小説「まもって守護月天!」(知教空天楊明推参!)


≪第二十話≫
『れっつごーしょっぴんぐ!(前編)』

鶴ヶ丘町とは少し離れたとある町にあるデパート。
バーゲンでもやっているのだろうか、この建物の前の広場では大勢の人が行ったり来たり。
その中に、周りをきょろきょろと見まわしている中学生の女の子四人組の姿が・・・。
「楊ちゃん、ここでほんとに良かったの?やっぱり鶴ヶ丘町の方が・・・。」
「ちょっと花織ちゃん、今更そんなこと言わないでよ。私に頼んだのは花織ちゃんでしょ?」
「そうだよ花織。楊ちゃんによると、ここが一番お買い得に成る場所なんだってことだから。
さあて、張り切ってお買い物するぞー!」
「元気だね、ゆかりん・・・。」
そう。ヨウメイ、花織、熱美、ゆかりんの四人である。
花織の依頼により、楊明がとっても得するようなショッピングの場所を調べたのである。
もちろんそれぞれ目的の品物があるので、それらの平均をとって、ここという事に成ったのだ。
「それではいざ、お買い物に・・・。」
「「「「レッツゴー!!」」」」
気を取り直して四人同時に手を振り上げる。
道行く人たちはそれに一斉に注目したのは言うまでも無いが・・・。
そんな人目も気にせず、四人は意気揚々とデパートへと入って行った。
「さあてと、まずは・・・楊ちゃんの物からだね。」
「確か・・・お菓子だったっけ?」
熱美とゆかりんの言葉に、ヨウメイはドンと胸を張る。
「そのとーり!日頃のシークレットおやつに欠かせない物なの。」
「シークレットおやつ・・・。要はルーアン先生と一緒に食べるおやつって事じゃないの?」
呆れた顔で言う花織に、ヨウメイはちっちっちというようにする。
「あまいよ、花織ちゃん。これは私が一人で食べるの。ちょっとした休息に、夜寝る前に・・・。
もちろん夜寝る前に食べるのは、キリュウさんに大きくしてもらうためだけど。」
「楊ちゃん、寝る前に食べると太るよ。」
すかさず熱美がつっこむと、ヨウメイは自身満々の笑顔で振り向いた。
「その点は心配要らないから。ルーアンさんと同じじゃないけど、私は太らない体質なの。
さあ、美味しいおやつを探しにレッツゴー!」
「「「太らない体質・・・。うらやましいな〜・・・。」」」
三人は当たり前と言えば当たり前の反応をした。
ともかくそういう事で、四人がまずやって来たのは、一階のお菓子詰め合わせ売り場。
和洋問わず、様々な種類の品物が並んでいる。
それこそ、出雲が普段持ってきている饅頭、ようかん、蓬もちも・・・。
「うわあ〜、こんなにあると迷っちゃうなあ。なんにしよっかな♪」
ルンルン気分で見回すヨウメイに、熱美がそれとなく言った。
「ところで楊ちゃん、どれだけ買うの?
今日はお昼ここで食べるんだから、あんまり無駄遣いしちゃあ・・・。」
「平気平気。主様からたっぷりお小遣いもらったから。
しかもどれだけ買うかもちゃんと決めてあるんだ。だからだいじょーぶだいじょーぶ。」
余裕の表情で一つの売り場へ近付くヨウメイ。他の三人も、それに付いて行った。
「いらっしゃいませ。本店のお菓子はどれもこれも超一級ですよ。」
「ええ、知ってます。え〜と、この山積みになってるやつの、下から三番目ください。」
ヨウメイが指差したそれは、ヨウメイの背よりも高く積まれた物だった。
応対した店員の顔が引きつったのは言うまでも無い。
「あの、なぜ下から三番目・・・。」
「だってそれがいいんですもの。拒否するなら別の所へ行くまでです。」
「・・・分かりました。しばらくお待ちください。」
やれやれとため息をついた店員は山積みのそれを解体し始めた。
衝撃を与えない様に一つずつ慎重に。
その光景をにこにこしながら見守っているヨウメイにゆかりんが囁いた。
「ねえ楊ちゃん。どうして下から三番目なの?」
「見てれば分かるよ。」
良く分からないゆかりんは、花織と熱美と顔を見合わせて肩をすくめる。
しばらくしてようやく三番目が取り出せそうになった頃に、別の客がやって来た。
「すみません。そこの金のあずき饅頭セットを五箱。」
「あの、申し訳有りませんが、しばらくお待ちねが・・・」
「いいえ、店員さん。お先にこの方の相手をしてください。」
「そうですか?では。」
ヨウメイの申し出により、作業を途中にして店員は新たな客の注文の品を取る。
当然不思議に思った客は、それとなしに店員に尋ねてみた。
「一体どうしたんですか?なぜはこの山を崩して?」
「それが、下から三番目だとかおっしゃるものですから・・・。」
きちんと包みながら店員が答えると、客はヨウメイ達の方を見て笑みを浮かべた。
「随分と酔狂な客だね。君も大変だろう。」
「いえ、これが仕事ですから。・・・はい、お待たせしました。」
手提げ袋に箱入りのお菓子を入れ、それを客に手渡す。
客はそれを満足げに受け取り、代金を支払った。
