「親友」


帰り道


「あーあ、シャオは買い物で先に帰ったし、ルーアンは職員会議。紀柳は学校でなんか考え事してるし。一人で帰るのってなんだか久しぶりだな」
学校からの帰り道、太助がぶつぶつと独り言を言っているといきなり後ろからバン!と背中を叩かれた。
「よっ!七梨、何ぶつぶつ言ってんだよ?」
「いてっ.......て、何だ、山野辺かぁ。おどかすなよ。いや、大した事じゃないんだけどな、一人で帰るのって久しぶりだなぁって」
翔子は太助の横に並んで歩きつつ聞いた。
「シャオは?」
「買い物」
「ルーアン先生は?」
「職員会議」
「紀柳は?」
「学校でなんか考え事してたよ」
「........ふーん、なるほど、な」
少し苦笑する翔子。
「ところでシャオとは最近どうなんだよ?.......って、聞いても進展してないんだろうけどな」
「進展してなくて、悪かったな。........その通りだけど」
少しぶすっとして答える太助。
「まぁ、怒んなって。シャオ達の代わりといっちゃぁなんだが、私が一緒に帰ってやるからさ」
「や、山野辺がぁっ!?」
少し嫌そうに言ってしまった太助に翔子は少しドスの入った低い声で
「あ、なんだよ?その嫌っそーな声は。あたしと帰んのそんなに嫌かよ」
「あっ、い、いや。そ、そーじゃなくてさ。山野辺がそんな事言うなんて意外だなあーって。べ、別に嫌って訳じゃないよ」
慌てて両手をぱたぱたとふる太助にジト目を向けつつも
「ま、いーけどな」
そういうと翔子はさっさと歩き始める。
「なぁ、山野辺」
「ん?」
「前から聞いて見たかったんだけど.....」
「何を?」
「いや、さ。大した事じゃないんだけど」
「だから何を?」
「えっとさ、何て言ったらいいのかな.......」
「いー加減にしろぉっ!!」
太助の煮えきらない態度に怒った翔子は太助の後ろに回り込み、太助のこめかみを拳でぐりぐりとする。
「あいててててててて!!や、やめてくれよっ!山野辺ぇ!」
「だったら、さっさと言う!」
太助を解放して腕組みをして翔子が言う。
「あの、さ。何で山野辺は俺達のことをそんなに気にかけるんだ?」
「はぁ?どういう意味だよ」
少し困惑気味に聞き返す翔子。
「つまり、その。俺とシャオの間を取りもつっていうか、進展さようとするのかなって思ってさ」
太助の問いに少し困惑するが、しばらくしてから少し照れ気味に話し始める。
「あたしは、さ。シャオの事が好きだから。シャオに幸せになって欲しいって思ってるからだよ。何せシャオとあたしは親友だからな」
「シャオの事が好きって..........」
何を想像したのか赤くなる太助。
「なっっ!?七梨!今、おまえ変な想像しただろっ!!」
「してないっ!してないよ、俺っ!」
翔子はジト目で太助をにらみつつあきれたように呟く。
「んったく、どーしてシャオはこんな奴が好きなんだか。心の清い人間が呼び出せるっていうけど、こいつって本当に心が清いのかねぇ」
「よ、余計なお世話だよっ!!」
少しムキになる太助を軽くいなして。
「そもそも、邪魔して欲しいのか?そういうこと聞くんなら」
「いや、その。........出来ればそれはやめて欲しいかなぁ」
少し冷や汗をかく太助。
「だろう?だったら、そんな事聞くなよな」
「あはは、それもそうだな」
しばらく黙ったまま歩いてて太助が聞く。
「さっき、山野辺はシャオと親友だって言ってたけどさ。やっぱりシャオのせいなのか?最近、きちんと学校に来ることが多いのは」
「んー.....まぁ、そういう事になるかな。七梨とシャオがどーしてるか気になるし、二人の邪魔する奴の邪魔しなくちゃいけないし。特に七梨。おまえがもっとしっかりしてればあたしの苦労も減るんだぞ?」
「あはは、苦労かけてすまないな、山野辺」
軽く言う太助に、翔子は立ち止まって真剣に言う。
「七梨。別にあたしは冗談で言ってるんじゃないんだぞ?お前がもっとしっかりしてシャオに積極的にならないからシャオが悲しんだり、辛い想いしたりするんだぞ?分かってんのか!?」
翔子の剣幕に驚きつつ頷く太助。
「シャオはあたしの大事な友達だ。だからシャオのそういう顔は見たく無いんだよ。七梨、それはお前だってそうだろう?」
「ああ、もちろんだよ。俺だってシャオの悲しむ顔や辛そうな顔は見たくない。シャオにはいつも笑顔でいて欲しいって俺は思ってる」
「だったら、もっとしっかりしろよな、七梨」
「分かった。でも、山野辺がシャオの友達で良かったよ」
良くないときもたまにあったけど、と心のなかで付け加える太助。


