返事をする智慧。
「では、これで会議を終えます。ああ、孝美さん。ちょっと」
「何ですか?」
他の聖将達が会議室から出たのを確認して正信は一枚の写真を出す。
「すいませんが、この写真の少年の身柄を、出来たらでいいですから確保して下さい」
「はい、了解しました」
そう言うと正信は戸締まりをお願いしますと言ってその場を立ち去る。
写真を受け取った孝美は、正信の後ろ姿をしばらく見送ってから写真を見る。
「なかなか、将来が楽しみそうな男の子ですね」
写真に写った、前髪を少し立てて長めの後ろ髪をリボンで縛ってまとめている少年を見て孝美は呟いた。

一方、こちらは出発前のシャオの部屋。
「翔子さん、どうしてあんな事をおっしゃったんですか?今がどういう時期か分かってるでしょう?」
閃光が咎めるように言う。
「そうですよ。只でさえルーアンさんと紀柳さんが怪我して寝込んでるのに……聖将さん達が来たらどうするんですか?」
「その為に、あたしが残るんじゃないか。それでさ、シャオの星魔を少し置いて行ってくれないかな?それなら安心だろ」
あっけらかんという翔子。
「そういう問題じゃ………」
「それに!今からは聖将達の動向を探ったり、戦ったりしなくちゃいけないだろ?だからさ、最後の休日っていうか………。もうこれからはそういう事が出来なくなるかも知れないだろうから、せめて今日だけでも楽しんできて欲しいんだよ、あたしはさ」
閃光の言葉を制して翔子が言う。
「でも、翔子さんは行かれないんでしょう?私達だけ楽しむなんて、出来ないです」
少し悲しげな顔で言うシャオに翔子は優しく微笑みながら言う。
「あたしはいいんだよ。花を見るなんて柄じゃないからね。それを気にするよりもシャオ、七梨と楽しい想い出を作ってきなよ。あたしにはそれが何より嬉しい事だし、七梨も喜ぶと思うからさ」
「翔子さん………本当に、いいんですか?」
太助が喜ぶ、という言葉に少し心を動かされたのか、シャオが射う。
「ああ、もちろんだよ。でさ、コカと離珠、それに虎賁、車騎、羽林軍を貸してくれないかな?紀柳達の護衛に使いたいから」
「はい、分かりました。あの、塁壁陣をお貸ししましょうか?あの子は結界用星魔ですから、防御には最適なんですが」
どういう星魔かを聞いた翔子は苦笑を浮かべて言う。
「それだと、家に普通の客が来ても入れなくなるんじゃないか?」
「あ、そうですね………じゃ、塁壁陣は駄目ですね」
では、という事で翔子に言われた星魔を呼び出すシャオ。コカと羽林軍を除く星魔全員のサイズがシャオの腰ぐらいまでに大きくなっていた。
「わー!コカ!!ひさしぶりー」
頬擦りしながら翔子が言う。
「クエッ!」
コカも嬉しそうに翔子にすりよる。
「翔子さんとこの子って、仲がいいんですね」
「ええ、翔子さんとコカはとっても仲良しさんなんですよ」
にこにこしながら閃光に説明するシャオ。
「それで、この子達の星魔としての能力なんですが……」
「月天さま、それならおいらが後で説明しとくからさ、出かける準備しなよ」
虎賁に言われ、それじゃお願いねと頼んでシャオは女御を呼び出して着替える。
「それじゃ行きましょう、閃光さん。それでは、翔子さん。後は宜しくお願いします」
「オッケー!任せときな」
翔子は虎賁に星魔の能力を聞きながらシャオの部屋を出ていく。
シャオと閃光は支度を整えて太助達の待つリビングに行き、5人で花の万博へと出かけていった。