「それじゃあどうも。お嬢ちゃん達、あんまり店の人を困らせちゃいけないよ。」
「はーい。おじさん、どうもありがとう。」
「?」
ぺこりと頭を下げながらなぜかお礼を言うヨウメイ。
不思議そうな顔をした客だったが、軽く会釈してその場を去って行った。

客が去ってから何やらチェックしていた店員。再びヨウメイ達の傍へやって来た。
「すみません。では作業を再開しますね。」
一言告げてからごそごそとやり始める。
それを見て、感心した様に花織が言う。もちろん小声だが。
「さすがだね。ずっと笑顔だよ。」
「当たり前でしょ。大切なお客さんなんだもの。」
たしなめたゆかりん。それもそうかと花織と熱美は頷いたのだが・・・。
「違うよ。」
ヨウメイはきっぱりと言った。
不思議そうな顔でそれを見つめる三人。
「楊ちゃん、違うってどういう事?」
「お客様だから、なんてのはたてまえなの。
この店員さんは、本当に心優しい人なんだよ。だから笑顔なんだ。」
今度はヨウメイはその店員にも聞こえるような大きい声で告げる。
慌てて店員はそれに振り向いた。
「そ、そんな事無いですよ。」
「そう謙遜しながらもちゃんと品物のことまで考えて作業してるでしょう?
やっぱり心優しいんですよ。もう少し自信を持ってください。」
「は、はあ・・・。」
少しばかり照れながらも作業を再開する店員。
ヨウメイの言う通り、山積みの品物の解体も、それこそかすり傷一つつかない様に慎重に行っているのだ。
しばらくその様子を注意深く見ていたヨウメイを除く三人はふむふむと頷き出した。
「なるほど、言われてみれば・・・。」
「今までにあたしがデパートで見てきた店員さんたちに比べれば断然丁寧だよ。」
「しかも他の品物の位置とか、お客さんの位置とか確認しながら・・・。
うーん、他じゃあ見られない風景だねえ・・・。」
ますますじろじろと見られ、少しばかり戸惑い始めた店員。
それでも、調子を崩すことなくヨウメイの望みの品を取り出した。
「お待たせしました。この商品ですね?」
「ええ、ありがとうございます。」
笑顔で答えるヨウメイに、店員もやはり笑顔で返すのだった。
「それではお包みいたしますね。少々お待ちください。」
解体した商品はそのままに、店員は箱入りのお菓子に包装をかけ始めた。
しばらくしてそれを袋に入れる。その時、また新たに別の客がやって来た。
「お姉さん、ちょいとお菓子を買いたいんだけど。」
「待っててください。私がまず買い終わってからですよ。」
後ろを振り向いてその客に挨拶するヨウメイ。
さすがに笑顔で言われては素直に従うべきである。
急ぎ気味だったその客はおとなしく待つことにした。
「はいどうぞ。では・・・。」
ヨウメイに袋を渡し終えて、店員は懐からベルを取り出した。
チリンチリン!と、済んだ音色が辺りに響く。
花織達が唖然としていると、店員がにこやかに告げた。
「おめでとうございます。あなたは当店の千番目の品をお買い求めになった方です。
記念として、年間無料御使用券をプレゼントいたしますね。これは・・・」
「一年十二ヶ月。それぞれ月毎にこの券を見せれば、月限定のお菓子をくださるんですよね?」
券を取り出した店員が説明を終える前に、ヨウメイは笑顔で付け加えた。
ますます唖然とする花織達。そしてその店員も・・・。
「そ、そうです。良く御存知ですね。」
「ちょっと噂を小耳に挟んだものですから。ありがとうございます。」
手をすっと差し出すヨウメイ。店員は少し戸惑いながらも、そこに券を手渡した。
笑顔でそれを受け取ると、ヨウメイは花織達三人の所へ。
退いたそこへ、先ほど来たばかりの客が血相を変えて出た。
「ちょ、ちょっと店員さん!つ、次は何番目にもらえるんだ!?」
「えーと、二千番目となりますが・・・。」
その客のただならぬ様子に別の意味で戸惑う店員。花織達も更に唖然とするのだった。
「二千番目、という事はあと千個買えば良いんだな?」
「ええ、まあ、そういう事になりますが・・・。」
必死になっている客。それを見たヨウメイがほくそえむのを見て、熱美が呟く。
「まさか・・・千個買う?」
それが聞こえた花織とゆかりんは“ばっ”と振り向く。
ヨウメイは“御名答”といわんばかりの顔。そして・・・。
「なんでも良いから千個もらおう!!お金なら今すぐにでも用意して持ってくる。
だからお願いだ。僕にもあの記念の券を譲ってくれ!!」
「ええっ!?」
一瞬にして驚きの顔になる店員、そして花織達。
しばらく固まっていた店員だが、恐る恐る尋ねた。
「あの、本気ですか?」
「本気だとも!!・・・もしかして、そんなに買ってはいけないとか?」
「い、いえ。それは大丈夫ですけど・・・。」
「良かった。だったらすぐに金を用意してくる。
だから他の客が来ても待っていてくれよ!」
