気神大天飛騨 Final
さらば気神大天
飛騨が神武玉から出てきて一年と少しが経った。
飛騨とキリュウはその間にかなり親密になっていた。
今日も二人はキリュウの部屋で話している。
「飛騨殿、日本には何故梅雨があるのだろうか・・・・・・こう毎日降り続けられては、試練が出来ない」
「キリュウ様、そう愚痴を並べてはいけません。全ては自然のなすことです」
「それもそうだな」
飛騨がキリュウを抑えて言った。
「・・・で、次の試練のことですが・・・・・・」
飛騨はキリュウに向かって話し掛ける。
「・・・なるほど。・・・よし、次はそれで行こう。だが、主殿が帰るまで待たなければな」「キリュウ様、今日は何だか主様が帰るのが遅くありませんか?」
「そう心配することもないであろう。よくあることだ」
「・・・そうですか・・・」
飛騨はやはり心配そうだ。そこへキリュウが言う。
「そんなに心配なら、主殿を迎えに行こう。飛騨殿も来られよ」
「はい。そうさせてもらいます」
二人は太助の通学路をそのまま学校へ向けて出発した。
「うわああああ!!!」
「太助様ぁ、あぶない!!きゃあぁ!!!」
二人がしばらく歩くと、太助とシャオの声が聞こえた。
「主様かシャオリン様がどうかしたのでしょう!キリュウ様、急ぎましょう!!」
飛騨がそう言って駆け出すと、キリュウもそのすぐあとを短天扇に乗って追った。
「どうしたんだ!」
「交通事故だよ!早く救急車!!」
野次馬が詰め掛ける中で、太助達はシャオの近くに行った。
「シャオ!シャオ!!」
「シャオリン様!!」
「シャオ殿!!」
太助達が呼びかけるも、シャオはもう動かなくなっていた。
「・・・凄い傷だ・・・」
「何故今まで生きていれたんでしょう」
医者が病室で話している。
「ですが、もうこれから普通の生活に戻ることはもう不可能ですね・・・」
「・・・あぁそうかも知れんな・・・」
「シャオ・・・」
太助がその病室の前で祈るように言っている。
病室から医者が出てきた。
「患者の容体は最悪です。ただ、かろうじて命だけは取り留めました」
太助が聞き返す。
「じゃあ、まだ死ぬわけではないんですね?」
「そうですが・・・」
「よかった・・・」
「では、私たちはこれで・・・」
「一つ言っておきますが、面会謝絶ですからね」
医者はそう言って去って行った。
「面会謝絶・・・?」
「・・・主殿・・・」
「主様・・・とても言いにくいことなんですが・・・」
太助はうつむいたままである。
「シャオリン様は・・・もう・・・望みがないと思います・・・」
太助はうつむきながらに言う。
「・・・なんでだよ・・・まだ・・・生きてるじゃないか・・・」
「・・・精霊は・・・死なないんです・・・」
「じゃあ大丈夫なんじゃないか!」
「そうじゃないんです!」
飛騨が突然声を張りあげた。
そして、しばらく間を置いてから、
「精霊は死にません・・・ですが、それは、死んでいても生きる、ということなんです」
「死んでいても生きる?」
「・・・シャオリン様は、今、人間なら死んでいます。それを、精霊の力で最低限の生体活動をしているんです」
「ってことは・・・」
太助が言う前に飛騨が言った。
「シャオリン様は、今、生きた死体なんです」
「・・・シャオ・・・・・・」
「主殿・・・」
飛騨が口を開く。
「このまましていてもどうにもなりません。ひとまず帰りましょう」
「・・・ああ・・・そうだな・・・」
太助達が家に帰ると、何故か支天輪が玄関の前にあった。
「支天輪が・・・」
支天輪が光りはじめ、それが収まったときにはそこに南極寿星の姿があった。
「小僧。もうシャオリン様は死んだ。いよいよ最後の時のようじゃ・・・」
「じーさん・・・あと少しだけ待ってくれよ!」
南極寿星は太助をなだめるように言う。
「聞け、小僧。もうシャオリン様はどれだけ待っても生き返らぬ。それを直す方法は、支天輪の中で癒す、それだけなのじゃ」
「それでも、あと一日だけ待ってくれ!!それまでに・・・何とか・・・何とかしてみせるから!」
「・・・どうせ無駄だとは思うが・・・小僧、シャオリン様を支天輪に返すのは、あと一日だけ待とう。一日だけじゃじぞ」
