生い立ち

「・・・今の中華は実に荒れておる」

ある陶工のこの一言が、すべての始まりだった。
「・・・確かにそうです。それもこれも、心の汚れたものが中国を治めているからですな」「心の清い者を、なんとか守らねばならぬか・・・」
「・・・そうですな・・・」

同じ郷に生まれた者達の集まりでの話である。

彼らは三日三晩考えた。何とかして心の清い者を守る方法はないか、と・・・

そして最後の夜、
「心の清い者だけに・・・守護神を付ける・・・というのはどうですか?」
と陶工が切り出した。そしてさらに続ける。
「・・・ある人間を道具の中に封印し・・・心の清い者にだけそれを呼び出せるようにするというのは・・・」
誰かが反論した。
「だが、封印するだけでは守るなど、到底無理であろうな・・・」
陶工はしばらく考えたあと、こう言った。
「その者に、何か特別な力を与えるというのは・・・」
また誰かが言う。
「ですが、そのようなことを望む者はいないと思います・・・」

今度は呪術師が返した。
「なら、何とか説得しよう」

陶工は、呪術師の占いによって決まった最高の形−正八角形−の輪をつくる事になった。
そして守護神に与える力は、星座を呼び出す力と決まった。

そして三年後、再び彼らが集まった。

「陶工がとりあえず道具を完成させた。だが守護神というのは私の占いではその名前が守るどころか逆効果になってしまう。何か他の名前はないか?あと、この道具の名前も」
呪術師が言うと、突然空気が重くなった。

だが、一人がその沈黙を破るように
「守護月天というのはどうでしょう」
と言った。
「守護月天?」
「天に浮かぶ月のように心の清い人を守る・・・そういう意味ですが・・・」
しばらく後、呪術師が言った。
「・・・それは良い。最高の名前だ。私の占いがそれを示している」

他の一人が言った。
「では、その道具の名前、支天輪というのは?・・・星座を呼び出す、つまり天を支える、ということで・・・」

呪術師が言った。
「・・・由来は少し無茶があるが、・・・良い名前だ。では、これで行こう」

そして守護月天の役目には、14歳の少女〜シャオリン〜が選ばれた。

彼女の性格がまさに守護月天の見本となるようなものだ、それが選ばれた理由だった。

だが彼女には、立飜(リーハン)という許婚がいた。

シャオリンの親は何とか彼らで説得したが、シャオリンはいくら説得しても埒が開かない。
彼らは考え、まず立飜から説得することにした。

立飜もはじめは断固たる姿勢で断っていたのだが、それでもだんだんと彼らの説得に押されるようになっていた。
そして立飜を動かしたのが、呪術師の
「この中華の未来のためだ。頼む」
という一言だった。

立飜は、それでも諦められない、というような感じだったが、中国の未来のため、ということでついに折れた。

そしてシャオリンには、立飜から説得することになった。

立飜が切り出した。
「シャオリン・・・守護月天として生きる気は・・・ないのか・・・?」
「・・・私はあなたと一緒に居たいんです。守護月天になんか、なるつもりはありません」「だが・・・この中華のためなのだ・・・」
「そんな・・・」
シャオリンは泣いてしまった。だが、立飜はなおも続ける。
「頼む。私もずっとシャオリンと居たいんだ・・・でも・・・所詮私も中華の民・・・」
立飜も泣いているようだった。
「この中華のためなのだ・・・」

そして1週間後、ついにシャオリンが折れた。
「・・・・・・立飜さん、あなたが言うのなら・・・私は・・・守護月天として・・・生きましょう・・・」
「シャオリン・・・・」
立飜は、シャオリンよりも泣いている。
「立飜さん、泣かないで下さい・・・私も・・・中華の民・・・です・・・」
「・・・・・・・」

そしてシャオリンを支天輪に封印する日が来た。

服を着せられたシャオリンに、呪術師がこう言った。
「シャオリンよ、これからは、あなたは星座と暮らすのだ・・・」
シャオリンは、うつむきながら言った。
「・・・はい・・・・・・」

「では、これからシャオリンを守護月天として支天輪に封印する。立飜とやら、言いたいことがあれば、今のうちに言っておけ。今が最後だ」

「シャオリン、今まで・・・本当に有り難う・・・これは・・・私からの・・・贈り物だ・・・」

そう言って立飜は緑のカチューシャをシャオリンに渡した。

「玉の数ほど沢山、シャオリンにしあわせが訪れますように・・・と・・・」

「・・・立飜・・・さん・・・・」
シャオリンは、目に涙を浮かばせながら言った。
二人は抱き合い、しばらくの間、涙を流し続けた・・・

呪術師が口を開く。
「では、もう良いであろう・・・立飜、離れていてくれ・・・」

呪術師はシャオリンを陣の中央に立たせ、正面に支天輪を置いた。

呪術師が呪文を唱えはじめると、シャオリンの体が光りはじめた。

シャオリンが泣きながら言った。
「立飜さん・・・私は・・・いつ・・・どんな事があっても・・・あなたのことを思い続けます・・・」
立飜も、それに応えた。
「私もだ・・・・・・私もいつもシャオリンのことを思おう・・・」
シャオリンは、今立飜からもらったカチューシャをはめた。

シャオリンの体の光がさらに強くなった。
「・・・立飜・・・さん・・・これでお別れです・・・」

「・・・シャオリン・・・さようなら・・・・」

シャオリンの体の光が静まった。
呪術師が立飜に言った。
「立飜、これで儀式は終わった。もうシャオリンにシャオリンとしての記憶はない。あるのは守護月天としての記憶だけだ」

「・・・シャオ・・・リン・・・」
立飜がうつむきながら言うと、シャオリンの体が支天輪に入っていった。
「悪かったな、立飜・・・では、これでさらばだ。シャオリンはまた心の清い人と巡り合うであろう・・・」

呪術師はこう言って、その場を去った。

一人になった立飜は、こう叫んだ。

「シャオリーーーーーーン!!!!」


かなりきつかったですが、なんとかこの第五作目を仕上げました。
最近部活がキツくて・・・

結構よく出来たとは思いますが、出来るなら、「シャオリン」を、漢字で書きたかった。
それにしても、太助が「シャオ」と呼んでいるのは、漢字になおすと、「小」・・・
うーむ・・・

あと、これの「立飜」が、太助の生き写しだったとすれば、何故シャオが太助に惚れたか、が即座に納得出来ますネ。
・・・これは収穫だ!?

1999/4/20 TAKE


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