気神大天飛騨 5
飛騨とキリュウの共同試練
中編
「お帰りなさい、主様、キリュウ様。今日は何だか早いですね」
太助達が学校から帰ってきたのは昼の1時を少し過ぎた頃だった。月曜日にしては異常なほど早い。
「ああ、今日は何か知らないけど、緊急職員会議があるとか何とか・・・」
飛騨は少し笑みを浮かべながら言った。
「フフッ、いいでしょう。試練の時間が増える訳ですから」
今更にして太助は、この笑顔が結構かわいいんだよなー、と思った。
女性には母性本能をくすぐられるような感があるのだろう。
すでに学校で飛騨の作った弁当を食べている太助は、飛騨に向かってこう言った。
「一刻も早くシャオを助けたいんだ。早く始めようぜ」
飛騨はいつも通り冷静に答える。
「はい。わかりました。早速始めましょう。逃げる私を捕まえて、私から神武玉を奪えば主様の勝ちです。私はこの町内からは決して出ません。以上です。では、主様」
飛騨はそう言って家から飛び出していった。
「ふっふっふっ・・・この町内で俺に勝てるとでも思っているのか?飛騨は・・・」
太助はもう勝った気になっている。
「おっ、飛騨見っけ!」
試合開始(?)から10分後、太助は飛騨を見つけた。
「・・・・・・」
飛騨は無言で逃げていった。
「待てー!!」
よく言われることだが、待てと言われて待つ奴はそういない。
「待てって・・・言ってんのに・・・・」
さすが飛騨、太助なんかの走りはメじゃ無いようだ。もう太助の視界から飛騨は消えてしまっている。
それから更に20分後
「飛騨発見!今度こそ逃がさねえからな!!」
飛騨は休んでいる所を太助に見つかってしまった。だが、全く動じていない。
「・・・・・・」
それどころか、神武玉を握っている。
「って・・・ま・・・待てよ飛騨!!」
「神武覚醒!!」
飛騨がそう唱えると、どこからか石が太助にむかって飛んできた。
「くっ」
太助はしゃがんで石から身を守った。
「・・・甘いですよ、主様」
うまく避けたと思ったら、その石が方向転換をして再び太助を追いかけてきた。
「ひいいいいい!!!」
「では主様、また」
飛騨はそう言って逃げていった。
太助よ、完全になめられているぞ。
このような事の繰り返しが何度続いたことか。
さらに3時間後、飛騨の動きに変化が現れた。神武玉の力を使わなくなったのだ。
「ふぅ・・・やっと見つけたぞ・・・飛騨・・・」
「・・・もう疲れ切ってしまったのですか?」
「・・・・・・」
太助は息を整えている。
少ししてから、太助は口を開いた。
「飛騨・・・何遠慮してんだよ・・・やるんならやるで、本気でかかって来いよ・・・」
「・・・主様、もし私が本気を出せば、主様に命はありませんよ。だからこそ抑えているのです」
「命が無い・・・?そんな事、やってみなきゃわかんないだろ!!」
「やらなくてもわかります」
太助は何も返事をしなかった。昨日の事もあって、体が動きにくくなっているのだ。だが、力を振り絞るようにして太助は言った。
「・・・一度やってみろよ!」
飛騨は申し分けなさそうに言った。
「・・・いいでしょう。ですが、本当に本気を出せば、主様は確実に死んでしまいます」
「・・・だったら、ある程度でいいよ」
太助のこの一言が、太助にとって致命的なものになるとはまだ知る由も無かった。
「神武覚醒!!」
飛騨がそう唱えたとき、太助の頭上にたくさんの小石が飛んできた。
「気反来!!」
そしてその小石が操られている力を失って、太助めがけて落ちてきた。
「わあああああ!!!」
「・・・主様、まだまだの様ですね・・・」
「く・・・こんなことじゃ・・・俺・・・は・・・・・・」
太助はそう言って、気を失ってしまった。
「・・・・・・」
飛騨は黙って太助を背負うと、そのまま家に帰った。
「おや、飛騨殿。やけに早いな」
キリュウがそう言ったのも無理はない。飛騨と太助が家から出てから、まだ四時間しか経っていないのだ。
「主殿は?」
飛騨はキリュウの質問に無言で答えた。
「・・・そうか・・・」
「キリュウ様、少し失礼します」