花を愛でよう

「じゃ、これを渡しておきます。それを飲めば私の香の効果を防ぐ事が出来ますから。
きちんと飲んでおいて下さいね。じゃないと偵の聖将さんまで眠ってしまいますから。
じゃ、これもお願いします」
「…………」
薬を受け取り、無言で頷く偵の聖将。彼は身長が180cm以上ある長身痩躯の青年で黒系にまとめた服を来ていて、顔を眼の部分以外を黒い布で覆い隠していた。
何故青年と分かるかというと、体にぴったりフィットした服のラインと僅かに見える目元から青年と分かるのである。
説明を聞き終え、渡された何本かのビンを見る偵の聖将。
「私の作ったその安眠香を吸った人間は、5時間は軽く眠り続けますから。その間に仕事を終えましょう。じゃ、皆さんもお願いしますね」
そう言って側に立っている十数人の老若男女に微笑みかける孝美。彼等は孝美の催眠香によって操られているのである。もちろん、彼等の手にも安眠香が握られていた。
「じゃ、偵の聖将さんもお願いしますね。今から1時間後に作戦を開始しますから」
「…………」
頷き、自らの影に沈み込んで移動する偵の聖将。
「はぁ……あの人もあの無感情、無言さえ無ければかなりいい線いくんですが……そういえば、彼の声ってあんまりどころか全然聞いた事ないですね………ま、そのうち聞く機会もあるでしょう。さ、皆さん。作戦開始です。散らばって下さい」
孝美に渡された薬ビンを持った人々が散り散りに去って行く。
「さ、私も解毒薬を飲んでおきますか」
ひょいっと錠剤を口にいれてジュースで流し込む。
「うえ。苦すぎますねぇ。今度は味も改良しないと。取り敢えず、時間まで私も標的を探しながら花でも見てましょうかね。それにしても………」
そう言って孝美は歩き出し、偵の聖将が去った方を見る。
「彼はどうして私達聖将の側にいるんでしょう?前世では、私達から離れていったはずなのに」

さて、太助達はというと。
「先輩!!こっち来て下さい!綺麗な花が咲いてますよ!」
「え?本当ですか?」
花織の声に閃光がたたっと駆けていく。
「七梨先輩も早くー!!」
「今行くよ」
そう言ってシャオと一緒に歩き出す太助。
「あ、おいてくなよ!!」
たかしも慌てて追いかける。
「全く、作戦はどうなったんだよ、花織ちゃん」
小声でぼやくたかし。花好きの花織は当初の目的を忘れて、各地の珍しい、綺麗な花を見つけてははしゃいでいるのである。
なにげに閃光も太助とシャオが離れ離れになったり花織やたかしに連れ去られないように気を付けていたりする。出掛けに翔子に頼まれたのである。
(翔子さんの取り越し苦労だったみたいですね。愛原さんははしゃいでるし、野村くんは自分だけで何かしようとはしていないみたいだし)
「あ、本当に綺麗な花ですね。何て花ですか?」
「えっと………トリカブト……………」
一瞬、場を沈黙が支配する。
「あ、あっちにも綺麗な花があります!行きましょう、橘先輩」
「え?あ、はい。そうですね、あははは……」
花織に連れられて、乾いた笑いを浮かべて違う花を見に行く閃光。
「んぐっ!?、ごほごほっ!!」
突然、閃光が咳き込む。
「どうしたの?閃光ちゃん」
慌ててたかしが駆けつけて、閃光の背中をさする。
「大丈夫?閃光さん」
「大丈夫ですか?」
心配するみんなを手で制して閃光は咳き込むのをやめる。
「うぇ……何だか口の中に苦い臭いがするぅ……」
少し気持ち悪そうにしている閃光にシャオが水筒からお茶をついで渡す。
「あ、ありがとう、シャオちゃん」
口の中を少しゆすぐようにしてお茶を飲む閃光。
「ふぅ……少しはおさまった。さっき、何かが口に入っちゃって。それを思わず飲み込んじゃって、それで咳き込んでたんです。一体、何だったんでしょうね……?」
閃光は花に気を取られて入て、足元を影が通り過ぎていき、何かを彼女の口に放り込んだ事に気付いていなかった。
「案外、虫とかだったりして」
「怖い事を言わないで下さい、野村くん」
凄く嫌そうな顔をする閃光。
「でも、こういう花が一杯な所だとさ、虫もたくさん飛んでると思うし」
「うー……………」
涙目になってたかしをじっと見る閃光。
「もうっ!!先輩ってばデリカシーってもんがないんですか!?橘先輩が嫌がってるじゃないですか!!」
どこから取り出したのか、ハリセンでたかしの後頭部をどつく花織。
「あいたっ!?ど、どっからそんなものを……」
「いいから、橘先輩に謝って下さい」
花織の剣幕に押され、たかしは閃光に謝る。
「ごめんね、閃光ちゃん」
「いえ、いいんですよ………気にしないで下さい」
落ち着いたのか、笑顔で答える閃光。
「さ、次の花を見に行きましょう。温室に言ってみませんか?」
「あ、それっていいですね。先輩達!行きましょうよ」
花織がみんなに言って小走りに歩き出す。
「全く………花織ちゃん、作戦はどうなったんだよ……」
「作戦って何ですか?」
たかしの再度のぼやきに閃光が反応する。
「なっ、何でもないよ、何でも」
慌てて言うたかしをくすっと笑って閃光が歩き出す。
「たかし、何ぼーっとしてんだ?置いてくぞ?」
「たかしさん、早く」
太助とシャオに言われてたかしは慌てて追いかける。
(うーん……つい、見とれちゃったなぁ。俺はシャオちゃん一筋なのにいかんな)


