教室で話を続ける太助達。休み時間はまだ続いていた。
「でも花織ちゃん、ルーアン先生を追い出しただけで太助を独占出来るとは思わないけど・・・。」
「たかし、これは作戦の第一段階に過ぎないんだろうさ。
ルーアン先生を追い出した次はシャオを何とかする、とまあこんな感じじゃないかな。
当たってるだろ、愛原。」
翔子のじっと睨む目に、うつむきながらこくっと頭を下げる花織。
太助も翔子も更に苦笑いを浮かべている。シャオは悲しそうにつぶやいた。
「花織さん・・・。そんなにしてまで私が・・・。」
「と、とにかくごめんなさい、シャオ先輩。楊ちゃんに頼るなんていけない事ですよね。
こんなあたしですが、今までどおり、どうかよろしくお願いします。」
必死に頭を下げる花織。よく分からないといった顔をしていたシャオだが、
やがてにこりとして、“こちらこそ”と丁寧にお辞儀した。
その様子に笑い出す太助、翔子、乎一郎。そのとき、
「遅れてすまぬ主殿!!ヨウメイ殿はどこだ!?」
と、息を切らしながらキリュウが入ってきた。
太助は落ちついてそれに答えてやる。
「やっと起きてきたんだな。いろいろあったけど無事に片付いたよ。
だからそんなに慌てなくてもいいから。」
「そ、そうか・・・。なら安心だな、ふう・・・。」
普通ならそんな説明で納得するはずが無いのだが、キリュウはなぜか納得した。
そんなキリュウに、花織があやまる。
「キリュウさんもごめんなさい!!あたしがいけないんですぅ!!」
突然の言葉に戸惑うキリュウだったが、やがて落ちついて言った。
「よく分からぬが気にされるな。反省しているのならよいことだ。」
「ああ、ありがとうございます。」
二人のやり取りを見てぽかんとしている五人。
太助も翔子も、さすがにキリュウがらみの事まであったとは分からなかったらしい。
「なあ七梨、愛原ってひょっとしてすごい奴なんじゃ・・・。」
「ああそうだろうな。大事になる前に収まってよかったよ・・・。」
しばらくしてシャオが口を開く。
「それにしてもキリュウさん、さすがですわ。
ヨウメイさんと仲直りするために、息を切らしてまでこうやって駆けつけてきたんですものね。」
その声に“?”というような顔をして振り向くキリュウ。
「何を言っているのだ、シャオ殿?私はヨウメイ殿の暴走を止めるために・・・」
「キリュウさん!だから楊ちゃんは悪くないんですって!
ちっとも分かってないじゃないですか!!」
花織に言葉をさえぎられたキリュウ。たじろぎながら“す、すまぬ”とつぶやく。
そんなこんなで話が続き、落ちついた頃にルーアン、ヨウメイ、熱美、ゆかりんが帰って来た。
「ただいまー、たー様。よかったわ、続けて担任してもいい事になったの。
つまり、今までとおんなじよ。あーん、なんだか幸せー。」
さっそく太助に抱きつくルーアン。
「こ、こら、やめろってルーアン。」
「一時はどうなる事かと思ったよ。よかったですね、ルーアン先生。」
太助を羨ましがりながらも、お祝いの言葉を発する乎一郎。そして花織は、
「ごめんなさい、楊ちゃん。二度とこんな事はしないと誓うから。
だからお願い、今まで通り仲良くして。」
と、涙ながらに謝る。そんな花織に対してヨウメイは、
「もうういいわよ、気にしてないから。これからも四人仲良く授業を一緒に受けましょ。ね?」
「一緒に?」
思わず尋ねる翔子。それに熱美が答える。
「ええそうなんです。楊ちゃんはこれからこの学校の生徒としてくる事になったんです。」
驚いてヨウメイを見る皆。ゆかりんが続けて言う。
「しかもあたし達とおんなじクラス。だから今まで以上に仲良くしないとね。
花織、ちゃんと勉強もするのよ。」
「・・・そうなんだ。楊ちゃん、これからもよろしくね。」
「うん、こちらこそ。」
そして両手で握手する花織とヨウメイ。そこでキリュウがぽつりと言った。
「という事は、休み時間の試練に文句をつけてくる輩が一人増えるという事だな。
まったく、今でさえ結構苦労しているというのに。ヨウメイ殿は家で待機していればよいのだ。」