喜びの顔になったかと思うと、その客は猛ダッシュでその場を去って行った。
ぽかんとそれを見送る店員、花織達。唯一、ヨウメイだけはくすくす笑いながら口を開いた。
「よほど記念品が好きみたいだね。つまりあの人はコレクターなんだと思うよ。
良かったじゃないですか店員さん。今日だけで千とんで六個も商品が売れたなんて。」
「は、はあ・・・。」
呼びかけられて少しばかり返事をする店員。そしてすぐに困った顔になるのだった。
「でも、ここには千個なんてないんだけどな・・・。」
「あとで送れば良いんですよ。さすがにこの場で千個持って帰るなんてあの人も出来ないでしょうし。
とりあえず一種類ずつ渡しておけば良いんじゃないですか?」
「それもそうですね・・・。」
なんとなく納得した様に頷くと、店員はいそいそと準備を始めた。
にこにこしながらそれを見つめるヨウメイ。
と、熱美がとんとんとヨウメイの肩を叩いた。
「なに?熱美ちゃん。」
「なに?じゃないって。楊ちゃん最初から知ってたんでしょ。
楊ちゃんのすぐ後にああいう人が来るって。だから下から三番目なんて言って時間ずらして・・・。」
「偶然だよ。ぐ・う・ぜ・ん。」
にやっと笑いながらごまかすその仕草に、熱美は怪訝そうな目つきになる。
それにつられるかのように更にゆかりんが尋ねた。
「最初に会ったおじさんにありがとうって言ったのはどうしてなの?
ひょっとして券がもらえたから?」
「うん、それはそういうこと。おじさんが買う手前で、九百九十四番目だったんだね。
で、あのおじさんが五個買ったから、おじさんの最後の一個で九百九十九番目。
で、私が一個買って千個目。当然それを目の当たりにした次のお客さんは・・・」
「・・・やっぱり知ってたんじゃない。」
花織が最後に付け足す様に言うと、ヨウメイは笑ったまま舌をぺロッと出した。
「これくらい計画しないと面白くないでしょ。ささやかなサービスよ。
狙って記念券もらおうとしてるんだもの。これくらいお返ししても罰は当たらないよ。」
「それにしても千個まとめて買うなんて極端な人だよね。
そんなに記念券が欲しかったのかな・・・。」
「世の中にはそういう珍しい人も居るって事。それじゃあ目的も果たしたし、行こうか。」
最後にまとめた様に告げると、ヨウメイは回れ右をして店員の方へ向いた。
「それじゃあ私達はこれで失礼しますね。お仕事頑張ってください。
今回はどうもありがとうございました。また来ますね。」
「ああ、いえ。どうもありがとうございました。」
作業も途中に、慌てて頭を下げる店員。
ヨウメイ達四人もそれに頭を下げて、その場を去るのだった。
「さてと、次はわたしの品だね。」
「確か熱美ちゃんは・・・お花だったよね。」
「お花?だったら最後に買ったほうが良いんじゃ・・・。」
「大丈夫。私がしっかりこの本で管理しておくから。」
得意げに統天書を開けて見せるヨウメイ。
確かにこの中なら保存がきく。先ほど買ったお菓子もすでにその中のようだ。
「そういうわけ。それじゃあ二階のお花売り場へレッツゴー!」
「「「おー!」」」
熱美の掛け声により、他の三人も手を振り上げる。
またまた他の客に注目されたのは言うまでも無いだろう・・・。


熱美達はデパートの二階、つまり花売り場がある場所へとやって来た。
ありとあらゆる種類の花といっても過言ではないほど、沢山の花が並んでいる。
「うわあ・・・すっごいなあ・・・。」
まず熱美が感嘆の声を上げた。
それに反応するかのように、他の三人も次々と声を上げる。
「綺麗だね・・・。」
「この中で私に似合う花ってどれかな・・・。」
「配置が素晴らしいね。お客さんの目を惹く様に並べてあるよ・・・。」
一人だけ少しばかり反応の種類が違ったみたいだ。
三人は一斉にその人物を見る。そしてゆかりんが言った。
「楊ちゃん、それってなんか基準が違わない?もうちょっと別に言う事があるでしょ?」
「・・・別に良いじゃない。興味が沸いたから言っただけだよ。」
特に気にするでもなく返す楊明。
一つため息をついたかと思うと、熱美が店の中へと足を踏み入れた。
「さ、とりあえず買い物するんだから。楊ちゃん、アドバイス頼むよ。」
「うん分かった。」
さっさと中へ入って行く二人。
花織とゆかりんはまだ疑問の顔だったが、やがて頷き合って二人の後を追った。
そして店の中。ここはこれでもかと言わんばかりの花が並べられている。
外で花を見たときと同様に、四人とも少しばかりそれに見とれるのだった。
「うーん、綺麗・・・って、見とれてる場合じゃないよね。
熱美ちゃん、一体何の花を買うの?」
「アヤメよ。花札についてるやつ。知ってるでしょ?」
「花札・・・。」
言われて花織とゆかりんは首を横に振る。
そこでヨウメイがにこにこしながら解説を始める。
「花札っていうのは、文字通りいろんな花が描かれているの。