理由

「でも、どうして山野辺はシャオの事、親友だって思うようになったんだ?」
「え.........?」
いきなりな質問に少し戸惑う翔子。
「そう、だな。シャオが初めてだったからかな。変な色眼鏡をかけないで私を見てくれたのが」
「色眼鏡?」
「前にも言ったけどさ、あたしの格好やしゃべり方であたしがどういう奴だって決めつけるって事さ。七梨だって最初はそういう目で見てたんだろう?」
「え?あ、いや........まぁ、な」
申し訳なさそうに言う太助に翔子は苦笑しつつ言う。
「いーよ、気にしてないから。でも、シャオは違った。この時代の事を何も知らなかったからって事もあったかも知れないけど、あたしの事を見た目とかじゃなくて、まっすぐに見て言ってくれた。あたしが悪い人じゃないって。そのとき、さ。あたしはシャオにすっごく救われた気がしたんだ。だから、今度はあたしがシャオが幸せになれるよう手伝いたいって想ってるんだよ。だから、七梨とシャオの仲を取り持つような事もして
るんだよ」
少し照れつつもはっきりと翔子は言う。
「山野辺.........今の言葉、シャオが聞いたらすっごく喜ぶと思うよ。俺、山野辺がそこまでシャオの事大切に思ってくれてて嬉しいよ。ありがとう、山野辺」
「よ、よせよ。照れるだろっ。それに、あたしに礼を言うんなら、もっとお前がもっとしっかりしてくれる事の方が、ずっと礼になるよ」
照れてそっぽを向いて翔子が言う。
「ああ、そうだな。もっとしっかりしないとな、俺」
「そうそう、その調子だぜ、七梨」
照れてる山野辺をみて、少しからかうように太助が言う。
「でも、初めて見たな。そんな風に照れてる山野辺って」
「な、こら七梨!変な事言うなよな!」
「あはははは!顔がトマトみたいに真っ赤だぞ、山野辺」
「なっ............?」
慌ててほほに手をあてる翔子。
「照れない照れない」
珍しく太助が翔子に勝っているそのとき
「あ........太助さま、翔子さん。こんなところでどうされたんですか?あ、翔子さんどうしたんですか?顔が赤いですよ?!風邪ですかっ!?それなら早く休まないと。私、看病専門の星神出しますね」
支天輪から星神を呼び出そうとするシャオを慌ててとめる太助。
「わーっ!?シャオ、大丈夫、大丈夫だからっ!!」
きょとん、として翔子の方を見るシャオ。
「大丈夫だよ、シャオ。ほら、もう顔赤くないだろう?」
「ええ、確かに......」
いつのまにか翔子は平静を取り戻していたのである。
「そういえばシャオ。買い物随分時間かかったんだな。どうしたんだ?」
「あ、ごめんなさい、太助さま。実は晩御飯を何にするかを考えてたら遅くなってしまったんです」
「あ、いいよ、シャオ。あやまんなくて。シャオがいっつもおいしいごはん作ってくれ
るだけで俺は充分なんだから。少しぐらい遅れたって構わないよ」
「太助さま........今日は腕によりをかけて作りますね」
嬉しそうに言うシャオに笑顔を向ける太助。
(一応、あたしもまだいるんだけどなぁ.........)
心の中でぼやきつつ二人の世界を作っている二人を見る翔子。
「さて、と。あたしはここで分かれるよ。シャオが来たからあたしはお邪魔だろうし」
太助の方をいたずらっぽく見ながら言う。
「そんな!邪魔だなんて、そんな事全然ありませんわ」
相変わらずだなぁ、と心の中で呟きつつ
「ま、どっちにしろあたしの帰り道はこっちだからさ。またな、シャオ。それと七梨」
「はい、また御会いしましょうね、翔子さん」
「オマケみたいに言うなよな。じゃ、またな。山野辺」
軽く手を振りつつ翔子は角を曲がる。
「じゃ、シャオ。俺達も帰ろう。あ、その荷物俺が持つよ、重いだろう?」
シャオの持ってる大きめの買い物袋を持ちつつ太助が言う。
「あ、でも私が..............」
遠慮するシャオに太助がにこにこしながら言う。
「俺、男なんだしこれぐらい平気だから」
「ありがとうございます........太助さま」
「いいってば。じゃ、行こう」
「はい」
そうして二人は並んで帰路についた。

「うんうん。いいぞ、七梨。その調子で頑張れよ」
角を曲がったあと、そこからこそっと二人の様子を見ていた翔子が呟く。
「さってと。あたしも帰るとするかな」
自分の家に向かい歩き出す翔子。
しばらく歩いていてふと後ろを振りかえって呟く。
「シャオ、幸せになるんだぞ。七梨、しっかりシャオのこと幸せにするんだぞ」
そして物思いにふけりながら歩き出す。
(あたしにもいつか、七梨がシャオを思うみたいに、あたしの事を想ってくれる奴に会うのかな...................)


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