開花

たかしが墓穴を掘っている間、花織はなかなか皆が来ないので近くに咲いてる花を見ていた。
「うーん、いい臭い。こういう花を花壇に植えてみたいなぁ」
バタバタバタッ!!
「あれ?」
何かが倒れる音を聞いて花織は怪訝そうに振り返る。
「みんな、どうしたんですか!?橘先輩、一体何があったんですか?」
「私にもどうしたのか…………分かりません」
なんと、花織と閃光以外の人間が、その他の客も含めて全員倒れていたのである。
「七梨先輩!!七梨先輩!!」
「取り敢えず、呼吸もしてますし脈拍も異常ないようです。ただ眠ってるだけみたいですね」
閃光が皆の口元や頚動脈に手を当てて言う。
「でも、いきなり眠るなんておかしいじゃないですか!?」
「おかしいのは、あなた方だと思うんですけど………どうして眠ってないんですか?」
「誰です!?」
突然後ろから聞こえてきた声に閃光は素早く反応してそちらを向く。
「どうして、私の安眠香の影響を避けたんでしょう……?体質でしょうかねぇ?でも、二人もいるというのは、考えにくいんですが………」
ぶつぶつ言う孝美を気味悪げに見ながら花織が閃光にささやく。
「あの人、何なんですか?出てきていきなりぶつぶつ言いはじめちゃいましたけど」
「花織さん、取り敢えずこの場は私に任せて、救急と警察を呼んで貰えませんか?」
「え?あ、はい。分かりました」
二人の会話を聞いて、孝美が困ったように言う。
「それは困りますね。仕方ありませんか。二人とも、私が直接始末しましょう。そちらのお嬢ちゃんは巻き添えになって可哀想ですが……と、言う訳でそれっ!!」
突然、袖口から手品のように試験管を取り出して閃光達の方へ投げる孝美。
ドォンッ!!
「危ない!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
投げつけられた試験管が爆発する一瞬前、花織を抱きかかえて閃光が高く跳躍してかわす。
「花織さん、走って!!逃げて下さい!!」
「で、でも……」
「いいから!七梨君達を助けたくないんですか?!助けたいなら、走って逃げて、警察を呼んで下さい!!」
「は、はい!!」
閃光の剣幕に押されるように花織は駆け出す。
「そうはいきませんよ!!」
「あなたの相手は、私です!!」
花織に試験管を投げようとする孝美の前に閃光が立ちふさがる。
と、その時。孝美の影がすっと離れて花織を追いかけ出す。
「偵の聖将さん!?そ、そんなとこにいたんですか……いつのまに……」
「えっ!?偵の聖将……?!」
偵の聖将、という言葉に一瞬閃光は硬直する。
だがすぐに回復し、追いかけようとする、が危険を感じて閃光は大きく横に飛んだ。
その瞬間、閃光がさっきまでいたところで爆発が起る。
「はずしちゃいましたか、残念。で、私の相手をしてくれるんじゃなかったんですか?
まぁ女の子の事は、悌佐さんに任せちゃいますか。この際」
「悌佐……?まさか、そんな……ううん、偶然よ、偶然。とにかく、今はこの人を倒す事にだけ専念しないと」
(そう、こんな所にいるはずがない、絶対に………でも、どうして……偵の聖将が、あなたが……こんな事を……)