全部で十二種類各四枚の、計四十八枚からなるものだよ。
なんで十二種類かっていうと、それぞれの月に合わせてるんだ。」
それに続いて熱美も。
「そういう事。一月は松、二月は梅、三月は桜、四月は藤、
五月は杜若つまりアヤメ、六月は牡丹、七月は萩、八月は薄、
九月は菊、十月は紅葉、十一月は柳、十二月は桐、というわけ。」
「「へえー・・・。」」
二人は感心した様に頷いていた。が、そこで少し疑問の顔になる。
「ねえ熱美ちゃん、その花札って何に使うの?」
「いわゆるゲームよ。ほら、たまに日本映画で見かけたりするでしょ。」
「・・・それってどんな映画?」
「うーん、忘れちゃったなあ・・・。」
「そんな事より花織ちゃんがこのゲーム知らないなんて・・・。
ゲームの達人なのにねえ。」
最後でヨウメイがくすっと笑う。花織はそれに当然反応する。
「そんな事言ったって知らないものは知らないんだから。」
「だったら今度皆でやってみよう。ね、熱美ちゃん、ゆかりん。」
「それ良いね。確か四人は手六場四だったっけ。」
「なに、それ・・・。」
花を買う事も忘れて、四人でわいのわいのと騒ぐ。
いいかげん話をした頃だろうか、そのうちの誰かが話を変える前に店の人がやって来た。
この店の店長だろうか。歳は二十代後半に見える女性だ。
「あら〜、いらっしゃいませぇ〜。私はこの店の店長ですう。
女の子四人でお花を買いに来たんですね〜、どうもありがとうございますう。
どうです?いろんな花がいっぱいあるでしょう?
何の花を買いに来たんですか?もしかしてさっきお話していた十二の花ですか?
でも残念ねえ。うちの店は今の季節の付近の花しか置いてないんですよお。
そうだ、お詫びとして手品を見ていきませんか?とっても楽しめる事うけあいですよ。
うん、それがいいですねえ。それじゃあちょっと待ってて下さいね。
手品の名人を呼んできますから。それで・・・」
「ちょっと待ったあー!!」
いきなりやってきていろいろ喋り出したその人に、熱美が慌ててストップをかけた。
他の三人はその熱美の声によってやっと我に帰ったという感じだ。
「何かしら?慌てなくてもお花は逃げて行ったりしませんよ。
ゆっくりと手品を見て・・・」
「だから待ってくださいって!わたし達は花を買いに来たんですから。
その花はアヤメなんです。だからそれをいただけますか?」
手っ取り早く熱美が説明を終える。
アヤメという具体的な花の名前を出した事によって、その店長の顔つきが少し変わった様だ。
「アヤメですね。それじゃあこっちへどうぞ。
ほんともったいないわねえ、面白い手品なのに・・・。
そうそう、アヤメじゃ無いけど飴はいらないかしら?
ちょうど知り合いの人から珍しい飴をもらったの。とっても美味しいのよ。」
「えっ!?飴ですか!?うわ〜、私欲しい・・・」
「楊ちゃん。」
少しばかりよだれをたらしかけたヨウメイをゆかりんがたしなめる。
言われた時点で、ヨウメイは残念そうに口を閉じた。
「せっかくですけど、わたし達は・・・。」
「遠慮するの?若いうちからそんな謙虚じゃあ苦労するわよお。
現にその飴をくれた人。あなた達と同い年くらいなんだけど、
謙虚さが祟ってか、苦労しっぱなしなのよ。毎日毎日いろんな事件に巻き込まれて。
やっとの事でその事件を解決しても、次々とまた引きうけちゃうもんだから・・・。
引きうける以前に断ることをしないもんねえ。ほんと謙虚だわ。」
「それって謙虚とは違うような・・・。」
なんともよく喋るその店長の話をそれなりに聞いている四人であった。
それなりに受け応えをしている点で、なかなかに立派であるといえよう。
とりあえずそんな話を聞きながらも、目的の花を手に入れることが出来た。
「どうもありがとうございましたあ。」
「いえ。それよりこんな綺麗なアヤメがあったなんて・・・。」
熱美が受け取ったそれは、彼女が今までに見た事の無いような花をつけたものであった。
これが果たして同じアヤメなのか?と疑えるほどに。
「あらあ、このアヤメを見た事が無いって言うなら今までどんなアヤメを?」
「それが、これよりはもう少しちゃっちいような・・・。」
「それは育て方が悪かったのね。どんなお花でも、ちゃんと愛情込めて育てなきゃ駄目よ。
もちろん飾り方にもいろいろあってね、どういう風に置けばいいかとか。
これを知っていれば、多少育ちが悪くっても十分に見せる花になるのよ。
みすぼらしいからといって卑下しちゃいけないわ。」
「そう、そうですよね・・・。」
戸惑いながら返事する熱美。
実は今カウンターの傍に居るのは熱美一人である。
他の三人はさっさとその場所を立ち去っていて、店の中の花に見入っていたりしている。
当然、店長の話から逃れるためだという事は言うまでもないが・・・。
「ところでどうしてお花を買いに来たのかしら?何か目的が?