飛騨はそう言って太助を背負ったままシャオの部屋へ入った。
支天輪を握り、力を込める飛騨。そして、長沙が現れた。
「長沙さん、主様のこと、頼みましたよ」
飛騨は太助をシャオのベッドに寝かせ、部屋から出た。
「そうか・・・主殿がそんな事をな・・・」
「私はよく分からないんですが・・・主様は、かなり成長していると思います。精神的に」飛騨は少し間を空けてからこう言った。
「ですが・・・昔の事を思い出してしまって・・・」
飛騨の目に涙が浮かんできた。
「飛騨殿・・・?」
「いえ、何でもありません」
「ならばよいが・・・」
その時、キリュウはこう思った。
飛騨殿も、私と同じように、つらい過去を背負っているのか・・・
飛騨は泣いていた。
「・・・私は・・・今でもあの時を思い出してしまうのです・・・・」
キリュウは無言のままだ。
「・・・ですが・・・私は・・・」
飛騨のこの言葉を最後に、しばらくの間、沈黙が続いた。
キリュウが沈黙を破った。
「飛騨殿、無理に申されるな」
「はい・・・」
太助は結局、次の日の朝まで目を覚まさなかった。
翌日、学校にて
朝、太助が教室に入ると、たかしと出雲がいた。
「あれ、太助。シャオちゃんは?」
「実は・・・かくかくしかじか・・・」
太助はこれまでのいきさつを話した。すると、
「な・・・なんだってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「シャ・・・シャオちゃんが?」
「そっ・・・そんなことって・・・ありかよ!」
突然クラスの他の男子達が割り込んできた。
「ひ・・・飛騨の奴め・・・許さぁん!!」
太助は弁解気味にこう言った。
「いや、飛騨に怒るなよ」
だがそれも逆上している男子達には、何の意味も無かった。
「俺の気高き魂が飛騨に怒れと言っているゥ!!」
その時、出雲から一つの提案が出された。
「今日も学校は昼までですし、「シャオさん救出隊」というのを作りませんか?」
「出雲さん・・・大賛成!!!」
出雲はいつものように前髪を「ふぁさっ」とさせながら言った。
「決定!!では、シャオさん救出隊員は午後2時に太助君の家の前に集合という事で」
たかしが乎一郎に言った。
「乎一郎はどうするんだ?」
「たかし君、僕はいいよ。遠慮する」
たかしは乎一郎に向かって囁く。
「ルーアン先生もシャオちゃんと同じような事になってるんだぞ。しかも、ルーアン先生が目的で行く奴はそういないからな。もしこれでルーアン先生を助けれたら・・・」
「よし!僕もシャオさん救出隊に入隊する!!」
「それでこそ乎一郎だ」
太助の家にて
太助は今日の学校での事を飛騨に話した。
「そうですか、主様・・・分かりました。ただし一つ条件があります」
「なんだ?」
「私の好きな場所でやりましょう。町内では私に不利ですから」
「・・・よし、いいだろう」
午後2時、太助の家の前にはクラスの男子全員&出雲の顔があった。そしてそこへ飛騨が出てくる。
「・・・神武覚醒!!」
「こ・・・ここは・・・?」
22人が着いた場所は、山だった。
「さあ?」
「飛騨に聞けば分かるだろ」
「なあ飛騨、ここって一体何処なんだ?」
「私に聞かないで下さいよ。知ってるはず無いでしょう」
「し・・・知ってるはず無いって・・・・?」
「そういう事です。では、早速始めましょうか。あ、私はこの山から降りませんから」
余裕を見せている飛騨だが、内心は、ちょっとマズイ、これはちょっと本気で行くべきかな、と思っていた。
「神武覚醒!!」
と、「シャオさん救出隊」のまわりの木が倒れはじめた。
「わあああ!!に、逃げろおおお!!!」
これで5分は時間を稼いだだろう、と、飛騨は山の奥に姿を消した。
何だか飛騨の圧倒的な強さが描写されていないようですが・・・
まあいいです。それは次回という事で。
飛騨とキリュウの「共同」と銘打っておきながら、全然「共同」じゃないな・・・(汗)
1999/5/11 TAKE
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