これにぴくっと反応したのはルーアン、花織。
この二人は今までキリュウの試練にいろいろ言ってきたのだから当然である。
そしてヨウメイはと言うと・・・。
「まあまあ、そんなに邪険にしなくても・・・。」
と、にこやかに笑いながら統天書をめくり出した。
顔は笑っているが、明らかにひきつっているのが見てとれた。
シャオは素早く支天輪を取り出した。そして、
「来々、軒轅!!」
と、軒轅を呼び出し、太助をひょいっと連れ去る。
翔子はそれに素早く反応し、ちゃっかりと軒轅につかまった。その刹那、
「来れ、ブリザード!!」
ヨウメイがそう叫び、教室の中は猛吹雪があれくるう地獄と化した。
「う!?さ、寒いー!!」
キリュウは突然の出来事にうずくまった。教室に居たほかの皆も、強烈な寒さに凍えている。
ちなみにヨウメイと仲良し三人組の四人は、しっかりと寒さを防ぐ壁の内側にいた。
(もちろん、これもヨウメイが作り出した物である)
「なーんだ、キリュウさんて寒いのに弱いんですね。万難地天のくせに情けない!」
「く、前々からそんな事は知っていたくせに・・・。た、助けてくれー!!」
「試練ですよ、耐えなきゃね。あはははは!!」
高らかに笑うヨウメイを見ながら、花織、熱美、ゆかりんは考えていた。
“楊ちゃんをきれさせるような事はしないでおこう”と。
極寒地獄と化した教室を外から見るシャオ、太助、軒轅、そして翔子。
「よかったですわ、間に合って。ルーアンさんはこういう事を言ってたんですね。」
「・・・ちょっと違う気も。でも怖いなあ。精霊ってのはきれると怖いんだな。
はあ、そんな精霊四人の主だなんて・・・。これも試練か・・・。」
暗い顔の太助。そんな雰囲気を変えようと、軒轅によじのぼって翔子が言った。
「おい七梨、そんな事言ってないで、何とかしないといけないんじゃないのか?
このままじゃ、皆凍っちまうぞ。」
その言葉にはっとする二人。
教室にいたほとんどの人は、床にうずくまって凍えている様子が見てとれた。
その中にはもちろんルーアン達の姿も見える。
しかし、キリュウは更にひどい吹雪を受けているようで、立ったまま凍り付いているような、そんな感じであった。
「キリュウの辺りだけなんか強烈に吹雪いてるな。あのままじゃ・・・。」
「キリュウさんが大変ですわ。来々・・・」
「待ったシャオ!天鶏は止めといた方が良い!」
天鶏を呼び出せば、水蒸気爆発というものを起こしかねない。
(という事を、ヨウメイの授業によって学んだ太助)
考えた太助は、一つの行動に出た。
「シャオ、窓に近づいてくれ!」
「太助様・・・?」
教室では相変わらず猛吹雪が続いている。
高らかに笑っているヨウメイは、一向に手を休める気配が無い。
「どうしたんですか、キリュウさん。何か言ったらどうですか?あはははは!!」
「・・・さ・・・う・・・。」
もはやキリュウには声を出す気力も無くなっていた。
寒さのあまり、全神経が凍り付いているかのようである。
その頃、うずくまっているルーアンは・・・、
「まったくぅ、キリュウがあんな余計な事を言うからー。
さ、寒いわー。こらヨウメイ、いいかげんに止めなさいってー!!」
と、必死に叫んでいる。
しかし、その声はヨウメイに届くことなく、ことごとく吹雪にかき消されていた。
もちろん、他の生徒達も呼びかけてはいるものの、決してヨウメイに聞こえる事は無かった。
ちなみに花織、熱美、ゆかりんの三人は、声も出せずにヨウメイの迫力に圧倒されていた。
なんといっても、切れているヨウメイを間近で見ているのだから無理はない。
「す、すごいなヨウメイちゃんは。この俺の熱き魂が・・・。」
「たかしくん、感心している場合じゃないよ。このままじゃキリュウちゃんが・・・。」
乎一郎がそう言ったその時、太助がいきなり入って来たかと思うと、キリュウの前に立ちふさがった。
「ヨウメイ、いいかげんにしろ!キリュウが死んじゃ・・・、寒いー!!」
飛び出したはよかったのだが、あまりの寒さに、太助はすぐにうずくまってしまった。