一方、こちらは逃げている花織。
「電話、電話……どこかに公衆電話は……きゃぁぁぁぁぁ!?お化けぇぇぇ!!」
突如、花織の目の前に真っ黒な人間が立ちふさがる。
顔はなく、頭はのっぺりとした卵の形をしており、明らかに人間ではないという事が分かる姿をしているそれは、偵の聖将が創り出す<影法師>という下僕である。
それが数体、ゆっくりとだが花織に近づいて来る。
「嫌……先輩、助けて……」
恐怖に怯え、立ちすくむ花織。しかし、その時、花織の頭に声が響く。
(こっちよ………こっちへ逃げて………)
「誰!?誰なの!?」
辺りを見回すが、影法師以外には誰もいない。
(あなたを助けたいの……お願い、こっちへ逃げてきて……)
「……………分かったわ。信じるからね!!」
ここでこうしていても影法師に捕まるだけと判断し、花織は声に従って駆け出す。それに何より、頭に響いて来る声はどこか懐かしく、暖かく感じたのだ。
捕まえようと迫って来る影法師の手を機敏にかわしながら花織は声の導きに従って逃げ続ける。すると目の前に林が見えて来た。
「これは……そっか。ここって植林された所だっけ。TVでやってた気がする」
(早く、この林の中へ!!)
声が強く言い、花織はそれにしたがってラストスパートで林の中へと駆け込む。
「取り敢えず、ここまで逃げてきたけど……これからどうすれば……っ!?」
呼吸を整えつつ花織が周りを見回すと、いつのまにか影法師が林を取り囲んでいた。そしてその内の数体が林の中へ花織を包囲するように入って来た。
「どうしよう……ここにいてもどうにもならないし……」
足音も立てずに迫り、花織に対して手を伸ばして来る影法師達。
「いやぁぁぁぁぁ!!来ないでぇぇぇ!!」
(この子には、指一本触れさせない!!)
ヒュンッ!!ヒュンッ!!
花織が恐怖の余りうずくまった瞬間、木々の枝が振るわれ、影法師をかき消す。そして花織を守るように枝が彼女を包み込む。
「何これっ!?一体どうなってるの!?」
(お願い、思い出して。あなたの力を、昔のあなたの力を。そうすれば、あたし達はもっと力を振るえる。あなたを守る事が出来る)
必死な声に花織は頭を振りながら叫ぶ。
「思い出してって、何を!?昔のあたしの力って、何なのよ!!分からない、分からないよぉ!!」
「……思い出せぬか、草木の魔将よ。木々に愛され、草花を友とし、雑草ですら愛したお主が。この木々達の想いに、汝が内なる力に」
影法師の1人が口を開き、花織に問い掛ける。するとそれに習うかのように他の影法師達も同じ事を言いはじめる。
「いや…………いやぁぁぁぁぁ!!」
耳を手で押さえて塞ぎ、花織は激しくかぶりを降る。
(思い出したくない気持ちも分かるわ。でも、でも……あなたの大事な人を守る為にもそしてあなた自身を守る為にも………思い出して、草木の魔将!!あなたの力が必要なの!)
「大事な人…………もう、失いたくない……でも、また辛い思いをするのも嫌。でも、もう一度やり直せるなら……あの時のやり直しが出来るなら………」
どこか虚ろな瞳で花織が立ち上がる。
「目覚めたのか……?」
影法師が首を傾げる。
「みんな、お願い。力を、あたしに力を貸して。草木の魔将である、このあたしに力を貸して!!」
(もちろん、喜んで!!)
歓喜に満ちた声で声が答え、花織の体が輝き出す。
「大地に根をはり、芳しき清浄なる大気を作り出す緑の友!!その力を以って不浄なる空気を清め、眠りし者達を目覚めさせ給え!!」
花織の言葉によって花の万博中の全植物が力を発動する。
空気中の睡眠香の成分を空気ごと吸い込んで浄化し、逆にその成分を分解して眠りをさます香りを放ち始める。
「………目覚めたか。ならば、この場は退くとしよう」
林より数メートル離れた場所で見ていた偵の聖将は1人呟くと影の中に沈み込み、孝美のいる方へと向かう。
それと同時に影法師達は一斉にその形を崩し、霧散してしまった。
「助かった……」
そう言うと花織はその場に座り込む。
(花織ちゃん……って、呼んでいい?)
「いいよ、もちろん」
声―今なら分かる、声の主が植物達と―に微笑みながら答える花織。
(ごめんね……覚醒、させちゃって。思い出しちゃったんでしょう?全てを。あなたの過去を………)
「まぁ……ね。でも、気にしないでいいよ。前世は前世、今は今。草木の魔将だけど、あたしが愛原花織である事には変わりないんだから。それよりも、あたしは……みんなとまた話せるようになれて嬉しいよ。だから、これからも宜しくね」
(ありがとう、花織ちゃん。こちらこそ、よろしくね)
「うん!!」
しかし、植物達は気付いていた。彼女の瞳に浮かぶ困惑と悲しみに。

