パラレル守護月天

「なんかあの子ピリピリしてるのよねぇ」
「ちょっとこわそうだよね」
どこからか、そんな声が聞こえてくる。
「ふん・・・」
もういつものことだった。あたしのことを良く思ってる奴なんていない。
だれも・・・あたしのことなんか・・・

家に帰ってきた翔子は郵便受けに何か入っていることに気づいた。
「あれ?小包来てる」

家の中には誰もいなかった。翔子以外は。
両親は仕事で海外出張。兄弟もいないので、翔子はこの家に一人っきりだ。小包はその両親からだった。
『翔子、元気か。父さん達も中国で元気にやってるぞ。中国はすごいところだ。今でも時々驚かされるよ』
「ふん・・・そうかよ」
『この間もこっとう品屋で「支天輪」とかいう物を見つけたので送ってあげよう』
「この輪の中に光を見いだせる心の清い者には天の守りが授かるそうだ・・・だと?」
翔子は手紙と一緒に入っていた輪っかを手に取った。
『父さん達はまだ日本には帰れそうもない。せめてその輪がおまえを幸せに導いてくれることを父さん達は願っている』
「ふざけんなよ・・・こんな輪っかでどうしろっていうんだよ!」
翔子は手紙を置いて支天輪を見つめた。その時支天輪の中で何かが光り出した。

「ん・・・何だ・・・こっちに来る!?」
カッ!!
支天輪からまぶしい光が放たれ・・・中から一人の少女が現れた。
「なっ・・・!?」
「はじめまして御主人様」
「御主人様って・・・誰だよあんた!」
「私は守護月天シャオリンと申します」
「しゅ・・・しゅごげってん?」
「はい。天に浮かぶ月のように主から離れることなく守り続ける者、という意味です。名前はシャオリン。シャオとお呼び下さい」
「は、はぁ・・・」
あまりの出来事に翔子はそれだけしか声が出なかった。
「御主人様、あなたのお名前は?」
「や・・・山野辺翔子だけど・・・」
「素敵なお名前ですね」
「そうか?」
「山野辺翔子様。これからは敵国の襲撃や刺客などあらゆるものから私があなたをお守りします」
「て、敵国?」
「それにしてもこの館はずいぶんと警備が手薄のようですね・・・来々羽林軍!」
突然支天輪からたくさんの小人が現れた。
「な、なんだこりゃ!?」
「翔子様、この館の警備はこの羽林軍が固めます!どうかご安心を」
「そんなことしなくていいー!!」

「はぁ・・・・」
翔子は一人ソファーの上で途方に暮れていた。
「あの伝説みたいなのは本当だったってのか・・・マジかよ・・・」
気がめいりそうになった翔子はとりあえずテレビをつけた。
「翔子様、なんですか、それは?」
シャオはテレビに興味を持ったようだ。
「まぁ箱の中に人が入ってますわ」
「あのな・・・・・・」
しかし内容がアクション映画だったのがいけなかった。
『ここまでだ・・・死んでもらうぜ!!』
「危ない翔子様!!」
「うわっ!?」
がばっ!!
シャオは映画の台詞を真に受け、翔子をかばった。
「おいおい・・・」
翔子はシャオのずれた行動に呆れながらもちょっとほほえましく思っていた。
(変な奴だけど・・・優しいやつだな・・・)
と、その時
「翔子様!悪い人は今すぐやっつけます!!来々車騎!!」
「え!?ちょっと!?」
ドカァァァァァン!!
「ああ・・・・・・・」
車騎の一撃でテレビは粉々に吹っ飛んでしまった・・・・。

「ふわぁぁ・・・」
翌朝翔子はいつもより早く目が覚めた。
「まだこんな時間かよ・・・」
そう言いながら一階の台所に降りてくるとそこには、
「あっ翔子様。おはようございます」
「え・・・」
エプロン姿のシャオとテーブルに並べられた中華料理の数々。
「これは・・・」
「朝御飯です。さぁ、どうぞめしあがってください」
翔子は素直に驚いていた。台所に朝食が並んでるなんてどのくらいぶりだろう。

「翔子様?」
「あ、ああ。いただきまーす」
しかしここで翔子はあることに気づいた。
(ちょっと・・・量が多くないか?)