それがヨウメイの視界に運悪く入らなかったらしく、吹雪は一向に収まらなかった。
もちろんヨウメイが笑いつづけているのは言うまでも無い。
しかし、花織は太助に気付いた。慌てて大声で叫ぶ。
「七梨先輩!!楊ちゃん、ストップ、もうやめて、七梨先輩がー!!」
そこでようやくヨウメイが太助に気付いた。
顔色をあっという間に変え、急いで統天書を閉じた。
それと同時に吹雪が収まる。教室の皆は、やれやれというように体を起こした。
「主様!な、なんてことを・・・申し訳ありません!!」
そして太助にかけよる四人組。幸い太助は寒さに震えただけで済んだ。
「お、俺は大丈夫。でもキリュウが・・・。」
キリュウは依然凍りついたまま、というよりはまるで氷像のようだった。
体中が白くなっており、びどうだにしない。
ちょっとでも触れば、倒れて砕けてしまいそうな・・・。そんな感じだった。
吹雪が収まった様子を見て、教室に入ってきたシャオ、翔子。
二人はキリュウの様子を見て愕然となった。
「き、キリュウ・・・?」
翔子がおそるおそる尋ねるが、返事はない。
この二人だけではない。他の皆も、唖然としたままキリュウを見つめているのだ。
「おい、キリュウ、キリュウ・・・。」
今度は太助が呼びかけるが、もちろん返事は無かった。
やがて太助は震えだし、ヨウメイをきっと睨んだ。
「ヨウメイ、なんて事してくれたんだ!!キリュウをこんな目に遭わせて!!」
そこでしゅんとなるヨウメイ。自分がやり過ぎたという事にようやく気付いたのである。
「キリュウさん、ひょっとして死んじゃったの?」
花織がぽつりと言うと、太助は花織にくってかかった。
「なんて事言うんだ!キリュウに限ってそんな、そんな、事・・・」
力なく床に崩れ落ちる太助。返事が無いのももっともだが、
外から見た様子からして、明らかに生きているとは思えなかったのだ。
そんな太助を見て黙り込む生徒たち。もちろんシャオやルーアンも。
どのくらいそうしていただろうか。やがて一人の生徒熱美が口を開いた。
「楊ちゃん、楊ちゃんの力で何とかできないの?」
「そう、七梨先輩にとって、キリュウさんは大切な人なんだから・・・。」
その声に顔を上げるヨウメイ。なんと、その顔には、
先ほどのしゅんとした顔ではなく、笑顔が浮かんでいる。
「ふう、しょうがないか。キリュウさんてやっぱり大切に思われてるのね。
主様、みなさん、心配入りませんよ。キリュウさんはすぐに元に戻せます。」
ヨウメイの明るい声にばっと顔を上げる面々。一番に太助が尋ねた。
「よ、ヨウメイ、それ本当か?キリュウは再び元気になるのか?」
「当然ですよ。でも主様、どうしてキリュウさんみたいな人がこんなに大事に思われているのか、
後できっちり説明してくださいよ。さてと・・・。」
言い終えて統天書をめくり出すヨウメイ。あるページで手を止める。
「生の活動、そしてその源の象徴よ・・・。静止した者に再び息吹を・・・。万象蘇生!」
ヨウメイが叫ぶ。しかし、キリュウの体にはなんの変化も無い・・・。
「・・・なんにも変わらないぞ、ヨウメイ。」
「なんだ、まだ生きてるんじゃない。ふむふむ、冬眠状態って訳ですか。
まるで動物ね、後でからかってやりましょ。それじゃ・・・。」
さりげなく恐ろしい事を口にしながら、再び統天書をめくり出すヨウメイ。
そんなヨウメイを見て、たかしと乎一郎がひそひそと話をする。
「ねえたかしくん、ヨウメイちゃんて実はものすごい人なんじゃ・・・。」
「只者じゃあないとは思っていたけど、まさかここまでとはな・・・。」
そんな二人に気付いたルーアンがつつく。
「二人とも、ヨウメイには絶対に逆らわないようにしときなさい。
それこそ、キリュウみたいにひどい目に遭うわよ。
普段はいろいろ教えてくれる気の良い“歩く何でも辞典”なんだけどねえ・・・。」
ルーアンの真剣な顔に、力いっぱい頷くたかしと乎一郎。
やがて、ヨウメイはとあるページで手を止めた。
「荒療法だけど仕方ないですね。・・・きたれ、灼熱!」
それと同時に、キリュウの周りの氷が溶け出した。・・・いや、蒸発している!