そうか、誰かにプレゼントするのね!」
「いや、あの、そういう訳じゃなくて・・・」
「違うの?もう、嘘なんて言っちゃあいけないじゃないの。
プレゼントじゃないってのなら一体何かしら・・・。
自分の家の中に飾るの?そうか!鑑賞用って訳ね。
でもそれって当たり前過ぎるわねえ。何か裏があるに違いないわ・・・。」
「ありませんって、そんなもの。」
「あら、ないの?・・・いや、それはひっかけね。
この程度で私を騙せたなんて思わないことよ。さあ、白状しなさい。」
「ちょ、ちょっと、本当に何にも無いですってば!」
「さっき嘘をついたじゃない。騙されないわよ。」
「嘘って・・・あなたが勝手に勘違いしただけじゃないですか。
本当に私は、ただアヤメを買いに来ただけなんです!」
「そう、だったら信じてあげるわ。
けれどやっぱり気になるわねえ、真の目的が・・・。
ねえ、他の子達には喋らないから、私にだけでも教えてくれないかしら?」
「うわあ、もう・・・本当に何にも無いんですってばあ!!」
そして延々三十分。律儀に聞いていた熱美は、へとへとになって店の外に出た。
一足先に店の外に出て居た裏切り者三人をキッと睨む。
「ひどいよ皆。わたし一人に押し付けるなんて・・・。」
「真面目に聞いてるからいけないんだって。あたしは最初の時点でダウンしたよ。」
「ゆかりんの言う通り。熱美ちゃんが真面目過ぎただけなの。」
花織とゆかりんは別に逃げたとも思っていないような口ぶりである。
さも当然といったような態度。ヨウメイももちろんそうだったが、別の事を口にした。
「とりあえずその花は私が預かるよ。落としたりしちゃったら大変でしょう?」
「え?でも、楊ちゃんこんなの持って大丈夫なの?」
熱美が聞き返すと同時に、ヨウメイは統天書を開けた。
にこっと笑ったかと思うと、何やら念じ始める。
「彼の物に順応した環境にて管理せよ・・・万象封鎖!」
統天書がぱあっと光ったかと思うと、熱美の持っていたアヤメの花も光る。
そしてゆっくりとそれは宙を漂い、統天書に吸いこまれた。
パタンと本を閉じたヨウメイは一呼吸してから口を開く。
「一丁上がりっと。ね?こうやっておけば安全でしょ。」
「なるほどお、統天書の中に・・・。」
「そう言えばこの花屋さんに来る前に言ってたね、この本で管理するって。」
本来ならこんな力を目の当たりにすれば大騒ぎになるところなのだが、
幸いこの花屋の前に居た四人に注目していた人は誰も居なかった様である。
もちろん、ヨウメイはそれを見計らってこの術を実行していたのだが。
「それじゃあ次はゆかりんだね。確かアクセサリーだっけ?」
「そう!とにかく可愛い小物とか欲しいんだ。楊ちゃん、何階?」
「え〜と、五階のはずだけど。」
「じゃあ早く行こう!!」
言うなりゆかりんは大急ぎでヨウメイの腕を引っ張って行った。
あっけに取られてそれを見送っていた花織と熱美だったが、慌ててその後を追う。
「ちょっと待ってよー!」
「そんなにあわてなくてもー!」
呼びかけるものの、走る事を止めない前の二人。
追いかけながら熱美がポツリと呟いた。
「ねえ花織。さっきの花屋さんだけどさ。」
「どうしたの?」
「全然楊ちゃんのアドバイス受けてないんだよね。
あんな店長さんが居るって事、楊ちゃんにとって予想外だったのかな・・・。」
「まさか・・・。でも全然知ってる風じゃなかったよ。
熱美ちゃんが捕まっている間ちょこっと話をしたんだけどね、
“おっかしいな、ちょっと調べ間違えたかもしれない”って言ってたよ。」
「ええー?そうなんだ。楊ちゃんでもそういう事有るんだねえ。」
「何?まさかさっきの花屋に何か不満があるの?」
「とんでもない!それこそ最高の花屋って感じだよ。
鶴ヶ丘町じゃあ絶対に無い花屋だね。どちらにしてもわたしは満足って事。」
「なんだ、それなら良かったじゃない。」
「うん。ちょっと疲れちゃったけどね・・・。」
苦笑いしながら花織を見る熱美。花織もそれに対して笑顔で返した。
とまあ、そんな事をやっているうちに、
結局は四人同時に走りこむ形で、五階のファンシーショップに辿り着いたのだった。


ゆかりん達のほかにも同年代と思われる女の子はたくさん居た。
皆が皆、きゃいのきゃいのと騒いでいる。
「すごい・・・。やっぱり大きい店は違うねえ・・・。」