時間を少し巻き戻して、こちらは香の聖将と戦闘を始めた閃光。
「闇よ、我が意に従い、我が意のままに踊れ!」
「いいんですか?闇なんか呼んで。それだと私、試験管爆弾を出鱈目に投げますよ?そしたら無関係の人が何人怪我するでしょうね?」
「くっ……卑怯な」
孝美の声に闇を呼び出すのをやめる閃光。
「失礼ですね。自分が有利なようにするのは、大切な事なんですよ。特に、私みたいに本来は直接戦闘に向かない者にはね」
(まぁ、こちらもそういう手荒な事はしたくないんですが。神の聖将さんに怒られますからね、無関係な人を傷付けるなって。こっちのはったりにひっかっかってくれて良かったですよ、本当に)
孝美は白衣の内側から香瓶を取り出し、蓋をあけて中の香を胸一杯に吸う。
「やっぱり、香の聖将でしたか……」
「安眠香と言った時点で分かってたんでしょう?じゃ、はじめましょうか!」
そう言って孝美が見た目からは想像できない速さで間合いを詰めて来る。
「身体能力を上げる香!?」
「ご名答!」
それでも何とか孝美の攻撃をかわした閃光は少し間合いをとり、ポシェットから箱を取り出す。
「何が入ってるんですか?その箱には」
「見てれば分かりますよ」
言って閃光は箱の中に手を差し込む。
「闇よ、我が手につどいて形を為せ!!闇鎖鎌!」
箱を突き破るようにして闇の魔将である閃光の武器、闇鎖鎌が現れる。
「なっ……!?」
「この箱は密閉してありましたから。この中でだけ闇があったんです。だからこれが作れたんですよ!!これで、五分と五分と言った所ですか?」
分銅を孝美の方に投げながら閃光が言う。実は、彼女は自分が出した闇から闇鎖鎌を出すのはまだ出来ないのである。
「くっ!!予想外でしたね、そういう作り方が出来るというのは。昼間だからあなたが一番力を失っていると想ったんですが……見積もりが甘かったという事ですか」
分銅をかわし、試験管を投げつつ孝美が言う。
「そういう事です!」
分銅の鎖をくねらせて試験管を誘爆させる閃光。
「あちゃぁ…………器用な事を。なら、これはどうです?」
試験管を数本まとめて閃光の足元に投げつける孝美。
それを後ろに飛びのきつつかわす閃光。
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!
「くぅっ!!」
凄まじい爆風に閃光はそのまま吹き飛ばされそうになるが、どうにかふんばる。
「でも、これなら耐えれる」
「でしょうねぇ」
「っ!?」
真後ろから聞こえた孝美の声に咄嗟に闇鎖鎌をふる閃光。
「そっちじゃなくて、こっちですよ」
「そんなっ!?」
振り替える閃光の前に信じがたい光景が広がっていた。
「いえいえ、こっち」
「実はこっちだったり」
「もしかしたらこっちかも」
なんと何人もの孝美が微笑みを浮かべて浮かんでいたり、走っていたり、はては這いずり回っていたのである。1人、どじょうすくいを踊ってるのもいたりするが。
「これは……幻覚!?」
「さぁ、どうでしょうねぇ?」
そういって一斉に試験管爆弾を投げる孝美達。
「くっ……ならば!!闇鎖鎌よ、全てを飲み込め!!」
闇鎖鎌の分銅部分が一瞬巨大化し、試験管全てを飲み込む。
しかし、その一瞬後に放られた試験管爆弾によって閃光は吹き飛ばされた。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
二、 三度バウンドして大地に倒れ伏す閃光。
「幻惑香。この香を嗅いだ者は幻に惑わされる。さすがのあなたでもひっかかりましたか」
さっき投げた大量の爆弾の中に、2本ほどの幻惑香の入った試験管が混ざっており、爆風と共に閃光の周囲に幻惑香が撒かれていたのである。
「くっ………不覚………」
「いたぶる趣味はないですから、すぐに楽にしてあげますよ」
そう言って孝美が試験管爆弾を準備したその時、周りに咲いていた草花が輝き出した。
そればかりではなく、孝美目掛けて大地を貫いて数本の槍のようなものが現われる。
「なっ……これは一体?」
慌ててかわす孝美は、次の瞬間己の眼を疑った。
「植物が……動いてる?」
そう、風にそよいでではなく、完全に意志をもって動いてるとしか思えない動きを植物がしているのである。そして、その植物の根が槍のように突き出されたのだ。
「これは……草木の魔将の力……」
そう、草木の魔将の力の一つ。植物の意志を増幅し、動物と同じように己の力で動けるようにすること。
「そんな……はっ!?睡眠香の臭いが……それだけじゃない、この香りは……」
香の聖将の名は伊達ではなく、空気中に己の作った香の力を中和する香りが漂いはじめたのを感じる孝美。
「そんな……まずいですね。ここは……退くしかないみたいですね」
悔しそうに言うと、孝美はサングラスをして試験管爆弾を自分と閃光の真ん中へと投げる。
ピカァァァァ!!どぉぉぉぉぉん!!
激しい光と大量の煙が閃光の視界を遮る。
「くっ………目が……」
光によって視覚を一時的に奪われたが、とにかく煙を吸わないように口と鼻を押さえる閃光。
「偵の聖将さん!!ここは退きますよ!!」
「……分かっている。我が影に入られるがいい」
かすかに聞こえたこのやりとりに思わず閃光は叫ぶ。
「偵の聖将!どうして、どうしてなの!?どうしてあなたが聖将側に!!…ごほっごほっ」
吸い込んでしまった煙にむせながら閃光はその場にしゃがみ込む。
「どう、して………」
煙がはれた時、閃光の眼から輝く物がこぼれ落ちた。