そしてキリュウの姿があらわになったかと思うと・・・、
「熱い!!よ、ヨウメイ殿、やめろー!!」
と、キリュウがようやく目覚めた。そこでパタンと統天書を閉じるヨウメイ。
「はい、終わりです、ご苦労様・・・。」
言い終わると同時に、ヨウメイは太助の方へと倒れこんだ。
力を連続で使いすぎたためだろう。そんなヨウメイを見て、ますます憂鬱になる太助であった。
ヨウメイの暴走の後片付けをする生徒たち、そして羽林軍。
とうのヨウメイは机の上で眠っていた。
「可愛い寝顔ですね、七梨先輩。」
「ん?ああ・・・。」
花織の言葉に、困惑しながら答える太助。
続いて、熱美とゆかりんも言う。
「普段はおとなしくて良い子なのに・・・。」
「楊ちゃんて怒ると手がつけられなくなるのね。」
二人の言葉に、ルーアンがため息をつきながらつぶやく
「ほんと、普通の“歩くなんでも辞典”のはずなのに・・・。」
そこで翔子が嫌味気に言った。
「だれかさんがヨウメイにつっかかったりするから怖いんだな。なあキリュウ。」
「翔子さん、キリュウさんも悪気があってそうしているわけじゃ・・・。」
キリュウは黙ったままうつむいている。と思ったら、顔を上げて太助に言った。
「主殿、私がなぜ主殿に仕えているかを言うのか?」
「あ、ああ。そのつもりだよ。そうすればさ、少しは打ち解けられるんじゃないかと思って。」
するとキリュウは“そうか・・・”とつぶやき、再びうつむいてしまった。
そんなこんなで時間が過ぎていった。
ようやく後片付けが終わり、昼休みを告げるチャイムが鳴り響く。
それと同時に、ヨウメイがはっと目覚めた。上半身を起こし、太助を見つけて頭を下げる。
「どうもお騒がせしました。以後あんな事が無いよう、きっちりします。」
「もう良いよ、済んだ事だしさ。
それよりもうお昼だからさ、一緒にシャオのお弁当食べようぜ。な?」
太助の言葉にこくりと頷き、机から降りるヨウメイ。
ちなみに花織、熱美、ゆかりんは自分の教室へ帰っている。
いつもの面々が集まっての昼食となった。
きっちりと“いただきます”が告げられ、皆が弁当を食べ始める。
しばらくしてヨウメイが口を開いた。
「ところで主様、手前に言っていた事なんですが、
どうしてキリュウさんの主をなさっているんですか?
何かを得るためなら、私がすぐにでも教えて差し上げますのに。」
「シャオを救える男になるためだよ。」
「シャオリンさんを救う?いったいどういうことですか?」
「それは・・・」
太助が言いかける前に、ヨウメイが手を上げてストップをかけた。
「なんだか深刻そうな事情なので、私が自分で調べる事にします。
あんまり人に知らせる事じゃないのでしょう?えーと・・・。」
食事の手を止めて統天書をめくり出すヨウメイ。そしてあるページを見て驚きの顔になる。
「こ、これは・・・!!なるほど、それでキリュウさんが・・・。」
納得したかと思うと統天書を閉じて、太助の方を向いて言った。
「主様、私には教える事は出来ません。まさかそういう事だったとは・・・。
キリュウさんの試練を受けて頑張ってくださいね。」
「ヨウメイ・・・ありがとう。」
シャオを守護月天の宿命から解き放つという事は、さすがの統天書にも載っていなかったのだ。
それでヨウメイは、あきらめてキリュウに任せることにしたのである。
二人の会話の後、ルーアンが口を開いた。
「ヨウメイにも分からない事があるのね。」
「ええ、残念ながら万能ではありませんしね。過去に例も無いし・・・。」
そこでぴくっとなる翔子。
「過去にあった事ならなんでもわかるんだな?」
「ええそうですよ。といっても、あんまりにも必要の無い知識は削除されたりしますが。」
今度は乎一郎が尋ねる。
「必要の無い知識ってなんなの?」
「いろいろとあるんです。まだ全部は知りませんが。」
その言葉に黙り込む皆。と思ったら、キリュウがぽつりと言った。
「要するに力を全て使いこなせていないのだろう?だから気絶したりするのだ。」
「ええ、そうですね・・・ってキリュウさん!!あなたにそんな事言われたくないですよ!!」
がたっと立ちあがったヨウメイを、まあまあとたかしがせいする。
「私は自分の事は分かっている。ヨウメイ殿は自分の力の全てを知っているわけではあるまい?