「そろそろ行くか・・・」
翔子は登校の準備を始めた。
「あんまり行きたくないんだけどね・・・」
と、そこへ、
「翔子様どこへ行かれるんですか?」
「どこって学校だよ」
「私もお供します」
「えっ!?いや、それは・・・シャオは留守番しててくれよ」
「留守番ってなんですか?」
「ああ・・・とにかく家にいてくれ!」(学校にシャオを連れてけないよ)
「・・・わかりました。では来々離珠!」
「へ!?」
シャオが呼び出したのは人形サイズの女の子。
「かわりにこの子を連れていってください。この子は離れていても私と連絡がとれるんです」
「よくわかんないけど・・・それで気がすむんなら・・・」
(シャオしゃま。翔子しゃまのことは離珠にまかせるでし!)

学校に来てからの翔子はめっきり口数が減ってしまった。誰も翔子に話しかけてくる者はいない。
(ったくよぉ・・・・)
「おい何してんだ山野辺」
「えっ!?」
突然声をかけられ驚く翔子。話しかけてきたのは同じクラスの七梨太助だった。

「チャイム聞こえなかったのか?授業始まるぞ」
それだけ言って太助は教室から出ていった。教室には翔子一人しかいない。
「・・・・さぼっちゃお」

「えーと最初は理科だったな・・・」
ドンッ!
授業へ向かう太助は曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「あっごめん・・・」
「いえ、こっちこそ・・・」
太助はぶつかった相手を見てしばし呆然とした。
(か、かわいい・・・)
「あ、あの俺七梨太助って言います」
「まぁ太助さんですか」
「はい・・・」(ってなんでいきなり自己紹介してんだ俺〜)
「あのここって学校ですか?」
「え、ああそうだけど・・・君あんまり見かけない顔だね」
「ありがとうございます、私はこれで・・・」
「あ、ちょっと!?」

「学校がどんなとこか・・・この目で確かめなきゃ!」
シャオは一人学校の中を歩いていた。
「ここは・・・」
シャオは一つの教室を覗いた。一年三組と書いてある。
「愛原、宿題忘れたのか?廊下に立ってなさい」
「はーい」
教室の中から一人の女の子が出てきた。
「どうしたんですか?」
「え?」
突然の声に愛原と呼ばれていた少女は驚いた。
「なんだか大変そうでしたけど・・・」
「ああ、宿題忘れたのよ。それでここに立たされてんの」
「つらいのですか?」
「え?まぁつらい・・・かなぁ」
「そうですか・・・」
シャオはそれだけ言うと少女のもとから去っていった。
「なんだったの・・・花織わかんない・・・」

「ここはなにかしら」
そこは理科室と書いてある。
「えー、それではこれよりカエルの解剖を行う。まずは先生の手本を・・・」
それを見たシャオが思わず中へと入っていった。
「待って下さい!」
いきなりの乱入者に動揺する先生と生徒。その中に
「あっ、さっきの子だ・・・」
と驚く太助の姿も。ちなみに翔子はさぼっているのでここにはいない。
「カエルさんを殺すのはやめて下さい!!」
「いやその・・・」
「お願いします・・・」
「はい・・・」
思わずカエルを放してしまう先生であった。

「さぁカエルさん、あなたは自由よ」
シャオは外でカエルを放していた。
「あら?あれは何かしら」
シャオが見たのは校庭を走る生徒達の姿だった。
「来々女御」
シャオは怪しまれないよう服を着替え、走っている生徒に近づいた。
「大丈夫ですか?」
「え?大丈夫じゃないわよ。こんなに走らされて、きついったらないわよ」
「そうなんですか・・・」

「廊下に立たされたり、カエルさんが殺されかけたり、無理矢理外を走らされたり・・・まさかここは・・・強制訓練所・・・」
いつのまにかシャオは学校をそういう風に勘違いしてしまっていた。
「ここには翔子様も・・・危険だわ!来々羽林軍!!この建物を徹底的に破壊して!!」
呼び出された羽林軍はドアやら電灯やらを片っ端から壊し始めた。