感嘆の声を上げるゆかりん。それもそのはず。
とにかく綺麗な、可愛い、といった色とりどりの商品が店中に並べられているのだから。
「さあて、それじゃあ探しに行こう!」
「待った、ゆかりん。」
またもや駆け出そうとしたゆかりんを熱美が止める。
はやる気持ちを押さえながらもゆかりんは熱美に聞き返した。
「何?」
「何?じゃないって。楊ちゃんが・・・。」
見ると、花織に支えられながらゼイゼイと肩で息をしているヨウメイの姿が。
座る所ではないのだが、完全に立っていられる様ではなかった。
先ほどゆかりんに引っ張られて走った所為だろう。
「ちょっと楊ちゃん、へばってちゃ困るじゃない。」
「だって・・・いきなり・・・走り・・・。」
途切れ途切れに言葉を発するその姿は、誰かが傍についていないと駄目の様だ。
仕方が無いと首を動かした花織がゆかりんに告げる。
「ゆかりん、熱美ちゃんと先に行ってなよ。あたしはここで楊ちゃんを見てるから。」
「そう?それじゃあお願いするね、花織。」
「ゆかりん、今度からはもうちょっと考えて・・・そうだ!
楊ちゃん、とりあえずこの店に関して楊ちゃんが言う事ってないの?」
先ほどはヨウメイからのアドバイスを聞き逃した熱美。
今度はそうはするまいと、あらかじめ聞いておくつもりなのだ。
ヨウメイは喋る代わりに首をゆっくりと横に振る。つまり、無い、という事だ。
「無いの?つまり適当になんでも選んで良いってことなの?」
「ゆかりんが・・・これだ!って思ったのなら・・・なんでも・・・。」
いまいち言う事がつかめなかった熱美と花織だったが、それを詳しく言う形でゆかりんが付け足す。
「つまり、あたしのインスピレーションに合ったこの店にある物。
それが楊ちゃんお勧めのお買い得品だって事だね?」
それに対してこくりと頷くヨウメイ。
ようやく納得した三人はそれぞれ行動を開始した。(もっとも動くのは二人だが)
「じゃあ行ってくるね。元気になったら後で楊ちゃんも来てよ。」
「ゆかりん、あんまり買いすぎない様にね。」
横で熱美がたしなめる。そして二人は店の中へと姿を消した。
手を振りながらそれを見送ったのは花織。ヨウメイを支えたまま少し立ち上がる。
「とりあえず何処か休憩所へ行こう。あ、あそこに椅子があるよ。」
「じゃあ、あそこへ・・・。」
まだまだ息が荒いヨウメイを連れて、花織は椅子(正確にはベンチ)へと腰を下ろした。
しばらくは二人黙ったまま並んで座っていたのだが、やがてヨウメイの息が穏やかになる。
「ふう、もう大丈夫。落ちついたよ。」
「そう、良かった。でも楊ちゃんてほんと体力無いよね。
少しは体力つける訓練とかした方が良いよ。日常生活を送るためにも。」
「そう言われてもねえ・・・。嫌なもんは嫌だし・・・。」
「よくそんなので今まで来られたよね。昔は走ったりしなかったの?」
「ちょこっとなら・・・。移動にはほとんど飛翔球使ってたから。」
「・・・だったら、ふだんは極力使わないようにするとかしないと。」
「うーん、でも・・・。」
「楊ちゃん、逃げてばっかりじゃあいつまで経っても貧弱なままだよ。
それこそ、走るたびに倒れられたんじゃあ、こっちがたまんないよ。」
「あ、それもそうか・・・。よし、一刻も早く疲れを取る方法を・・・」
「そういう問題じゃないでしょ!疲れない様にするのが一番じゃない!」
「うっ・・・。だってだって・・・。」
「ともかく、いつか特訓するからね。」
「あのね、花織ちゃん。特訓したからってすぐには・・・」
「いいからやるの!!そうだ、ついでにキリュウさんにも手伝ってもらおうっと。」
「うえっ!?そ、それだけはやめてよ〜。」
「何言ってんの。楊ちゃんの為でもあり、あたし達の為でもあるんだから。
しっかり頑張ってね、楊ちゃん。」
「・・・うん、分かった。」
「よろしい。ところで楊ちゃん、ちょっと聞きたい事が・・・。」
「なになに?」
と、こんな調子でお喋りを続ける花織とヨウメイ。
ヨウメイが元気になったら行くという事もすっかり忘れているのであった。

所変わって、アクセサリを物色中のゆかりんと熱美。
なかなか気に入った物が見付からないようで、店内を転々としている。
「ねえゆかりん、いつまで探すの?結構歩いたよ。」