人に知識を教える立場の者がそんな事では困るぞ。」
「知ってますよ!確かに、統天書をめくらないと知識のすべては分かりませんが。
でも、それだけです!力の類は全部分かってるんですから!」
「そうか、なら結構だ。これからよろしく頼むぞ。」
「え、ええ。言われなくても!!」
そして二人は弁当を食べ始めた。ぽかんとして二人を見ていた太助達。シャオは、
「まあ、仲直りしたんですね。よかったですわ。」
とニコニコ顔である。その言葉に“ふうん、そうなのか”と皆は納得したのか、
再び弁当を食べ始めた。
黙々と食べつづける太助達。やがて沈黙に耐えかねたたかしが、
「みんな!もっと喋ろうぜ。いろいろあったけど一件落着!!とかいってさ。」
するとヨウメイがたかしの方をじろりと睨んだ。
「野村さん、みなさんはいろいろあってお疲れなんです。
もうちょっと静かに願えませんか?」
その言葉にたじっとなり、黙り込むたかし。すると翔子が、
「ヨウメイ、昨日はにぎやかにだとか言っていなかったか?」
と、口を出した。しかしヨウメイは首を振って言った。
「山野辺さん、例外もあるって言ってたじゃないですか。
みなさんが喋りたい時に喋れば良いんです。」
再び沈黙の時が流れる。今度は太助が口を開いた。
「しかし、やっぱりシャオの弁当は美味いよな。ヨウメイもそう思うだろ?」
「ええ、そうですね。あ、主様。今日は家に戻りますから。
というわけでシャオリンさん、夜はお料理をお教えしますね。」
「まあ、ありがとうございますヨウメイさん。」
「よかったな、シャオ。」
ごきげんの太助とシャオ。そこでキリュウが喋り出す。
「という事は、眠る時に私はまたひどい目に遭うのか?迷惑だな・・・。」
この時、周りの皆はビクっとして食べる手を止める。
またもやヨウメイが怒るのではないかとはらはらしていたのだが、
「そんなことはありませんよ。心配なさらないで下さい。」
と、ヨウメイは落ちついて答えた。それと同時にホッとする面々。
「だって、キリュウさんはもうお疲れなんでしょ?今からでも眠ったらどうですか?」
付け加えたヨウメイに対して料理を吹き出しそうになる太助達。
するとキリュウは、
「さすが・・・だな。まったく・・・寒かったり・・熱かったり・・・。」
と言ったかと思うと、座ったままのポーズで眠り出した。
ぽかんとしてそれを見る太助達。
「おやすみなさい、キリュウさん。また後でね。」
と、ヨウメイは挨拶を更に付け加えた。
昼食が終わり、キリュウは教室の隅のほうに寝かされた。
そばにはヨウメイがしっかりと待機している。
「ねえヨウメイ。あんた別のクラスの生徒になったんじゃなかったの?」
授業を始めようとしたルーアンが尋ねた。すると、
「一応生徒として動くのは明日からなんです。
それに、キリュウさんがこんなになっちゃったのは、私にも責任があることですし。」
ヨウメイの言葉に違和感を感じた太助。さっそく尋ねてみた。
「急にしおらしくなったな。やっぱりキリュウと仲直りしたんだな。」
「ええ、まあそんなところです。うふふ・・・。」
なぜか笑いを浮かべるヨウメイを見て、少しビクっとなる太助。
「じゃあいつも通りの授業始めるわよ。みんな教科書を見てー。」
そしてルーアンの授業が開始された・・・。
そんなこんなであっという間に放課後。キリュウもそこで目を覚ました。
「まあキリュウさん、おそようございます。