そのころ翔子は校舎の裏で一人時間をつぶしていた。
「ふぅ・・・」
つんつん
「ん!?」
離珠が顔をつついてきた。
(翔子しゃま、どうしてこんな所に一人でいるんでしか?)
声は聞こえないが、なんとなくわかったのか、翔子は離珠に語り始めた。
「あたしさ・・・友達いないんだ・・・みんなあたしのこと不良だと思ってるから・・・」
(そんなことないでし。翔子しゃまは優しい方でし)
「だから教室にいたって楽しくないんだ・・・ここに一人でいた方がマシってことさ」
(翔子しゃま・・・)
「さて・・・そろそろ授業が終わるかな・・・ってなんだぁ!?」
翔子が見たのはあちこちひびの入って今にも崩れそうな校舎だった。

「どうなってんだ!まさか!」
校内は羽林軍の破壊の真っ最中。パニック状態である。そんな中翔子は校内を走っていた。
「あっいた!シャオ!」
「翔子様!ご無事だったのですね!」
「何やってんだよ!」
「翔子様やみんなを助けようと・・・」
その時天井の一部がはがれ、翔子の頭上へと落ちてきた!
「危ないっ!!」
がばっ!!
ドドォォォン・・・
シャオが翔子をかばったためけがはなかった。
「大丈夫ですか?」
「シャオ・・・」
しかしこうしている間にもどんどん校舎は壊れていく。
「ま、まずい!シャオ、とにかくやめさせろ!」

羽林軍の破壊はおさまりなんとか校舎は原型をとどめていた。翔子とシャオは屋上にいた。
「全く・・・助けるとか守るとか言ってるけど・・・ここは平和なんだ。別にそんなの必要ないよ!」
「すみません・・・」
翔子は申し訳なさそうなシャオを置いて教室へと戻っていった。
「翔子様・・・」
(シャオしゃま)
「離珠?」
(離珠の話を聞いて欲しいでし)

「ふぅ・・・・」
翔子は一人教室の中で考え事をしていた。
(言い過ぎたかなぁ・・・説明しなかったあたしも悪いよなぁ・・・昨日だってさっきだって真剣にあたしのことを・・・)
「も一回屋上行こう」

「そうだったのですか・・・」
シャオが離珠の話を聞き終えたころ
「シャオ!!」
翔子が屋上に戻ってきた。
「翔子様・・・」
「さっきはごめんな。この時代のことはあたしが教えてあげるからさ。だから・・・その・・・」
なかなか先の言葉が出てこない。
「翔子様・・・離珠から聞きました。とても寂しい想いをしてるって・・・」
「え?いや、その・・・」
「もしよろしければ・・・あなたの中にある『孤独』や『寂しさ』からあなたを守ってさしあげたいのですが・・・それではいけませんか?」
「シャオ・・・」
「私ここがどういう所なのか全然知らなくて、さっきだって翔子様に迷惑かけてしまって・・・『寂しさ』から人を守る方法なんてわからないから役に立てないかもしれないけど・・・」
「・・・そんなことないよ、あんたがそばにいてくれれば寂しくなんてないよ、きっと・・・よろしくな、シャオ」
「・・・はい」

翌日、学校
「今日は転校生を紹介する」
「守護月天シャオリンです。よろしくお願いします」
「うぉぉぉぉぉぉ!!めっちゃくちゃかわいい!なぁ太助!」
「あ、ああ・・・」(昨日の子・・・転校生だったんだ。でもほんとかわいい・・・)

シャオは学校に行くことになった。これからは家でも外でも翔子と一緒だ。
(シャオがいれば寂しくないよな・・・きっと)
翔子は今までにない安らぎを感じていた。

翔子はもう一人じゃない・・・・・・

おしまい


あとがき

ようやく完成です。今回はシャオの主、太助以外に誰がいい?それは翔子以外に考えられない!
という考えのもと生まれました。パラレルワールドですが、話の流れ自体は原作1,2話とアニメ1話を足して2で割ったようになってます。でも月天の大原点
である「寂しさから守る」という点は入れました。ただ普通にやっては太助と変わらないので翔子の寂しさは学校で誰にも相手にされない寂しさをだしたつもり
です。うーむ、難しい。
あとやりたかったのは「シャオに太助さんと呼ばせる。離珠に翔子しゃまと呼ばせる」こと・・・すいません、ちょっと煩悩が・・・とにかく頑張りました。
感想くれると嬉しいです。


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※この小説はシャオりんぐのほかに月天召来!(作者:天ノ月紘姫さん)にも同じ物が掲載されています。