「だからあたしのハートにビシッと来るような物が見付かるまでだって。
でもここってすごく広いよねえ。かなり見て廻ったと思うんだけど・・・。」
ゆかりんの言う通り、この店の広さは尋常ではなかった。
それこそ、スーパームサシくらいは軽くあるといっても間違い無いだろう。
それだけに商品の種類も品数も豊富である。
「うわあ、これ可愛いな。ねえ、これにしよ。」
「熱美ちゃん、買うのはあたしなんだから・・・。」
「あ、そかそか。でも可愛いなあ・・・あたしこれ買おうっと。」
そう言って熱美は、一つのブローチを手に取った。
綺麗な花の紋様をかたどったそれは、七色に光る。
「すごいね、それ・・・。」
「そう?可愛いでしょ?」
「えっと・・・。」
返答に困るゆかりん。それは可愛いというよりは別の感じがしたからである。
そんな態度にもお構いなし。熱美は更に別の商品に手を伸ばす。
「あ、これいいな。ね、ね、ゆかりん。」
「ちょっと熱美ちゃん・・・。」
今度熱美が手に取ったのは動物の形をした飾りがついたペンダント。
「・・・何?それ。」
「何って、ワニじゃない。ワニって知らない?」
「いや、そういう事じゃなくって・・・。」
そう、動物というのはワニである。
ガラスの様な透明感、少し傾けるとプリズムの様に光を発する。
見た限り、ただのワニの首飾りでは無い様だ。
「綺麗・・・。よーし、これも買っちゃえ。」
結局は二つ目の商品も手持ちに入れる熱美。
そんな様子を見て、ゆかりんは少しばかりいらだってきた様だ。
「なんで熱美ちゃんが買いたい物がすぐに見付かるのよ。あたしはまだなのに・・・。」
「まあまあ、もうちょっと見て廻ってみようよ。」
思わぬ品物を見つけて上機嫌の熱美は、ゆかりんをまあまあとなだめる。
そして、二人は再び店内物色に戻ったのだが・・・。
「・・・一周しちゃった。なんでなんで〜!?なんであたしが欲しい物が見付からないのよー!」
「おかしいね。私はもう五つも見つけたのに・・・。」
戸惑った顔をしながらも、途中で手に取った商品を見つめる熱美。
ブローチとペンダントに加え、赤い鳥、白い虎、黒い亀、のガラス細工がその手に乗っている。
一周する間に熱美がドンドン取っていったのだ。
「後は青い龍なんだけどな・・・。」
「なんなのよ、それ。何かのセット?」
気分を落ち着かせようと質問するゆかりん。すると熱美は顔を上げてそれに答えた。
「四聖獣よ。ずっと前に楊ちゃんから聞いたの。
この四つの動物を集めたら、大いなる護りが得られるんだって。」
「そんなもん得てどうしようっての?」
「色々便利じゃない。楊ちゃんが傍に居ない時に悪い人に襲われそうになったとか。」
「・・・・・・。」
何処からそんな考えが浮かんでくるのか、ゆかりんは少しばかり呆れ顔になる。
確かに、熱美の言う状況がまったく無いとは言い切れないが・・・。
「それより、どうしようかこれから・・・。」
「もう一周してみようよ。何処か見落としていたのかもしれないよ。」
「それもそうだね。・・・ねえ、それより花織と楊ちゃんはどうしたんだろう?」
「別の店で休んでるのかも・・・でもベンチがあるよねえ?」
熱美の目に止まったベンチ。それは、ついさっきまで花織とヨウメイが談笑していた場所であった。
今はその二人ではなく、別の人が座っている。高校生くらいの男子二人だ。
思わず熱美とゆかりんは寄って行った。
「あの、すいません。ここに女の子二人が座ってませんでしたか?」
「いや、知らないねえ・・・おまえ見たか?」
「俺は見てないぜ。というより、俺らが座ろうとした時には誰も居なかったけど。」
「そうですか・・・。」
なんとなく予想通りの答えに、少しばかり肩を落とす二人。
「多分店の中じゃない?結構広いしさ、会わなくっても不思議は無いと思うよ。」
「そっか、それもそうだよね。じゃあもう一周行ってみよう。」
納得した二人。そして目的の物を見つけるべく、再び入り口から見て廻るのだった。
ところが、いざ入っていこうとしたとき・・・。
「ねえねえ、その二人がもしここに来たら、待っている様に言っておこうか?」
「いえ、結構です。あたし達二人で探しますから。」
「何言ってんの、せっかくこうして話したんだしさ。
そうだ、もうすぐお昼だしその子達と俺らと一緒に、つまり六人で食事しない?