よく眠っていらしたので今度こそ本当に死んじゃったのかと思いましたよ。」
そんな事をわざと大声で言うヨウメイ。教室内の皆がその声に振りかえる。
キリュウはあきれた顔でヨウメイに答えた。
「ヨウメイ殿、そんなはずはないだろう。あの程度で死んでしまっては万難地天などつとまらぬからな。」
するとヨウメイは笑って言う。
「冗談ですよ、冗談。キリュウさんはあんな極寒の中冬眠ができる優れた生き物さんですし。
なんといってもゴキブリよりもしぶといんですものね。」
「な、なんだと!!」
怒ってキリュウが立ちあがり、短天扇をかまえた。
「やる気ですか?それなら今度こそ手加減無しで・・・」
「いいかげんにしろー!!!」
太助が大声で怒鳴る。そして二人はぴたっと動きを止めた。
「仲直りしたんじゃなかったのか!?例えそうでなくても、喧嘩なんかするな!!」
するとヨウメイはにこりと笑って言った。
「仲直りしてますよ。これが普段の私とキリュウさんなんです。」
「嘘をつくなヨウメイ殿。明らかに喧嘩を売っているだけだ。」
キリュウの言葉に、たちまち顔をかえるヨウメイ。
「だって・・・。どうして側にいるだけなのにキリュウさんに蹴られたりしなきゃいけないんですか!!」
寝相が悪いにも程がありますよ!!」
「うっ、そ、それは・・・。」
そんな二人のやり取りを見て、翔子は頭をかきながら言った。
「つまり、二人で勝手に喧嘩してるだけだから口出しすんなって事?」
「え?ええまあ、そういう事です・・・。」
「だったら外へ行ってやれ!!ついでに能力を使うのも禁止!分かったな!!!」
翔子はそう叫んだかと思うと、キリュウから短天扇、ヨウメイから統天書を素早く奪い取った。
「シャオ、瓠瓜を呼び出してくれ。ルーアン先生、二人を押さえてて。」
「「!!!ちょ、ちょっと待ったー!!!」」
血相を変えて翔子に飛びかかろうとする二人だったが・・・。
「陽天心召来!!」
「来々、瓠瓜!!」
ルーアンに陽天心をかけられた机達が、あっという間にキリュウをヨウメイにのしかかる。
そして翔子に抱き上げられた瓠瓜が、素早く二品を飲みこんだ。
「「ひ、ひどいー!!」」
机の下敷きになりながら、必死に二人が叫ぶ。そして陽天心がとかれた。
「なかなかやるな、山野辺。というわけでキリュウ、ヨウメイ。屋上にでも行ってこいよ。な?」
太助の言葉に立ちあがった二人だが、すぐに座りこんでしまった。
「すいません、主様、みなさん。もう理不尽な喧嘩は致しません。だから本を返してください。」
「私も謝る。すぐにかっとなってしまうのは悪い癖だ。以後は気をつける。だから扇を・・・。」
必死になって今度はぺこぺこし出す二人に、翔子はにやりと笑って言った。
「いいから屋上へ行って喧嘩してこいよ。じゃないと返さないからな。」
ぴくっとなって顔を上げる二人。しかし翔子の顔を見てやれやれと立ちあがり、
すごすごと教室を出ていった。もちろん、途中ぶつぶつと喧嘩しながら。
「ヨウメイ殿が喧嘩を売ってくるから・・・。」
「キリュウさんが短天扇を広げたりするから・・・。」
それを見送った乎一郎が一言。
「二人ともなんか似てるね。だから喧嘩するのかなあ・・・。」
それを聞いたたかし。
「仲がいいほど喧嘩するって言うし。やっぱりあれはあれで仲がいいのかもな。」
と、付け足した。
≪第四話終わり≫
| 前のページへ | 次ぎのページへ |
|---|---|
| 月天ノベルズ | TopPage |