南極寿星はそう言って支天輪に帰った。
「主殿・・・ああは言ったが、何か方法でもあるのか?」
「・・・ない・・・」
「ならどうして・・・」
「今は見つからないけど・・・でも、絶対にシャオを生き返らせる方法を見付けてみせる!!」
「・・・主様・・・」
飛騨は知っていた。死んだ精霊を治す方法が、道具の中で癒す意外にたった一つだけある事を・・・
その夜、飛騨は誰にも見つからないように家を出た。
行く先は病院。
「神武玉の名にかけて命ずる。扉よ・・・開け」
鍵のかかっていたシャオのいる病室の扉は、静かに開いた。
飛騨は中に入り、シャオの前に立った。
その病室は集中治療室なみの設備があり、そのうちの一つの機械からの音がシャオの心臓のわずかな鼓動を伝えていた。
飛騨はそこで神武玉を力いっぱい握り、それから静かにその力をゆるめた。
神武玉はわずかな光を出しながら、飛騨の手からわずかに浮いて、止まった。
飛騨が言う。
「我が神武玉よ・・・我が精魂を今、守護月天シャオリンの中へ・・・」
その瞬間、神武玉からまばゆい光が放たれた。そしてそれはすぐに収まったが、そこには飛騨の姿はなかった。
翌朝
「奇跡だ・・・」
シャオの様子を見に来た医者が言った。
「・・・全ての値が・・・正常値・・・です・・・」
それを聞いた太助は、すぐに病院に走った。
「シャオ!シャオ!!聞こえるか!?シャオ!!」
シャオは薄目を開けた。
「た・・・太助・・・様・・・」
太助は大喜びで返す。
「シャオ!!」
シャオは申し分けなさそうに言った。
「太助様・・・あなたに・・・御心配をかけてしまいました・・・すいません」
太助は笑いながら言う。
「いいんだ、シャオ。シャオが助かったんだから、俺はそれでもう十分だよ」
太助が下を見ると、輝きを失った神武玉があった。
「そうか・・・飛騨が・・・」
太助が神武玉を拾うと、太助の魂は神武玉の中に吸い込まれていった。
「主様・・・また・・・会いましたね・・・」
「ああ・・・・」
「私の気は、全てシャオリン様の体の中です」
「・・・なんでそんなにまでするんだ・・?」
「・・・あなたが私の主だからです。私たち精霊は、主のためなら命をも懸けるのです」
太助は少し怪訝そうに言う。
「でも・・・あれで生き返ったのは、シャオだぜ。俺じゃない」
「・・・シャオリン様を生き返らせることは、あなたのためにもなる・・・」
「でも・・・でもなんで飛騨が神武玉の中に行くんだ!?」
「・・・神武玉が私が失った気をふたたび取り戻すからです」
飛騨はこう続けた。
「精霊が死んだとき、生き返らせる方法は二つあります。一つは、道具の中で癒すことです。もう一つは、他の精霊の気をその精霊の中に入れることです」
「・・・・・・」
「あなたのもとの三精霊は、いずれもあなたに恋愛感情を抱いているようですから・・・」
「・・・・・・」
「もう限界のようです・・・くっ・・・」
「飛騨・・・最後に言っておくよ・・・今まで・・・本当にありがとう・・・・・・そして・・・この事は・・・俺・・・絶対に・・・絶対に忘れない!!!」
「主様・・・さようなら・・・」
「飛騨・・・・」
太助の魂は元に戻った。太助は、今飛騨と話したこと全てをシャオに話した。
「そうですか・・・飛騨さんが・・・」
次の日、退院許可が出たシャオと家に帰った太助は、引き出しに神武玉をしまって、その神武玉に向かい、こう言った。
「飛騨のいる神武玉はただの石になっちゃったけど、飛騨と、神武玉のおかげで、俺はすごく大きくなったと思う。俺も・・飛騨のように・・シャオを・・・命を懸けて・・・命を懸けて守ってみせる!!守護月天の運命だって・・・乗り越えてみせる!!!」
ついに完結しました。
後半部分は、いい話だねぇ・・・
書いてる自分も、少し泣けてくる・・・
太助の最後の台詞!最高!!(自画自賛)
完結はしましたが、あとから途中の話が出てくるかもしれません。(結構いいかげんなボク)
1999/4/27 TAKE
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