エピローグ

「そうですか、双方共に失敗しましたか。その上、草木の魔将が覚醒するとは。やはり張らずに片方だけを叩くべきでしたねぇ。まぁ、今回は作戦のミスという事で、皆さんの責任は問いません。問いませんが、一応失敗した罰は受けてもらいますよ。じゃないと、次からの仕事に支障が出ますからね。失敗しても何もないなんて思ってもらったら困りますし」
そう言うと正信は4人にこれから1週間、会社の便所掃除をするように命じた。大した罰には思えないが、誇り高い聖将にとってはかなりこたえる罰だったりはする。
「では、そういう事で。下がっていいですよ」
そう言って正信は4人を退室させる。4人が立ち去り、正信だけが部屋にいる状態になったとき、部屋の置くのドアが開いて一人の男が入って来る。
「全く………便所掃除なんて、訳の分からない罰を良く思い付くな」
「まぁ、彼等にとっては結構屈辱的な罰ですから、意外と効果的ですよ」
ドアの方を振り向く事無く正信はこたえる。
「で、目覚めたのは草木の魔将か。当てがはずれたか?」
「まぁ、いつも当たりくじばかりひけるとは限りませんからね。で、何か?用があるんじゃないですか?」
「いや、暇だったから来ただけだ」
その時になってはじめて、正信が男の方を呆れたように見る。
男は22、3ぐらいの青年で、中肉中背でこれといった特徴のない顔をしていた。いや敏感な人間なら気付いたかも知れない。彼の瞳に宿る深淵なる狂気に。
「まだあなたに出てもらう予定じゃないですよ。取り敢えず、残りの二人をこちらに呼ばないといけないですからね。ところで、彼等は?」
「居場所はそちらから教えて貰ったからな。その内行く」
男の声に正信が眼鏡をはずして磨きながら答える。
「その内、じゃなくて。早めにお願いしますよ。彼等の力が必要なんですよ。今のままでは、戦力が余りにも少ないですからね………」
「………戦力、か。俺もその中に入ってるのか?それでも、まだ足りないと」
「もちろん、ですよ。八聖将と十魔将。頭数からして足りないのですから」
ほんの少しだけ、緊迫した空気が場を支配するが、男が溜め息をついて空気を崩す。
「まぁいいがな。俺は少し外出してくる」
「あまり、派手にしないで下さいよ」
「なるべく、そうしよう」
そう言って彼は部屋を後にした。
「聖霊王の復活、か。それで俺の願いが、目的がかなえられるのなら……お前達の力を貸してもらうぞ。我が旧き友たちよ。例え、それが修羅の道となろうとな」


次回予告
こんにちわ、乎一郎です。今度、みんなで海に行く事になったんだ。ルーアン先生に泳ぎを教えて貰えたら嬉しいんだけど..............
夏休みの最後を海で楽しもうとする太助達。しかし、そこにも聖将達の手が伸びる。
次回、異界守護月天封印10魔将伝4優しき少年の涙ー水の魔将覚醒ー
先生、僕があなたを好きになったのは................


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