当然俺らがおごるよ。」
「え、それって・・・。」
いわゆるナンパである。その男子二人はなんとも言えない笑顔で話してくる。
少しためらいかけた熱美とゆかりんだが・・・。
「え、遠慮します!」
「それじゃあ!」
と、口早に断り、大急ぎで店の中へと入っていった。
“ああ〜”と立ち上がって片手だけ後を追う様な格好をする男子の一人。
もう片方は座ったまま苦笑いを浮かべた。
「おまえなあ、単刀直入過ぎるぜ。いきなり食事に誘うか?」
「だってさあ・・・。あ〜あ、久しぶりに可愛い子だったのに。」
がっくりとして腰を下ろす。
しかしその数分後、二人の前に新たに女の子二人が姿を現した。

「結局会わなかったね。しかも結構広かったし・・・。」
「なんだかんだ言いながら花織ちゃんは買ってたね、色々。
うんうん、これこそここに決めた甲斐があったというもの。」
「だってねえ、近所の店じゃあここの倍以上の値段で置いてるんだよ。
これは買い!じゃないかな?」
そう、花織とヨウメイだ。結局は熱美とゆかりんの後を追うような形になってしまったのである。
のんびりと買い物もしていたということが原因だが。
「さて、どうしよっか。」
「多分あの二人はもう一周しに行ったんだろうな。歩くの疲れちゃったから座ってよう?」
「楊ちゃんならそう言うと思った。でも先客が居るよ。」
「え?」
花織に言われて例のベンチを見るヨウメイ。と、そこには男子二人が座っていた。
“あーあ”とヨウメイが思った途端、その二人がこちらへとやって来た。
「やあ、こんにちは。ひょっとして女の子二人を探しているとか?」
「えっ!?ええ、そうですけど・・・。」
「そうか、それはよかった。実はさっきその二人の女の子に会ってねえ・・・。」
そんなこんなで話を聞かされる花織とヨウメイ。
しかし、ヨウメイは話を聞くわけではなく、統天書をぱらぱらとめくっていた。
「・・・そっちの彼女は何してんの?勉強家なの?」
「え?ええ、まあ、楊ちゃんは・・・そんなとこ、です。」
「そうか、眼鏡かけてるしねえ。きっと頭が良いんだろうねえ。」
笑顔でお世辞を言う二人。と、そこでヨウメイはパタンと統天書を閉じた。
顔を上げてにこりと微笑む。
「ナンパですか、ご苦労様です。熱美ちゃんとゆかりんが来た時に食事に誘おうとしたり・・・。
けれどもう一方の言う通り、いきなり食事に誘うのはどうかと思いますよ。
やはり、一緒になって探してあげるとか・・・。二人が遠慮してもね。」
「げっ!?」
「ど、どうしてそれを?」
驚く男子二人。花織がそれとなくヨウメイをひじでつついたが、ヨウメイは構わず続ける。
「宮内さんに比べればまだまだ誘い方が甘いですね。妙な癖が無い分良いですけど・・・。
そうそう、お二人のお食事の誘いはとりあえず私達も断っておきます。
まだ買い物がありますし、どうせ後で何も無いのにおごってもらうだけってのは悪いですから。」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ。」
「そうだよ。別に何もやましい事を期待してるって訳じゃなくて・・・」
「だったら、この店の商品を全部買ってくださいますか?
良いって言うなら考えなくも無いですよ。」
ヨウメイの言葉に、今度は驚愕の表情になる二人。
がっくりとうなだれると、諦めた様に喋り出した。
「分かった、つまりはそっちには全然その気が無いから諦めろってことなんだね。」
「ただお金を無駄にするだけになるから、こっちが遠慮するべきだ、と言いたいんだ。」
「そうですそうです。さすが、お二人はのみこみが早いですね。
そうそう、先ほどは頭がいいなんて誉めていただいてどうもありがとうございました。
けれど、眼鏡かけている人全部が頭が良いわけは無いですよ。変な先入観は取り除きましょうね。
それじゃあ花織ちゃん、やっぱり探しにいこ。」
言い終えて花織の手を引っ張るヨウメイ。
自分がほとんど関与しない間に話が進んでしまって戸惑っていた花織は、慌てて言った。
「ねえ楊ちゃん、いいの?」
「何が。」
「せっかくおごってくれるんだしさ・・・。」
「そんな、たかっちゃうのは良くないって。あの二人には別の人をナンパしてもらおう。」
少し言葉を交わし、ヨウメイと花織は熱美とゆかりんを探す為に再び店の中へ入っていった。
気の抜けたような表情でそれを見送る男子二人。
数十秒の後に、片方が呟いた。
「世間にはいろんな子が居るもんだな。」
「ま、あの子の言う通り、俺らは別の子をナンパしようか。」
お互いに頷き合って、その二人は店を去るのだった。

≪第二十話≫終わり


あとがき:いったんここで区切ることといたしました。(あんまし意味ないけど)
買い物の話ってなんか難しいですね。まだまだ精進の必要あり、です。


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